第四十一話 傲慢の仲間入り
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デウスは闇の翼を音立てて生み出し、はためかせた。
「次は何処に向かおうか。」
デウスが翼をバタバタとさせながら考える。
「ありがとう、デウス。」
デアがデウスに礼を言う。
「何がだ?」
「あの男に勝ってくれて。」
デウスは確信を得た。あの男とはアインクのことだろう。
「俺があんなクズに負けるわけねぇだろ。」
デウスはデアの頭を撫でる。
「デウス、次の街は″ミシュラド国″にしないか?」
ヘルトが口を開いた。
「ミシュラド国?」
「織の故郷だ。そこでアブァリティアとも出会ってる。」
要するに、新たな罪龍に会えるかもしれないということだ。
でも、デウスには問題があった。
まだグーラの主が見つかっていない。
かと言ってもレイシング国の騎士達は自分達の街を守らなければならない。それに強いとも言い難い。
悩んだ末に生まれた結果は
「よし。グーラ、ミシュラド国でお前の主を探す。」
「おぉ。そいつぁ助かる。」
グーラも否定することなく賛成する。
「ヘルト、ここからミシュラド国までの道のりは分かるか?」
「あまり覚えてないんだけど、確かここから東に三十七キロぐらいだった。」
意外と距離がある。
「なら、少し飛ばすぞ。しっかりついてこいよ。」
デウスはそう言って物凄い勢いで空に飛んだ。
「あ、おい!待て!」
フローレが急いで龍化してデウスのあとを追いかけた。
他の皆もその後ろを追いかけた。
デウスが飛んでいると、何かが近づいてきた。
大きい角の生やした翼のあるモンスター。
フローレではない。他の皆でもない。
しかも、後ろからではなく横からだ。
デウスは目を凝らした。そこに居たのは見覚えのある龍だった。
「あれは、」
龍はデウスの隣を飛ぶなり言葉を発した。
「久しぶりだな。あの時の餓鬼。」
見た目にも、声にも覚えがある。間違いない。今デウスの隣に居るのは
「スペルビア!俺達を襲いに来たのか!」
「違ぇよ。」
襲いに来たのであれば今頃デウスは地面に叩き落とされている。
「ならなんだ。」
「お前の活躍は聞いてる。あのドーマを倒したんだってな。」
スペルビアもデスペランドーマのことをドーマと呼んでいる。
「ついさっきの事だぞ。どうして分かる。」
「周りのモンスターから聞いてな。先程ここに着いたばかりだ。」
デウスを追うようにここに着いたというスペルビア。
「何故ここに来た。」
「お前に加勢してやろうと思ってな。」
「それは、どういう風の吹き回しだ。」
「簡単な話だ。単純にお前の未来が気になってな。」
「未来?」
「今まで魔神王に逆らおうなんて思う奴はお前ともう一人しかいない。だからな、もう一人とは違う未来を辿るのか単純に気になっただけだ。」
完全に気分屋である。
「そのもう一人は誰だったんだ?」
「お前知らねぇのか?古文書に書いてあるだろ。」
「俺は古書をあまり持ってない。」
スペルビアは少しため息混じりにもう一人の名前を言った。
「バーサーカー。」
「…それがもう一人の名前か?」
「そうだ。フルネームはバーサーカー・ウガラ・ベークツゥリオ。魔神王に反逆して勝負を挑んだが、尽くボコボコにされて仕舞いには十字架にかけられて首を跳ね飛ばされた。」
「なんで反逆したんだ?」
「そこまではわからん。だが、一つ言えることは、バーサーカーはお前と同じ特殊スキルを持っていたということだけだ。」
デウスの特殊スキルは『不制御狂乱暴君者』。
バーサーカーはそれと同じ特殊スキルを持っていた。
「お前の特殊スキルは対魔神王のためにバーサーカーが五十七年の月日を掛けて完成させた最強の特殊スキルだ。」
バーサーカーはこれを用いたが魔神王には敵わず敗北してしまった。
「でも、バーサーカーが作った特殊スキルの『不制御狂乱暴君者』は未完成だった。」
「と、言うと?」
「その特殊スキルには無限の可能性が秘められていた。戦うことや、自分の見に起こったことでギアが発動し、効果の扉が開かれる。今お前の開いた扉はせいぜい一つ。あと四十九個の扉が存在する。」
解放条件は分からず、一つ一つ別の解放条件が存在する。
デウスは解放の扉をまだ一割程度も開けていない。
「とにかく、お前の未来が気になったからついて行く。ただそれだけの事だ。」
「そうか。ならお前と戦わなくて済むな。」
「別に戦いてぇんだったら戦っても良いんだぜ。」
「やめとくよ。」
そう言ってデウスはさらに速度を上げた。
それについて行くスペルビア。
スペルビアは罪龍の中で一番飛ぶ速度が速い。その速さは最速でマッハに到達するほどの化け物である。
デウスの速度が速すぎて、たった数分でミシュラド国に着いた。
しかし、着いたのはデウスとスペルビアだけだった。
