第8話『デュランダル』
あの男性教師が怪しいと目をつけてから1日が経った。
リュリカは休み時間になる度に少し男性教師を尾行したりしているが、怪しい動きは全くなかった。
その男性教師の名は『デュランダル・クルシス』、この学院に来たのは去年。色々な先生や女子生徒に人気があり、絶大な信頼があるとか。
今上げた情報しかないのが現状だったりする、リュリカは夕方の放課後になるまでデュランダル・クルシスに関する情報を探し続けた。
そして日が傾き、紅の空になった放課後。
リュリカはマクベス姉弟を呼び出し、昇降口と教師専用出入口を隠れて見張ることにした。
「お嬢様、彼は現れるのでしょうか」
「あぁ、現れることは現れるだろう。この時間は教師による居残り生徒がいないか、見回る時間だからな。」
リュリカとユウは生徒が使う昇降口を見張る、部活動を終えた者、仲良く友達と帰る者で昇降口は賑やかになっていた。
「これでは、現れたかどうかわからないです」
「心配はない、アイツは女子生徒に人気らしいからな?」
「それで現れたか分かると言うのですか?」
リュリカは返事はせずに、玄関をじっと見つめる。
すると、ある女子生徒が黄色い声を上げる。
「きゃー!クルシス先生ですわっ!!」
それが波紋したかのように周りの女子生徒はきゃーきゃー声を上げる。
「シルカ・サージェス様ですね」
「あの馬鹿もファンのようだな」
デュランダルは女子生徒に囲まれる、1人1人に頭を撫でたり、会話をしたり手馴れた対応だ。
「ふっ、気持ち悪い。あの男の何がいいのか」
「お嬢様、ボクはマクベス様に知らせてきます」
ユウは音もなく気配をリュリカから消した、リュリカは動かず様子を伺う。
「君たち?悪いんだがもう下校の時間だ、さ、帰りたまえ」
「えーですわ!もう少しだけ良いじゃありませんの」
「そうかい?なら正門までなら皆に付き合うよ」
まるで芸能人の追っかけのようにワラワラと玄関から出ていく。
それと同時にマクベス姉弟を連れたユウが帰ってきた。
「うわ、あのキザ野郎女子に囲まれてんじゃねぇかよ」
「なんだ?貴様も囲まれたいのか?」
「当たり前だろ、男の夢じゃないか!」
トーマはズルいとばかりに集団を睨みつける、恨めしそうに。
ハンカチを口に噛み締め、むきぃ!と怒っている。
「トーマ、やめなさい。恥ずかしいですから」
「姉ちゃんあんな男がいいのか!?」
「いえ、私も嗚呼言った方はちょっと…」
トウカは集団を見つめながらそんな事を口にした。
4人は玄関から少し出て正門近くにある木々に身をひそめる。
「ユウもあんなのが夢か?」
「ボクは興味ありません」
「は?なんでユウに聞くんだよ」
「なんでとはなんだ、当たり前だろう」
トーマは頭にはてなマークを全開に出す、そんなことをしていると集団は居なくなっていた。慌てて正門を出てみると、さっきまでの黄色い声も無くなり下校生徒がまばらにしか居なかった。
「見失ってしまいましたね、トーマ。貴方が余計な話をするからですよ?」
「なんで俺だけなんだよ!?」
「貴様には呆れたぞ、これでは意味がないだろ」
「だから何で俺だけ!?」
結局その日は、女子生徒は愚かデュランダルまで見失ってしまい、お開きとなった。
そして翌日の夕方、また昨日のように見失ってはいけないのでマクベス姉弟を正門より外へ、ユウとリュリカは正門近くにある木々に隠れた。
「やっとこちらまで来たか、30分は玄関で無駄話だぞ」
「張り込みは時間が掛かってなんぼです、お嬢様」
リュリカは悪態をつくが、そうもしてる内にデュランダルとその集団は正門を出た。ユウとリュリカもゆっくり正門を出ると
「さ、また明日だよ皆」
「さようならクルシス先生」
口々に別れの言葉を言っている女子生徒、しかし彼は動き出す。
「シルカ・サージェスさん」
「は、はい。何でしょう先生っ!」
シルカを呼び止めるデュランダル、シルカの腕にはブレスレットがはめられている。ちなみに、リュリカ達もブレスレットは即に支給されてある、向日葵開花のあと担任から手渡されたのだ。
「少しだけ、成績が良くないみたいだね?僕が少しだけ指導をしてあげようかなとね?早く伝えようと思ったんだけど、中々時間が無くてね」
「クルシス先生に教えていただけるなら、わたくし御指導して頂きたいですわ」
一瞬、そう一瞬だがデュランダルはニヤッとした。直ぐに表情は戻ったがリュリカとユウは見逃さなかった、シルカとデュランダルはまた学院の方へ戻るかと思ったが、別の方向へ歩き出す。
