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第43話「母の温もりと消えた剣」その16

第43話「母の温もりと消えた剣」その16



<命名ミッション5日目>

<初めてのクエスト2日目>

<罰ゲーム開始2日目>



【イロの村】


■ニナ視点


イロの村に戻ってきた私達は、意識を失ったままのマリスさんと、満足そうな顔で眠っているお嬢様方をマリスさんの部屋まで運んだ。流石に3人とも泥だらけだったので、男性であるジギーには退場して貰い、3人の体を拭き着替えさせてから寝床に横たえた。


「ふふ、本当の姉妹のようですね……」


淡い光を放つ魔石に触れ、明かりを消してから音を立てない様に、そっと下へと降りた。


………


……


…


私は階段を降り、宿屋の受付へと足を向ける。 この小さな村には人があまり立ち寄ることはないが、街道で夜を明かすよりかはマシだと、飛び込みの客はたまにあるという事もあり、宿屋の主人は受け付けの側の部屋で寝泊まりをしているとのことだったからだ。受付の鈴を鳴らし、宿屋の主人を待つ。


「お待たせしました……ああ、貴方でしたか。 マリスは……娘は……」


「大丈夫です、明日には目を覚ますでしょう。 早い方がと思いまして、調査の結果を伝えに参りました……」


「よかった……明日でも構いませんのに、では、そこの部屋で……」


「いえ、この場所で結構です、明日準備ができ次第ここを出ますので」


”もう少しゆっくりとしても”と引き留められるが、丁重に断り、調査の詳細を語りだした……。


………


……


…


「災教(さいきょう)ですか? まさか【ヤマの森】で、そんなことになっているとは……」


「はい、【陽の樹】の元で妖しげな儀式を……。 それに【魔獣】も確認しています」


「魔獣まで? 一体何が起こっているんですか?」


災教とは、【災厄の渦】を神と崇め、崇拝する者達だ。

災厄の渦を鎮めた魔女を憎悪し、悪評を立てる事を信条としている。森にいた連中も召喚術か使役しているのか分からないが、魔物よりも厄介な【魔獣】を従えていた。 


「【魔女の森】に生息する個体とは違い、小型でしたので撃退は出来ましたが、マリスさんがダメージを受けました……申し訳ありません」


「いえ、貴方の所為では……、それに、無事だったのですし……」


魔物と違い、魔獣は魔法のようなスキルを使うモノがおり、精神にダメージを与える攻撃をマリスさんが受けてしまったのだった。


「それと、お聞きしたいのですが……」


宿屋の主人に事情を説明し、宿帳を見せてもらう。出発前に”ここしばらく、若い3人の冒険者が村を訪れた事はない”と聞いてはいたのだが、自分の目で確かめたかったのだ。


「この塗りつぶされた箇所、その3人の若い冒険者ですね?」


「は、はい、ギルドの関係者だという者が依頼を放り出して逃げ出したと荷物があるなら処分し、ここを訪れなかった事にするように念を押され、宿帳からも削除を……」


「そう言うことでしたか、見抜けなかった私もまだまだですね……」


塗り潰された部分を、そっと指でなぞる……。3人の若き冒険者の存在を無かった事のように、黒いインクはただその色でもって、彼らの痕跡を覆い隠す。


「すみません……、騙す気はなかったのですが」


彼に非はない、依頼を放棄し逃げ出した冒険者が、悪事に手を染めた場合、悪評もたつ上、ギルドからの要請となれば小さな村の宿屋は従わざるをえないだろう。


「3週間前ですか……、もっと早く気づいていれば、彼らの手荷物位は回収できたかもしれませんね……」


3週間前……ギルドにランクの更新に行っていた時に、彼らはここに来ていた。その翌日に彼らの冒険は終わりを迎えた……。


「実は、彼らの手荷物は……処分していないんです」


「え? それは本当ですか!」


彼は倉庫に赴き、暫くして3人の手荷物を持ってきてくれた。 彼も駆け出しの冒険者であった頃にクエスト中に遭難、救助され、快復後に大事な手荷物を預けていた宿屋に戻った際、大事に保管されており、無事手に彼の元に戻ったという事を話してくれた。


「……宿屋の方の気まぐれかもしれませんが、その時の感謝の気持ちは、今も忘れていません。 だから彼らにも何か事情があったのかもしれないと思ったら、戻って来るかもしれないと思って……処分することが出来なかったんです」


「二人の気高い宿屋の主人に、感謝をしなければなりませんね」


賊から聞き出し、雑に埋められていた彼らを、個別に埋葬し直す事は出来た。剥ぎ取られた装備も一部は回収できた。彼らの身元が分かるのはギルドタグだけであり、手荷物類は無かったのは宿に置いていた為であった事は僥倖だった。


「良かった、こちらに置いてあったのですね」


「それは……クエストの依頼書?」


「はい、彼らは決して逃げ出したのではない事を証明してあげたいのです。クエスト達成のサインをお願いしたいのですが……」


分かってはいる、この依頼は常時受付で、彼らが受けたという記録は既に破棄されている事だろう。

でも、クエスト放棄(逃げた)という汚名は、ギルドのブラックリストに表記される事になる。それを何とかしてあげたい……その為に。


「ええ、依頼3件分、”達成”のサインをしますよ」


「……いいのですか?」


依頼書に、依頼者からの達成サインの記載してもらいギルドに提出すれば”依頼の完了(クエスト達成)”となる。 事情を話し、万が一、破棄された依頼書の破棄が撤回された場合、サインがされていると報酬が余分に請求されることもあり得る、それなのに……。


