最終話 終わり無き道に進むべし
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戦いは終焉を迎え、デウスの勝利に終わった。
デア達は魔神族として復活した。
「なぁ、一つ気になることがあるんだが。」
デウスが立ち上がり、後ろを振り返る。
「どうした?」
「あぁ、いや、どうしたじゃなくてだな。お前ら誰だよ。」
そこには知らない人が四人居た。
「忘れたのか?妾はマルミアドワーズぞ。」
「え?」
「我はエクスカリバー。」
「ええ?」
「「私達は二人で干将・莫耶よ。」」
「えええ!?」
その知らない四人は武器だった。
デウスの愛用していた神気霊魂剣、マルミアドワーズに、デウスがサクラに与えた聖剣、エクスカリバー、デアの命を救った双刀、干将・莫耶。
全員元は武器だ。
「なんで擬人化?」
「それは妾らにも分からぬ。」
そう言ってマルミアドワーズは少し不本意な顔をしている。
「まぁ、擬人化してはおるが、この通り武器は使える。」
そう言ってエクスカリバーが武器を取り出す。その手には確かに聖剣エクスカリバーが。
「どういうことだ母さん!」
「武器は擬人化させられるのよ。知らなかったの?」
「初耳だわ。」
デウスが突っ込みを飛ばすと、ディオスは大声で笑っていた。
「デウスよ。マルミアドワーズの五星解放は出来てるな?」
「へ?あ、あぁ。出来てるけど。」
「武器には特有の解放条件があってな。神気霊魂武器は五星解放。聖剣は霊宝と終寳。魔剣は極巌と霊従。干将・莫耶の場合は主人を認識出来ている時点で解放状態。まぁ、仮に神気霊魂武器の五星解放が完了しているとする。その状態で契紋に自分の血を付着させる。そうするとこうして擬人化出来るという事だ。」
とても説明口調のディオス。意外と分かりにくいが、なんとなくは理解出来る。
「と、とにかく、これからもよろしくな。みんな。」
デウスがそう言うと、みんな頷いたり、笑ったりしていた。
「再開の挨拶は済んだか?」
ディオスがデウスに問いかける。デウスは一回頷いた。
「じゃ、デウスはディオスに。デアちゃんは私についてきて。他のみんなは貴方に任せるけど、大丈夫よね!」
「「貴方?」」
デウス達は一斉にディオサが声をかけた方向を見た。
「この傷を付けた張本人に言われるのは少し嫌じゃのう。」
そこにはジークフリートが居た。
「何を任せたんだ?」
「全員、魔神族の一員になったことだ。世界で一番の種族のことを教えてやろうと思ってな。」
「魔神王の命令には従うつもりじゃが、最高神からの指図は少しのうぅ。」
そう言ったジークフリートをディオサは強く睨みつけた。
「あぁ?」
ジークフリートは凍りつき、一礼した。
「申し訳ございません。」
「それでよろしい。」
最高神の闇を見た気がするとその場にいるディオサとディオスとジークフリート以外は思った。
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ディオスについて行くデウス。
着いた場所は何故か全魔神が集結している公表の場。
「親父、これは?」
「まぁ、見てろ。」
そう言ってディオスは一歩前に出て息を大きく吸った。
そして次の瞬間ーー
「ちゅーーもーーくーー!」
と大声を上げた。
その声に反応し、その場にいる魔神族達は一斉にディオスの方向を見た。
デウスは軽く耳を塞いでいた。
「今を持って俺の魔神王の座は消え去った!魔神王になりたいものは挙手せよ!」
その言葉に全員が手を挙げた。
「よし!ならば、ここに居る俺の息子であるデウスを倒してみろ!」
「…………は?」
デウスの戸惑った声とは逆に、全員やる気満々の御様子。
「という訳で、後は頑張れ。」
「いや待て!俺武器置いてきたし!なんで俺が!?親父じゃねぇの!?」
「俺はいいよ。この場にいる全員神器無しでも勝てるし。」
サラッと凄いことを言うディオス。
デウスは溜息をつき、地面に座り込んだ。
「どうしてこうなったんだー!」
「叫んでる暇があるなら武器を作り出せ〜。」
「え?」
ディオスの言葉にデウスは前を見た。
