第二話 二つ名
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ある男がデウスとデアが入っている店に入ってきた。
「ここに契約者が来たそうだな。」
二丁の拳銃を腰に掛け、店に入ってきた。
周りの者は驚いて男の方を見る。
デウスとデアは気にせずに飯を堪能する。
男はデウスとデアの座る席に歩み寄ってきた。
「契約者ってのはあんたらだな?」
男は机に足を置いて問いかけてくる。
デウスは口の中の物を飲み込み、フォークを置く。
「そうだが、それがどうかしたか?」
全くの警戒心もなく、少し睨みつけるように男を見た。
「お前らみてぇな餓鬼が契約者か。笑い物だな。」
男は一人で笑いだした。
デウスはため息をついた。
「″餓鬼″は心外だな。確かにお前からすれば子供かもしれないが、それ程″餓鬼″じゃないんだ。」
「ほう?」
男は眉を寄せる。
デウスの服の衿元を引っ張る。
「そんなに言うんだったら見せてもらおうじゃねぇか。お前が餓鬼じゃねぇって証拠をよ。」
この世界では餓鬼は弱者と同じ意味になる。
「いいぜ。」
「そんなに簡単に了承していいの?」
デアがデウスに言う。
「大丈夫さ。」
「でも病み上がりでしょ?」
「途中で気を失うかもしれないが、死なない程度で戦うよ。」
「おいてめぇ!」
男がデウスの衿元を強く握りしめた。
「なんだ?」
「あれ程餓鬼じゃねぇと宣言しといて手加減だァ?ふざけてんじゃねぇぞ?」
「何もふざけてなんかない。」
「ちっ、冷静沈着の素振りをしやがってよ。本当はビビってんじゃねぇのか?」
デウスは立ち上がり、衿元を掴む手を振り払った。
「そんなのはどうだっていい。早く殺ろうぜ。」
デウスの言葉からは優しさは一欠片も見当たらない。殺意のみが込められているようだ。
「なら着いてこい。」
男が歩き始めた。それに続き、デウスが歩く。
「デアはゆっくり飯でも食っといてくれ。すぐ終わらしてくる。」
「分かったわ。」
デアは食事を再開した。
デウスと男は戦場へと移動した。
戦う為に作られたように見える場所だ。
その周りには家が一件もなく、壁になっている。
コロシアムのような構造だ。
「さ、始めるか。武器を出しな。」
デウスは背の大剣を手に掴み、剣先を敵に向けるように構えた。
男は二丁の拳銃を手を取った。
今までのジョブだと持てない拳銃だ。
「俺のジョブは銃使い。銃の扱いならちょちょいのちょいだ。珍しいジョブで知ってるやつはいねぇが。」
自ら解説をした男。
デウスは武器を強く握る。
「そんなことより早く始めようぜ。」
「ふんっ。威勢のいい餓鬼だ。来い。」
デウスが先手を取り、走り出した。
男は拳銃を片方だけ構え、発砲した。
弾丸はデウスの足を貫いた。
「いっ!」
そのまま勢いよく転けた。
デウスは血の爛れる足を抑えながら男を見た。
「デルドラ国から来たって言うから銃のことは知ってると思ったが、知らないようだな。それなら俺のが有利だな。」
男はまた銃を構えた。
デウスはゆっくりと立ち上がり、後ろに下がった。
「遠くに逃げるとは。」
男は捨て台詞のように言い、発砲した。
今度はデウスの左肩だ。
血の勢いは増すばかり。止まる気配などこれっぽっちも感じられない。
「やっぱりお前は餓鬼だな。弱すぎる。」
その台詞を聞いてデウスは少しカチンと来た。
「なら少しだけ本気を出すか。」
人間の限界値の力は八十パーセント程。少しの本気となると二分の一程度。
しかし、これのせいで一気に形勢逆転する。
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デウスの姿は何ら変わりがない。
「お前本気出してんのか?」
「少しって言っただろ。」
デウスは地面を蹴った。
『こいつ!さっきとは桁が違う!』
思いもつかの間、刃が男の真横に向けられていた。
『これは、やばい!』
男は拳銃で防いだ。
しかし、拳銃を一つ真っ二つに斬られてしまった。
「なんて武器だ。鉄を切断しやがった。」
「一つ残ったか。次は仕留める。」
デウスは両手で大剣を持つ。
簡単には勝てないと確信した男はある行動に出た。
「習得したばっかのスキルを使うか。」
男の持つスキルは大砲。
弾丸のスピードは遅いが、威力が桁違いになる。
例えるなら大きさ以外大砲とまるっきり一緒だ。
「これで頭を吹き飛ばしてやる!」
「やってみろ。」
男の拳銃の先端からは火花が舞い、弾丸が跳ね飛ばされた。
デウスは大剣で弾丸を突き刺した。
弾丸は軽々と止められ、地面にカラカラと音を鳴らして落ちた。
男は膝を着いた。
自分の切り札さえも打ち破られた絶望感。