「お前の仲間はどうした?」
「あいつら遅いんだ。もう少しかかる。」
「みっともねぇな。運動不足か。」
デウスは少しため息をついた。
「そうだとしたら俺の速度に負けるのも無理ねぇな。」
デウスは先にミシュラド国に近づいた。
相変わらず門番が待ち構えている。
ミシュラド国の武器は少し特殊だ。
「おい!そこの男と龍!止まれ!」
いつもの様に門番に止められた。
「どういう要件でここに来た!」
きつく言われ、少し頭に来たデウス。
だが、怒るとさらにめんどくさい事になりそうだと思い、怒ることをやめた。
「ここで滞在したいだけだ。」
「その龍はなんだ!」
門番の問いかけにデウスが応えようとすると、スペルビアが口を開いた。
「俺は九つの罪龍。傲慢の罪、スペルビア様だ。」
門番は少し驚いた顔をしていたが、直ぐに我を取り戻した。
「冒険者カードはあるか!」
デウスは持っていたが、スペルビアは持っていない。
「冒険者カードはないのか?」
「ねぇよ。俺が持ってるとでも思うか?」
デウスは頭を掻いた。
「とりあえず、まずはお前の冒険者カードを作らなきゃな。」
デウスはそう言って門番に話をつけた。
すると門番は「ついてこい」とひとこと言って歩き出した。
デウスとスペルビアは門番について行った。すると、そこに大きな鏡があった。
「これに触れ。レベルを図る道具だ。」
門番はそう言ってメモ用紙のようなものを取り出した。
スペルビアは渋々その鏡に触れた。
すると、その鏡は黒く滲み、割れた。
「これは、信じられない。」
門番がそう言い、メモ用紙に何かを書くと、走って門まで戻った。
「なんだ?」
デウスが疑問に思っていると、門番が帰ってきた。
「こいつを試してくれ。」
先程の鏡とは少し違う。
「またか。」
スペルビアはもう一度何かに前足を置いた。
鉄のようなもので作られた縁に硝子ではない反射物。
その物は音を立てて、黒い稲妻を発生させる。
「これは凄いな。」
そう言って門番はメモ用紙のようなものに書き写した。
「お前さんのレベルは五千七百七。魔神族に匹敵するレベルだ。」
スペルビアは当然だと言うようにドヤ顔をかます。
「ついでにそこのお前さんも図ってみるといい。」
デウスはそう言われ、物に手を置いた。
すると、即座に潰れた。
「…………」
門番は唖然としていた。
「あ、壊れた。」
「壊れたじゃねぇよ。」
すると、後ろから声が聞こえた。
「フローレか。」
ミシュラド国に到着したフローレ達がいた。
「まさか、スペルビアと一緒だとはな。」
「で、これなんなんだ?」
デウスが問いかけるとフローレが答えた。
「それは反射板と言ってな。反射鏡の上位互換のレベル図り機だ。壊れることは全くないんだが、主のレベルが高過ぎる。」
その時、我に帰った門番がまた何かを取りに帰った。
そして、またすぐに戻ってきた。
次は何やら神々しい物が出てきた。
「吸収反射合金だ。今までこれで図れなかったレベルはない。流石に壊れはしないだろ。」
門番はそう言ってデウスの前に置いた。
「触ってみな。」
デウスはゆっくり吸収反射合金に触れた。
黄金に輝き、大きく光を放った。
すると、その吸収反射合金に少しヒビが入った。それを見てデウスは即座に手を離した。
門番は冷や汗をかき、空気を飲んで問いかけた。
「お前さん、何者だ?」
「…ただの冒険者だ。」
吸収反射合金にヒビをつけるものは今まで人間では見たことがない。
大天使が触れぬ限りヒビは入らない。しかも、大天使でさえもヒビが入るのはたった数ミリ程度。
デウスの場合数センチは入っている。
「お前さんの今のレベルは推測不可能。確実に言えることは、六桁は軽く超えている。」
レベルはその者の戦闘力を表す。
レベル一の場合戦闘力は大体二十程度。レベルが百あれば戦闘力は二千五百ほど。
レベルが千を超えていれば五万は行く。
そう考えると、デウスのレベルは六桁以上。推定戦闘力は約数百万を超える。
これは異例のことである。
「お前さんなら、今この街に起こっていることを止められる。お願いだ。止めてくれ!」
神に縋る愚か者のようにデウスに願う門番にデウスは事情を聞いた。
どうやら世界中で魔神族が街を破壊するということをするらしい。
多分デスペランドーマもその内に入っているのだろう。
ここに来る魔神族はかなり強いらしく、四大魔神と言われている内の一体だそうだ。
名前はスカサハ・ベルクリオン。
二つの槍を駆使して戦う強敵だそうだ。
デウスは笑みを浮かべて門番の肩を叩いた。
「俺達に任せろ。」
そう言ってデウスは決意を固めた。
「お前ら!連戦で辛いかもしれんが、これから魔神族殲滅戦を開始する!ここが終わったらスラビア国に向かう!いいな!」
全員満場一致で同意し、戦う気を起こした。