そこには武器を構えて、まるで獲物を狩る密猟者のような眼をしている魔神族達が居た。
「こうなりゃとことんやってやる!」
デウスはそう言って覊凝で武器を作り、大勢に立ち向かった。
一方でデアの方も、公表の場に居た。
そこにはウリエルも居た。
「とりあえず、新しい最高神を決めるわ。」
天神族達はディオサの方向を凝視している。
「どうやって決めるんですか?」
一人の天神族がそう言うと、ディオサは頷き
「この中で最後まで残ったものが新たな最高神よ。」
と言った。
「すみませんが、戦う必要がおありなんですか?」
天神族の一人が手を挙げてディオサにそう言うと、ディオサは一歩前に出た。
「何故戦うのか。それは、この中で強くもない者が全員の指揮に立つのは不本意な人もいるでしょ?それに、魔神族と訓練戦闘することもあるわ。魔神王と最高神が戦って、一瞬で倒されるなんて、天神族の恥よ。」
そのディオサの言葉に納得したのか、全員一斉に武器を手に取った。
「さ、とことん暴れてらっしゃい。」
そう言ってディオサはデアの背中を押した。
「え?え?た、戦うんですか?」
「えぇ。そうよ。貴女なら出来るわ。」
デアは少し疲れた顔を浮かべ、先程渡された干将・莫耶を構えた。
「では、行きます!」
デアは前に出た。
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「お前で最後だな。」
デウスはそう言って覊凝で作りだした短刀を敵に向けた。
「あんだけ戦っといて疲れなしとは。流石は魔神王様の息子。だがしかし、魔神王になるのはこの私だ!」
そう言って男性はデウスに聖剣を振った。
デウスは短刀の剣先で軽く弾き、敵の力を裏返すように短刀の剣先を下にし、聖剣を受け流すように落とした。
思い通り聖剣は地面に着斬した。
「短刀一刀流。」
デウスは短刀を逆手に持った。
「しまったっ!」
男性は避けることに目を向けておらず、回避を遅らせてしまった。
デウスはそれを無視するかのように短刀を最短距離で振りかざした。
「英蒓豪闕!」
短刀は男性の懐を貫き、そのまま五方向に斬撃を発生させて男性の体を切り刻んだ。
デウスは目に持っていた短刀を消去した。
そして、脱力したように地面に座り込んだ。
「ふぅ。」
「お疲れさん。」
「ほんとだぞ。」
デウスはそう言って額の汗を拭い、ディオスの方向を見た。
ディオスは顔に笑みを浮かべていた。
「俺が勝つのを確信していたのか?」
「…どうしてそう思う?」
「親父の顔が物語ってるよ。」
そう言うと、ディオスは大声で笑った。
「ガハハハハ!…そうか、顔が物語ってるか。そうだな。お前が勝つと思ってたよ。」
ディオスはそう言ってデウスに手を伸ばした。
「立てよ。今日からお前が新たな魔神王だ。」
デウスはその手を取り、立ち上がる。
「ま、ボチボチやりますか。」
デウスはそう言ってため息をついた。
デウスの強さを実感した魔神族達は拍手をしたり、歓声を浴びせたりしていた。
一方デアの方は残り一人だった。
「君は凄い力の持ち主だ。けど、勝つのは僕さ。」
「それはどうでしょう。」
干将・莫耶を構えたデアは地面を蹴った。
男性は干将・莫耶を片刃の剣で防いだ。
デアは防がれることを承知で敢えて力を抑えていた。
そのまま蹴りを叩き込むデア。
「ぐっ!」
腹に直撃した蹴りは確実に男性を怯ませた。デアは地面に足を向けた瞬間、敵が反応も出来ぬほどの速さでその体を斬り裂いた。
「のわぁ!」
男性は横腹から血を吹き出し、地面に倒れた。
干将・莫耶を地面に突き立て、デアは座り込んだ。
「終わりましたよ。」
「早いわね。合計二十分。」
約五十もの敵をたった二十分で狩る時点でかなりの実力者だと言える。
「いえいえ、遅い方ですよ。デウスの方が早いです。」
「貴女、私に似てるわね。」
「そう、ですか?」
「えぇ。絶対自分を高く見ず、近くにいる人を必ず敬う心。ディオスが私に言った言葉よ。それに一番近いのが私だって言ってくれた。貴女もきっとそうなのね。」
デアは立ち上がり、地面に突き立てていた干将・莫耶を手に取った。