デウスは男の前まで歩いた。
「俺は餓鬼じゃねぇ。」
そのまま振り返り、店まで戻ろうとした。
「待て!」
男の言葉に妨害されるように足を止める。
「なんだ?」
「お前、名前は。」
「デウス。デウス・ペンドラゴン。」
「ペン、ドラゴン。」
名前を聞いて小さな笑みを浮かべ、立ち上がる。
「敵を誤っていた。済まない。」
そう言って男気のないことを口にして男は場を去った。
デウスも店に戻った。
店に戻ると、デアが椅子に一人チョコんと座っている。
「終わったぞ。」
デウスはデアの前の席に腰を下ろした。
「そう。どうだった?」
「あんまりって感じだった。」
そう言って肘を着き、顔を置く。
「こちらをどうぞ。」
店員がデウスに飯を出してきた。
「え?これって、」
「新しく作りました。」
「いや、でも悪いよ。」
「いえいえ、こちらの国の者がお食事の邪魔をしましたので、気にしないでください。」
「いや、でもお金が。」
「残した分が多かったので、お金は一つ分で結構です。」
なんて優しい店員なんだろうか。
「すみません。こんな何処の馬の骨とも分からない男に。」
「大丈夫ですよ。」
店員の出した飯をデウスは美味しそうに頬ばった。幸せそうに。
デアはそれを見て微笑む。
なんて微笑ましい光景だろうか。
すると、他の席に座る人がデウスに話しかけた。いや、褒め讃えたいと言うべきだろう。
「あんた凄いな。」
デウスは飯をたった二分で全て平らげた。
近くにあるティッシュをとり、口を拭いてから言った。
「何がだ?」
「何がって、あの男を倒したんだろ?」
「倒したってより膝をつかせたの方がいいかな。」
「同じだ。」
「あいつはそんなに強いのか?」
「強いも何も世には珍しい二つ名持ちだぜ?」
二つ名とは、優れた冒険者や実力のある人に付けられる限りの名。
『あの男が二つ名?』
デウスは疑問だった。あれ程弱い男が何故二つ名を持っているのか。
「奴の名前はビングル・ビルグルル。二つ名は二丁拳銃。ほとんどそのまんまだな。」
一人の男が奴のことを話した。
『ルの多い名前だな。』
デウスはそう思う。
「あんたも二つ名あるんだろ?」
「いや、俺はない。」
「ないのに二丁拳銃に勝ったのか!?」
「ま、まぁ。」
勢いの強い男だ。
デアは二つ名を持っていないのか。そう疑問に思ったデウスはデアに聞くことにした。
「デアは二つ名あったっけ?」
「あったじゃない。」
「もしかして、あれ?」
デウスの頭には一つの可能性だけ引き出していた。
「不敗の少女。」
「やっぱりか。」
病院でデアが言っていた。
不敗の少女はデウスによって破られたと。
未だにそれがまだ二つ名。
二つ名は死ぬまで定着する名前だ。
「ねぇ、デウスには本当に二つ名無いの?」
「あぁ。無いんだよ。」
「なら私が付けてあげるね。」
デアが途端にそう言い始めた。
二つ名は自分以外なら誰からでも付けてもらえる名だ。
「へぇ。嬢ちゃんが付けんのかい。」
「さぞいい二つ名が貰えるんだろうな。」
発言するのはほとんど男だ。女はデウス達を見るだけ。
「そうね。じゃあ、″憤怒の英雄″。」
どうしてこの二つ名になったのか、デウスは想像がついた。
デウスはフローレと契約している。それにデウスは怒りに任せて体を動かすタイプの人間だ。
英雄はデアからのデウスだ。
デアからすればデウスは自分にとっての英雄だ。
「いい二つ名を貰ったな。少年。」
『憤怒の英雄か。』
「どう、かな。」
「嬉しいよ。ありがとう。」
デウスは心から感謝をした。
「それは良かった。」
デアも嬉しそうだ。
「そろそろ店出るか。」
「そうね。」
デウスは店員に代金を払って店を出た。
空は少し紅を帯びてきた。
「もう部屋に戻った方がいいな。」
「そうね。戻りましょ。」
デウスとデアは部屋に戻った。
店に入り、二階に上がるデウスとデア。
部屋の前に立ち、鍵を開けた。
そのまま部屋に入り、二人同時にベッドにIN。
なんだか面白い光景だ。
二人はそのまま立ち上がることもせずにベッドの上に寝転がった。
フローレとイリビードはまだ戻ってこない。
かなりエンジョイしているのだろうか。
デウスとデアは見合い、同時に笑った。
「デア。二つ名くれてありがとな。」
「いいよ。それぐらい。君が私にしてくれたことに比べれば。」
和む会話をしてそのまま上を向く。
「ねぇ、デウス。」
「なんだ?」
「私ね。デウスのこと好きだよ。」
「前からのことだろ。それに、俺も出しな。」
デウスは照れ臭そうに顔を手で覆った。
『可愛い。』
デアは照れるデウスを親のような目線で見た。
恋人さが出てきたというものだ。
この二人はとてもいいコンビになりそうだ。




