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不思議な塔にまつわるあれこれ。  作者: ちびやな@やなぎ
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40-3 属性測定でございます。

「ひとまず、あなたがどの属性と相性がいいのか確認したいので、各属性の初級術符を順番に試してもらえますか?」


「かまわないけど、そんな所を今から確認で大丈夫なの?」


「はい。この前の時におおよそどの辺りと相性がいいのかは予測がついてますから。

 試すと言っても三つだけですよ」


 たぶん、きれて魔術暴走させた時の話だろうな。

 墓穴彫りそうだし聞き流しておこう。


「ではまず、一度使って見せますから、見て覚えてください」


「……はい?」


 ちょっと待て。それなんて職人修行?


「ミュルカは口で説明するよりも実際に見た方が飲み込みが早いようですからね。

 難しいようならきちんと説明しますし、とりあえず見ておいてください」


 ここに来ていきなりのスパルタ宣言ですか……。


 まぁ、そういう事ならしかたがない、と思って観察の体勢に入ると、ディノは鞄から出した魔術符を持って的の方を向く。

 右手の人差し指と中指ではさんだ魔術符で的を指すように腕を伸ばす。

 そうすると、術符に書かれた模様――魔術陣?――が淡く光り出した。


 何でだろうな、と思ってよく観察すると、ザームさんが治療魔術を使った時と同じようなことが起こってた。

 ゆっくりとディノの体を循環する淡い光の流れが、少しずつ心臓の辺りで球形にこごっていくんだけど、なんだかザームさんの時と印象が違うなぁ。


 なんでかな、と首を傾げている間に気が付いたのは、光の色が違うって事。

 ザームさんの時は少し青っぽいというか白っぽいというか、シルバー系の色に見えていた。

 でも、ディノのは赤とか金とか、そっち系の色に見えるんだ。


 それに、ディノの方が光の量が多い。

 こういうときの光って、すごく細かいラメ入った透明のマニキュアみたいに見えるんだけど、見た感じ、ラメの量が倍近い密度なんじゃないかなぁ。


 後は……。この前は暖かそうとか柔らかそうなイメージだったのが、今回はちょっと硬質で冷たそうに見える。

 色のイメージと食い違うんだけど、何となくそんな感じがするんだよね。


「……綺麗だけど、不思議な感じ」


 思わず呟いた言葉を拾ったのか、ディノの口元にうっすら笑みが浮かぶ。


 そしてそれを合図にしたように、術符に流れ込む光が多くなって、最初は模様の所だけ光っていたのが術符全体が淡く光り始める。

 模様の部分がひときわ明るく輝くのと同時に、光が的の方に向かって放たれる。

 一瞬のタイムラグを置いて、的が炎に包まれたけど、炎自体はすぐ消えてしまった。


「そのレベルの術符にしてはいい判定が出たね。

 随分長くためを取っていたからそれでかな?」


 少しからかうような声に振り返ると、ザームさんはブースの上の方にかけられているホワイトボードみたいなものを指した。


「あそこに、的にあてた魔法の属性・威力・発動速度の評価が出るんだよ」


「私読めないよ?」


「まぁ、それはしかたがないね。

 ちなみに今のは、火属性で威力が二、速度が五だね。

 ディノ君が使った符だと平均の評価は一・十だから、威力は平均以上で発動速度は平均以下って事だね」


「ふむ?」


「魔術は簡単なものの方が発動が楽なんだよ。

 だから初歩のものが最速で、威力が上がった分反比例して発動は遅くなるね」


「ゆっくり発動させると威力が上がるの?」


「いや、関係ないよ。

 普通に魔術を使うのであれば詠唱を急いだがためにかんで不完全になって威力がた落ち、なんてことがあり得るから、ある程度の速度以上にはしないことが多いけどね。

 術符を使っての発動の場合は、必要な魔力を込めて発動させるだけだから。

 むしろ発動が遅いのは自分の魔力をうまく扱えてないって証拠だね」


 ザームさんの説明を聞いて、納得できるようなできないような……?


「何か気になることでもありましたか?」


「いや、なんていうか……。

 すごく綺麗でスムーズに流れてるように見えたんだけど、ディノって術符の発動遅いの?」


 さらさらきらきらともたつくこともなく流れてるみたいだったんだけどなぁ。


「……はい?」


「……え?」


 何を聞き返されたんだろう?