「そんな大したことじゃないと思います。初めて対人戦で負けた相手なんです。きっと、その時に出た尊敬の意だと思います。」
「可愛い顔して意外とカッコイイこと言うのね。」
ディオサがデアのことを小馬鹿にする。
「さて、勝負は終わり。新しい最高神は貴女よ。デア・ルナティック。」
こうして魔神王と最高神が定められた。
この後一度全員合流し、別々の場所に行った。
デウスは魔神王の王座に。デアは最高神の王座に。他のみんなは国に帰ったり。
「親父。」
「なんだ?」
「少し野暮用でここを出る。」
「……帰宅は何日後だ?」
「日もかからないと思う。」
「そうか。行ってこい。大体の検討はついてる。」
「ありがとう。」
デウスはその場を少し離れた。
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鳥の声がなる朝。澄んだ青空は太陽に照らされて個性を増す。
街中に並ぶ家の一角。
家の中では男性と女性が軽い談話をしながらお茶を飲んでいた。
「あの子、大丈夫かしら。」
「心配することはないんじゃないか?」
「でも、ここを出発してからもう八ヶ月以上は経つんですよ?」
子供のことを心配しているのだろうか。そんな相談をしていると、ドアの開く音が二人の耳に飛び込む。
「誰だろう?」
「私、出ます。」
そう言って女性がリビングを抜け、ドアの方向に向かった。
「は〜い。何方でしょう、か……」
女性は言葉を失い、両手を口に当てていた。
「誰が来たんだ?」
そう言って男性が心配したのか、その場に赴いた。
そして、男性も言葉を失った。
「…ただいま。」
光の逆光が激しく少し顔が見ずらかったが、ドアを閉め、逆光を取り省くと、その顔が鮮明に目に飛び込んできた。
「……デウス。」
そこにはデウスの姿。
「あんた、どうしたのよこの怪我!」
女性はデウスの右眼に手を当てた。
デウスの右眼は開眼されていたが、縦に傷が入り込んでいる。
「これは少しな。」
そう微笑んでデウスは女性の手を取った。
「遅いじゃないか。」
そう言って涙を流しながらデウスに近づく男性。
「ごめん。思いのほか時間がかかっちゃってさ。」
そう言ってデウスは女性の手から手を離した。
「俺、本当の親に会ってきた。」
その言葉に男性と女性は顔を見合わせた。
「……そうか。本当の親に、会ってきたのか。」
「……じゃあ、私らはもうお前の親ではないね。」
そう二人は悲しそうに言う。
「何言ってんだよ。」
デウスは笑顔で男性と女性を見た。
「「え?」」
デウスの言葉に男性と女性は驚いた表情を出した。
「俺は今日から魔神王の仕事でここには戻ってこれなくなるけど、二人は俺を育ててくれた親だ。もう親じゃないなんて言わないでくれよ。」
デウスも一筋の涙を頬に通していた。
「嬉しいねぇ。そんなこと言ってもらえるなんて。」
女性は涙を拭いながらそう言った。
「そこで提案なんだけど。」
「なんだ?」
男性が問いかけると、デウスは一間置いて言った。
「俺の街に来ないか?」
「デウスの、街に?どういうこと?」
「魔神王になったし。何か新しいことでもしようかなと思ってさ。街を作ることにしたんだ。だからさ、そこに来ないか?」
デウスの提案に男性と女性は少し悩み、それからデウスの方向に向いた。
「いいよ。あんたが勧めてくれた提案だ。」
「そうだな。子供の指示に従うのも、親の勤めってもんだ。」
そう言ってデウスの提案を快く受けた男性と女性。
「そうか。ありがとう。二人が俺の作る街の初めての滞在人になる。これからもよろしく。」
そう言ってデウスは男性と女性と握手を交わした。
デウス達の戦いは終焉を迎えたが、きっと魔神王としてまだまだ生きながらえるのだろう。
『終わり無き道に進むべし。』嘗ての英雄が残した言葉だ。道は一瞬にして永遠。その意味を見出すにはまだ少し、遠回りが必要のようだ。
きっと世界は変わり続ける。戦いに終焉などないのかもしれない。
デウス達は再帰の英雄と評され、そして、敬われた。
そして、ひとつの奇譚が生まれた。
『運命を背負った契約者の伝説』と。




