第五十四話 本戦の後
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堂々たる最の剣。その剣は嘗て天地を統べるゼウスを討ち取ったとされる。
デウスはその大剣の真の姿を解放した。
『妾の本当の姿を見破るとは。やはり汝は妾の君主に相応しい。ヘラクレスでも、ログトールでも無い汝に。』
マルミアドワーズはデウスにそう告げた。
デウスは笑みを浮かべ、サルバールを見た。
「とっとと終わらせよう。」
デウスは走り出した。
マルミアドワーズフェティアルスの重量は約五トン。デウスは二刀流をしている時点で数トンは持てるようになっていた。さらにもう一本追加で持っているため、筋力は計り知れない。
サルバールはデウスを睨みつけるやいなや腕を振り下ろした。
デウスはその腕を切り裂き、走り続ける。
大量の血を出しながら腕を戻すサルバール。大きな雄叫びと共に地団駄踏んだ。
そりゃあそうだ。腕を裂かれて痛くない訳はない。例えそれがモンスターであろうとだ。
デウスの向かってくる姿を見てサルバールは口を大きく開いた。
「またあれをやる気か。」
デウスはそう言って走っている。
しかし、デウスはあることに気づき、足を止めた。
「まさか!」
サルバールの向いている方向が明らかにおかしい。デウスを見ず、真っ直ぐ前を見ていた。
その先にはアグロル国の中心部に位置する塔が聳え立っていた。
サルバールは口の中から赤い玉を飛ばした。
デウスは急いで後ろに引き、飛び上がる。
火の玉の前に飛び、二つに割った。
「おい。何処見て撃ってんだ。」
デウスは地面に足を付け、サルバールを睨みつけた。
「今のお前の敵は俺だろうが!」
威圧の威力は桁外れで、サルバールはその気迫に負け、気を失い倒れ込んだ。
最後はデウスの気迫によって戦いに終止符が打たれた。
デウスはため息をついてマルミアドワーズを地面に突き刺した。
そして、脱力状態になり、地面に崩れ落ちた。
地面に座り込み、疲れた表情で空を見上げていた。
「凄いのう。」
「一応これでも魔神王の息子ってことだからな。」
「そうかそうか。魔神王の息子か。その息子が何故実の父を打とうと?」
デウスは暗い顔をジークフリートに見せた。
プライバシーに触れたとジークフリートは思い慌てて手を振った。
「い、言いたくなければ言わなくて良い。」
その言葉を無視するようにデウスは語り始めた。自らの過去を。
「俺には今多くの仲間がいる。デア、フローレ、イリビード、シャティス、インビディア、ビングル、イラデゥエトス、ヘルト、アブァリティア、バグラ、ゾルディブ、エネルヴァ、グーラ、アミナル、スペルビア。そしてシグルズ。でも、俺には後三人仲間がいた。コクド、ニルノ、デレーナの三人だ。その三人は嘗て俺とギルドを組んでいた仲間だった。楽しかった。俺はクソジジイにお前は要らない奴だと言われて生きる気力を無くしていた。その時に仲間になってくれたのがこの三人だった。俺は報われたんだ。三人がいた事で。でもな、その幸せも永遠じゃなかったんだ。ある日の朝、災禍が訪れた。俺は災禍と戦った。敵を撃退まで追い詰めて街を何とかして守った。俺はその日大勢の人を助けたと思った。でも、違ったんだ。俺の街には一万人もの人が住んでいた。死者は二百人以上。怪我が約五千人。俺はその日誰一人として救えてなんていなかったんだ。その死者の中に三人が混ざってた。俺は絶望し、生きる気力を無くした。四日ほど経ったある日、死んだような俺をデアが外に連れてってくれたんだ。その時の外の景色は確り覚えてる。日差しが眩しくて、俺を突くような光を放っていた。俺はデアのお陰で分かったんだ。俺には大勢の人を救うなんて無理な話だった。選ぶべき二択の選択で大勢の命を俺は選んだ。人生は、世界は選択の連続。その選択を俺はその時良き選択を選んだと。誰一人として救えてなんていなかった訳じゃなかった。俺は大切な人を救った。それだけでいい。俺はその日決意した。あの災禍をぶっ飛ばすって。旅をしている内にいろんな仲間に出会った。いろんな敵にも、いろんな人達にも出会ってきた。それで俺は魔神王の存在を知った。全ての黒幕である魔神王を倒す。それが三人の仇討ちになるのだと俺は思っている。だから俺は魔神王を倒そうと考えているんだ。」
話し終えたデウスはジークフリートを見た。
話してスッキリしたというデウスの顔を見てジークフリートは笑みを浮かべた。
「お前さんは強い。感情面も、身体面も、そして自分の使命を貫くという根性も。お前さんには倒せるはずじゃ。あの暴君の最悪最凶の魔神王を。」
そう言ってジークフリートは武器を背に入れた。
街中は勝利を祝福した。そして街には新たな古書が生まれたという。英雄の到来、その英雄の名はデウス。