「ミュルカちゃん、君にはディノ君が術符を発動させる時、どんな風に見えてたのかな?」


 聞かれて、さっき見たままを説明すると、二人にため息をつかれてしまった。


「どうする? この子無自覚に魔力の流れまで感知しているようだけど、術符の使い方の説明なんて本当にいらないんじゃないかい?」


「そうですねぇ。とりあえず使ってみてください、でも何とかなるかも知れませんね」


 ……あの、なんか怖い結論になってませんか……?


「ええと……」


「普通であれば魔術として外に放出された後の魔力はともかく、準備段階として体内を循環している段階の魔力を読み取るにはかなりの技術がいるんですよ。

 それなのにミュルカは何の訓練もしていないのにそれができているのだから、かなり魔力に対する反応が早いんでしょうね」


「はぁ……」


 わかるようなわからないような説明に、首を傾げてしまう。


 なんだかここの所首を傾げてばっかりいる気がするよ。


「先程術符の発動まで時間がかかったのは、あなたが術符に魔力が込められたのに気付いてから発動させようと途中で止めていたんですよ。

 ためを取ったから威力が上がったというのはザーム先生の冗談です」


「ついでに言うと、威力の方もいくらか抑え気味で打っていたね。

 魔術はやはり術によって出せる威力は変わるけど、本人の才能いかんで左右される部分もあるからね。

 ディノ君の本気ならもっと威力を出せるんだけど、見本にするためならあの程度で充分だからねぇ」


 代わる代わるの説明にうなずくと、ディノは鞄からさっきのと同じ術符を取り出して、私に差し出した。


「やり方はお見せしたとおりです。

 基本は治療魔術と同じですが、今回は攻撃魔術なのでそれを意識してくださいね。

 失敗しても大丈夫なので軽い気持ちで挑戦してみてください」


 さらりと言われ、まぁとりあえずやってみようか、程度の気持ちで術符を受け取る。


 よくわからないからかまえはディノの真似でいいや。

 やってみると、的を指さす格好になるんで、狙いが付けやすいのかな、とか思ったり。

 今回は攻撃なんだから、あたると痛いぞーって思っておこう。

 燃料充填完了、魔力爆弾ていっ!


 なんて、頭の中で考えてたら突然的が炎上したっ?!


「うわっ?!」


「おや、本当に成功したよ。かわいげがないねぇ」


 驚いて声を上げた私に向かって、ザームさんが容赦のないコメントをする。


「……いや、あの……」


「とりあえず火属性は問題ないようだね。次はどれを行くかい?」


「そうですね……。石を降らせていたのだから有力なのは土属性の方でしょうか」


 私の抗議を無視して話を進める二人がまた魔術符を差し出してきた。


「これもやればいいの?」


「はい。お願いします」


 言われるがまま試すと、これは発動はしたものの、なんだか違和感があった。


「なんかこれ、気色悪い……」


「……と、いうと?」


「なんか微妙にサイズの合わない服を着て外作業してる感じって言うか……。

 うまく言えないんだけどなんかしっくりこない感じがして、それが何とも気色悪い気分になるんだよね……」


「なるほど。それじゃあこの属性はあまり相性がよくないのかもしれないよ。

 初級の魔術符だから発動はできるけどって所かな。

 威力はともかく速度がちょっと微妙みたいだしね」


 結果を確認しながらザームさんがそう論評する。


「では、次にこれをお願いしますね」


 そして再度差し出される魔術符。


「今度は何?」


「これは重力属性です」


 重力兵器きたー!


 とか、思ったのは小説の読み過ぎかしら?


 ちょっと面白がりながら試すと、今度はこれといった違和感もない。

 むしろ、慣れてきたのか最初のよりずいぶんやりやすいなぁ。


 そう伝えると、結果の表示されるボードを見ていたザームさんとディノは、二人だけで何か納得したらしい。


「たぶん、重力属性が主で、火属性が従属だね。

 三回目で慣れた分を差し引いてもだいぶ威力も速度も上がってるようだし」


「そのようですね。

 では、重力属性を中心にした魔術具にしましょうか」


 ……先生方……。本人は何がなにやらまったくわからないんですが……?

お読みいただきありがとうございます♪

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