「命を奪われたとはいえ、彼らは、この村の依頼を受けてくれて、野盗とも戦った……それでいいんですよ、彼らは村を護ってくれたのです。 その恩を返さねばなりません」


「感謝します……」


「後は俺の出番っすね!」


「ジギー?」


宿泊客がくつろげるフリースペースで、採取物の仕分けをしていたジギーがやってきた。


「こっちの準備は終わったんで、今から俺がクエスト達成の報告に行きますよ、今から出れば昼には付くでしょう」


「申し出は有難いのですが、貴方も疲れているでしょう? 陽が昇ってから馬車で……」


彼は乗合馬車でここまで来ていた、こんな時間に乗合馬車などあるわけがない。だが、彼はにかっと笑い言った。


「ニナさん、急いでいるんでしょう? 嬢ちゃん達がいなければ今すぐにでも馬車を出していた……違いますか?」


「貴方にまで、見破られていましたか……」


「ニナさんやメロディア先輩には、散々しごかれましたからね、俺だって成長してるんですよ」


有難い申し出であった、本当は今すぐにでもメロディアの元へ走りたかったのだ。


「とりあえず、話は聞こえていたんで、後は任せてください。 馬車の都合にもよるんですが、明日の夜までにはランセル家に、報告に向かいますよ」


「お嬢様の件といい、何から何まで助かります」


「気にしないで下さいよ! 俺は、今の俺があるのは二人のおかげ(しごき)だと、感謝してるんです……その恩返しだと思ってください」


昔の頼りなかった少年の面影は無く、彼は立派な冒険者の顔になっていた。


「ふふ、なら、メロディアには”今夜は、ジギーが究極の料理を披露しに来る”と伝えておきますね?」


「うえぇぇ!? いきなりハードル上げないで下さいよぉ~」


「おや、出来ないんですか?」


「ふん、やりますとも!」


私とジギーは、昔の様に拳と拳を合わせた。 ジギーは、宿屋の主人に何かを手渡し、その後、村を後にした。


………


……


…


<命名ミッション6日目>

<初めてのクエスト3日目>

<罰ゲーム開始3日目>



■マリス視点


チュンチュン、チチチ……


「ん、あれ? ここは?」


小鳥のさえずりに、ゆっくりと目を覚まし起き上る。 頭が重い……。


「私の部屋? ヒトミちゃん? ジーナちゃん?」


天窓から朝日が射す、私の部屋には私一人だけだった……。


「あれぇ? 可愛い妹が二人もできたって、素敵な夢だったのかな?」


徐々に頭が冴えてきた、そうだ、クエストに出て、野盗を倒して……ニナさんと一緒に……。


「うぶ!」


私は嘔吐感から口を押える。 森の中に入り、最初に行ったのは、野盗に殺されたという冒険者たちの亡骸を掘り出し、丁寧に埋葬し直す事だった。 人の亡骸なんて初めてじゃないけど、私より少し上位の少年少女が、無残な状態で雑に埋められており、それを掘り出したのだが……。


「これが、現実……」


少年二人は、切り傷や打撲の痕が無数にあり首は切断されていた……少女の方は恐らく性的な暴行を受けた上で首を絞められたのだろう、身体中に蹂躙された痕があり、苦悶の表情のまま埋められていた。


私は耐えきれず、胃の中の物を全てぶちまけたが、ニナさんは動じることなく、腐敗の進んだ亡骸を丁寧に整え、可能な限り綺麗な状態にしていった。


少女の表情も穏やかに整えられ、髪も櫛を入れられていた。 全員、衣服すら全て剥ぎ取られており、全裸だったため、ニナさんが持ってきた、衣服の一部や布で身体の大事な部分を隠す様にしていた。


最後に3つの縦長の穴を掘り、それぞれの亡骸を横たえシーツを被せてから土をかけ埋葬をした。


「今はこれで許してください、近いうちになんとかしますから……」


ニナさんは、謝罪するように埋葬し直した簡易的なお墓に頭を下げていた。


「私も、ああなっちゃう時が来るのかな……」


少女の苦悶の表情を思い出し、背筋がぞっとして自分の肩を抱く……怖い、怖い!


「マリスお姉ちゃん……大丈夫?」


「マリスお姉ぇ! 起きたかー!」


「ヒトミちゃん?……ジーナちゃん?」


床板を開き、部屋に上がってきた二人の妹たちが私の側に来ていた。


「うわぁ?」


「ふえ?」


安心したのか、私は二人を抱き寄せて泣いていた……。


………


……


…


<命名ミッション6日目>→継続中

<初めてのクエスト3日目>→達成(ギルドへの報告待ち)

<罰ゲーム開始3日目>→終了?






<一日前の昼過ぎ>


【ランセル家の屋敷】


■メロディア視点


「魔女狩り? それはまたナンセンスな……」


伝書鳩で送られた手紙を読み終え、椅子に深く腰を沈める。


「先生に知らせるべきなのかな?」


何かヤな予感がする……、とりあえずはニナたちの帰りを待ってからだが……。


「なぁ、トラオス」


書斎の奥にいる、愛すべき夫に声をかける。


「ん? どうしたんだいメロ?」


「ちょっち、お願いがあるんだけど、聞いてくれるよね?」


「はいはい、どうせ拒否権はないんだろ?」


「わかってるじゃん、実はさー」


ニナの手紙に書かれていた”お願い”を叶えてやろうと、私は行動を開始した。


………


……


…


スマホ死亡>新スマホに変更、コロナ騒ぎ>仕事がヤバイ! 

何とか生きてます、相変わらずまとまりがなく長くなってしまいましたが、よろしくお願いします。

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