19怪
―孕石家屋敷―
「此度の一件はすべて加藤が仕組んだ事だと判明いたしました。
藩内の治安を乱した罪により加藤は死罪となりました。孕石家の皆様に関しましては完全に巻き込まれただけではありましたが政之進殿が直政公由来のお皿をを割ったことは覆しようのない事実でございます。
藩主様も悩まれていましたが、藩主として先祖由来の品を粗雑に扱われた事に処罰をしないわけにもいかないという事です。
よって、政之進殿は藩外追放とし孕石家も取り潰しとなります。
今も孕石家に仕えられている家臣の皆様は私、木俣がお預かりしこの領地も隣領の加藤の領地とあわせて我が家老の木俣が一時領有致します。
家臣の方々の生活は私が保障致します。」
木俣が今回の顛末を政之進や孕石家の家臣に説明した。
政之進が
「ご配慮頂きありがとうございしました。
家臣・領民共によろしくお願いします。」
政之進が頭を下げた。木俣が
「それでは、政之進殿には酷ですが今後のお話をさせて頂きますので別室に来て頂けますか?」
「承知しました。」
木俣と政之進は移動して誰も周りにいないのを確認して木俣が
「政之進殿とお菊殿が普通に暮らせるようにするためには別の藩に移動して貰うのが得策と考えました。
私の親類が納める領地で農民として暮らして頂ければと思います。さすがに武士として暮らしていただくのは難しかったので、耕作地を求めて移民してきた農民という感じにさせて頂きます。
身分制度上の理解は進んでいませんので政之進殿が農民として新たな人生を初めて頂くのがよろしいかと思います。」
「色々とお世話になりありがとうございます。
正直にいうと私も死罪となるのではないかと思っておりましたので寛大な処置を頂き感謝しております。」
政之進は神妙な顔で言った。木俣が
「定期的にその親類に贈り物をしてまして、その使者が近々、向かいますのでそれに政之進殿とお菊殿もついて行ってください。
護衛にもなりますし、私の使者として藩内の移動も楽になりますので安全に目的地に向かえると思います。」
「本当に何から何までありがとうございます。
このご恩は決して忘れません。」
「お二人が幸せになれるよう私も願わせて頂きます。」
政之進は一段と深く頭を下げて木俣が帰るのを見送った。