マクベス姉弟は何かに感づいたのか、リュリカとユウの元へやってきた。
「おい、あの2人どっかいってるぞ」
「やはり、彼が?」
「まだわからん、いくぞ」
4人は気づかれないように後を付けた、歩いていくこと数分。
近くにある公園に2人が入っていった、4人は草むらの陰に隠れる。シルカとデュランダルは
「シルカさん?君は魔法をうまく使えていないと思うんだ」
「魔法ですの?確かにあまりうまい方ではございませんが、それと成績に何か?」
「魔法は今の学院では必要なもの、君には綺麗な魔法を使って欲しいんだ、わかるかい?」
何やら話をしているが内容まではわからない、4人は黙って監視を続けていると
「は、はぁ。なんとなくですがわかりますわ、それでどうすればいいんですの?」
「あぁ、ではブレスレットをはめた腕を突き出すように、こちらに向けて?」
シルカは言われた通りに腕を突き出す。デュランダルはシルカの頭を撫でながら
「構えは中々良いよ、さ、魔法を発動させるんだ」
「でも、ここは魔法禁止区域ですし…」
「大丈夫さ、僕さえ居ればね、さ、早く」
また頭を撫でる、するとシルカは照れながらも魔法を発動させる。魔法と言っても発動したのは識別コード、自分の魔力などの高さを調べるための行為。所謂試し撃ち、的は公園にある大きな時計塔。
「さぁ、撃つんだ」
「………わかりましたわ」
シルカの目は輝きを失い、まるで人形のようになっていた。
「おい、記憶操作って意識まで操れるのかよ!?」
「いや、あれは前もって記憶をすり替えている、お前は人形とばかりにな」
話している内に試し撃ちは終わっていた、シルカはぼーっと黙ったまま突っ立っているだけ。デュランダルはシルカの腕を掴みブレスレットを引き抜こうとしていた。
「ユウ、いくぞ」
「は、お嬢様」
ガサガサっと4人は草むらから脱出し、2人の目の前に出る。
「ん、君達はそこで何をしている」
「デュランダル・クルシス先生こそ、シルカ・サージェスに何をしている?」
「あぁ、これはねブレスレットが少しキツく締まっていたようだから直してあげるつもり……だったのさ!!」
シルカの腕から光の弾が無数に放たれる、4人はうまく交わし2人を囲むように距離を置く。
「君達、覗きは関心しないなぁ?」
「テメェこそ女になにしてやがんだ?」
「そうか、君達か昨日からやけに視線を感じると思ったら。まぁいいが、僕はなにもしていないぞ?」
シルカの頭を撫でる、そして突き飛ばした。トーマは突き飛ばされたシルカを滑り込んで抱きとめる、デュランダルはスーツに付いた砂埃を手で払う。
「僕はなにもしていない、証拠がないからな?」
「ボク達が見ていた、では証拠にはなりませんね」
「確かにそれはそうですね、私達は見ていただけ」
「残念だったね?あははは!まぁ、君達がどうして僕を尾行していたかわからないが、爪が甘いよ」
デュランダルは翻し、公園から出ようとする。リュリカはその背中に向かってこう言った。
「記憶操作には弱点がある、それも誰でも分かる弱点がな」
「…………君、どうして僕が持っている魔術がわかった」
「その記憶操作とやらを使って調べるなりしたらどうだ?」
「……ふはは、まぁ、ハッタリでもなんでも良いが。僕は強いよ?」
その言葉をリュリカに吐き捨てるとデュランダルは公園から去った。トーマが抱きとめていたシルカが目を覚ます
「……ん、な、なんでわたくし公園なんかに」
「あ、おいアンタ、デュランダルと何があった」
「……クルシス先生?何も無かったはずですわよ?それより離れなさいな野蛮人!」
「た、助けたのに酷いだろ!?」
シルカは先ほど行われた事を忘れている、間違いなくデュランダルの仕業だ、今回はブレスレットを盗らなかったようだが、奴がトウカの言っていた事件と関係があることはわかった。
「まずは、証拠を見つけないといけないな」
「はい、お嬢様。」
公園の地面には小さな穴が無数に広がっていた、デュランダルの意識によって発動されたシルカの魔法。記憶操作によりうまくシルカを操ったように、他の女子生徒にも可能性がある。
「全く、面倒な魔術式を作ったな……エルドラドは、私もその血を持つからあまり言えないがな」
夕方の空の下、少し風が吹き公園の砂が舞い上がる。
リュリカは、夕陽をしばらく睨みつけた。