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街では改めて宴をすることになった。デウスとジークフリートも参加した。
ジークフリートと一緒にデウスは酒を飲んでいた。
「そう言えばシグルズの武器って何なんだ?」
「俺の武器?これはバルムンク。神気霊魂剣とは違うが神剣の一種じゃよ。」
「へぇ。」
デウスは薄い反応をして空を見上げた。
空には小さな星々と大きな月が天高く浮いていた。
それを隠すように雲と宴で焚いた火の煙が舞っている。
「お前さんは俺と出会えて良かったと思うか?」
ジークフリートの突の質問にデウスは一瞬返答に困った。
「急に何を言い出す。そんなの一択だろ。」
デウスは酒を口に運んでから言った。
「俺はお前と会えて良かった。仲間もきっとそうさ。俺はなシグルズ。」
デウスは酒を飲み、ジークフリートを見た。
「出会った相手に嫌悪を抱く気は無い。例え敵だとしても。仲間を傷つけた奴以外は会えてよかったと思う。」
「何故敵でも?」
「力を付けれるだろう。成長には敵の存在が不可欠なんだ。俺が今ここに居るのも、ここまで強くなっているのも、全て周りの人達のお陰なんだ。勿論、シグルズ。お前にも感謝してる。」
デウスは酒を机に置き、立ち上がる。
「だからな、良かったかなんて聞くな。」
その時、数名の獣人族に連れていかれた。
ジークフリートはそれについて行った。
「さぁ!あの英雄デウスがこの場に来た!」
司会者の言葉で観客が歓声を上げた。
「これはなんだ?」
「これは宴の名物。格闘技対決だ。」
デウスを連れてきた一人の獣人族がそう言う。
「格闘技?」
「あぁ。武器の使用は無しだ。拳と拳のぶつかり合い。それがこの格闘技対決だ。」
極普通のことを言っている。
「武器の使用はなしか。」
デウスは武器を取り、地面に突き刺した。
マルミアドワーズは形が変わっているため鞘に収まらない。そのためデウスの座っていた椅子の隣に突き刺さっている。
エクスカリバーと龍鱗の鞘を地面に突き立てた。
「おお!やる気MAXだ!」
その言葉に臨場して一人の獣人族が土壌に上がった。
「ここで登場するのは格闘技対決で数々の戦績を残してきた男!ミレムゴーンだー!」
その言葉に観客からは歓声が上がった。
「英雄と戦えるとは。これは光栄だな。」
ミレムゴーンとやらはデウスを見てそう言う。
「こちらこそこの場で数々の戦績を残している男と戦えることは光栄だと思っているよ。」
デウスとミレムゴーンは一通り話し終わると、睨み合った。
「両者準備は宜しいかな?」
司会者の言葉にデウスとミレムゴーンは頷いた。
「では初め!」
その言葉を合図にミレムゴーンは構えた。
構えるミレムゴーンに対してデウスは構えることも無く突っ立っていた。
「行くぞ!」
ミレムゴーンは突進をしてきた。
デウスは暴れ牛を躱すように軽やかに回避する。
ミレムゴーンはそれを追いかける牛のように追撃する。
デウスは簡単に躱す。
「避けてばかりではつまらないな。もっと来い!」
「ならこれでどうだ。」
デウスは回避を辞め、ミレムゴーンの目の前に立った。
デウスはミレムゴーンを強く睨みつけた。
ミレムゴーンはスピードを段々と落とし、仕舞いには動きを止めた。
「ほい。」
デウスはミレムゴーンのデコにデコピンをした。
ミレムゴーンはその攻撃を喰らい、ゆっくりと後ろに倒れた。
覊繃の力だ。
「なななななんと!あの暴走狂のミレムゴーンがたった一撃のデコピンにやられてしまった!」
デウスは腕を組んだ。
「もう終わりか。覊惹はやめるか。」
そう口にしている前にまた男が現れた。
次は先程よりも少しガタイがいい。
「次は俺だ。」
声も中々に渋い。熟練者と見てもいいだろう。
「いいぜ。来い。」
男はデウスに殴りかかった。
デウスはその拳を拳を重ねるように殴りかかった。
拳と拳が衝突し合った。
男は中々と耐える。
「なかなかやるじゃねぇか。」
「お前こそなっ!」
デウスは足を上げ、男の目の前スレスレを蹴り上げた。
驚いて硬直している男を左踵で横に蹴飛ばした。
顔を蹴られた男は顔を歪めて飛んで行った。
「あれは骨が折れるほどの力だ!」
怪我をした男など無視して観客者や司会者はデウスを見ていた。
どうやら死者は当たり前のように出るようだ。
「次はこの俺様だ。」
「ここで大会チャンピオンのゴリラマンのリクトルオリオンが場に立った!」
歓声が先程よりも大きく上がった。
「今度はこっちから仕掛けさせてもらう!」
デウスが殴り掛かり、白熱した戦いとなった。
ジークフリートは場の前でデウスを見ていた。
「頑張れー。」
小さい声だったが、確りとデウスを応援していた。
『こんな穢れた俺でも仲間と思ってくれて嬉しい。デウス、俺はお前さんについて行こう。』
そして宴は終わりを告げ、デウスとジークフリートはアグロル国を出発した。




