九十話
昨日投稿できず、すみません。
「邪魔だ。吹き飛べ!」
今回の依頼は森に潜む進化した魔物、又は進化しそうな魔物の調査、駆除が目的だ。
元は私達が受けた依頼で起きたことなのだが。
今日の依頼で集められた者達は、この町では強い部類に入る者達が参加している。
私、アルフィーもまた今日の依頼で集められた者の一人だ。
この依頼には三パーティー参加している。
一つ目はエンテがリーダーを務めるパーティー。
彼は騎士が着るような甲冑を着て、戦っている。
森を歩く際は邪魔になるんじゃないのか、と疑問に思う。
エンテは真面目な性格をしていて、戦うたびに怪我や仲間達の状況を聞いたりする。
それは当たり前のことだ。
しかし、もう一つのパーティーが問題ありすぎた。
バンデットと呼ばれる軽戦士がリーダーを務めるパーティーだ。
あれのパーティーは少し異質で、一つ目は仲間が全て女性だということ。
自分以外が女性のパーティーを作るのは、男のロマンだ、と昔酒場で言っていたのを聞いたことがあるため、理解はできる。
しかし、だ。
全員が全員、目が死んでいるのだ。
明らかにおかしい。
そして、仲間が怪我しても気にしないし、自分が失敗したにも関わらず仲間のせいにして強く当たる。
完全に仲間だと思っていない。
道具としか思っていないように感じる。
そのバンデットが、事ある毎に話しかけてくる。
性的な目をして。
不満が一方的に溜まっている時だ。
オーガが現れた。
他の魔物と戦っている最中だったため、少しだけ対処が遅れた。
バンデットのパーティーがオーガと戦い、私とエンテのパーティーが他の魔物を駆逐していると片隅でオーガ逃げていくのが見えた。
逃がした張本人、バンデットを見ると仲間に当たっている。
「何をしてる! 早く行くぞ!」
身体強化魔法に加えて、風の精霊によりアルフィーはまるで風のように移動し、逃げるオーガの後を追った。
オーガは一直線に逃げ、邪魔な木は全てを壊しているため追いかけるのは簡単だった。
だが、
「GAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!」
オーガの雄叫びが聞こえた。
その雄叫びは風を震わせ、離れているがここまで聞こえた。
そして、雄叫びをする事は誰か襲われているという事だ。
急がないと。犠牲者を増やす訳にはいかない。
アルフィーがより速く移動すると、オーガが見えた。
「これは……」
辿り着くと、そこには両膝を地面について倒れている頭のないオーガがいた。
「誰がやったんだ?」
斬り飛ばされた頭は近くにあり、右手には穴が開いて血が地面に流れている。
オーガの死体を眺めていると、遅れてエンテのパーティーとバンデットのパーティーがやって来た。
「どうしたんだ、これは」
「どうなってやがる!」
二人は死体となったオーガを見て、驚いていた。
「アルフィーがやったのか?」
「いや、私は着た時は既に」
首を横に振って否定した。
「中止だ。中止」
よく知っている声が上から聞こえた。
顔を上げるよりも前に、それは降りてきた。
降りてきたのは武刀だった。
その次に、武刀の隣にジブが降りた。
「何をしてるんだ?」
「てっきり魔物かと思って、木の上で待機してた」
「オーガを倒したのは君たちか?」
武刀と会話をしていると、エンテが入って来た。
「そうだ」
「ふむ」
エンテが武刀とジブの武器を、交互に見る。
「彼女が倒したのか」
「まあ、そうだね」
武刀はなにやら意味深に答えた。
一緒にいることが多いせいか、それが少し気になった。
思っていると、視界の片隅で動いているのを感じた。
それはバンデットであった。
バンデットは獲物を見るような目でジブの前まで歩いた。
「なに?」
「お前がオーガを倒したのか?」
「聞いてみた感じ、一応そうなってるみたい」
「冒険者のランクは?」
「ランク?」
ジブは首を傾げた。
「ランクというのは、冒険者の強さのことだ。彼女はまだなったばかりだが」
分からないジブにアルフィーが教えた。
それを聞いたバンデットは、悪い笑みを浮かべた。
「そうかそうか。なあ、俺のパーティーに入らないか? こんな弱いガキはほっといてよ」
彼は冒険者になったばかりだが、実力のあるジブを勧誘した。
勧誘を受けたジブは理解できず、まだ何も答えていない。
そんなことを知らず、バンデットは受ける気がないと思い勧誘を続ける。
「俺の冒険者のランクはCランクだ。この町では高い方だ。どうだ? パーティーに入らないか?」
二人の会話を聞きながら、武刀はアルフィーに質問した。
「Cランクはどれくらい強いの?」
「う~ん、そうだな。強い方ではあるぞ。ただ。Cランクより上にいくには大きな壁がある。それを乗り越えることで一流になる」
「なるほど。ということは、このおっさんは二流、ということか」
武刀の言葉を聞き、バンデットは喋るのをやめて眉間に皺が寄った。
「今、なんつった?」
さっきとは打って変わり、ドスの効いた低い声だった。
臆病な者であれば、怯えて声が震えるぐらいの圧力があった。
しかし、武刀は気にせず平然としていた。
「ん? 二流って言ったんだよ。聞こえなかったの? 耳腐ってる?」
目の前で、女が知らん男にナンパされているのだ。
怒らない方がおかしい。
「おいガキ。死にたいのか? お前を殺したっていいんだぞ」
バンデットが武刀にガンを飛ばすと、アルフィーが武刀とバンデットの間に入り、バンデットを正面に見据える。
「やめろ。ただじゃすまないぞ」
アルフィーは武刀の心配をしていない。
今まで一緒にいたからこそ、死ぬことはないと思っている。
心配しているのはバンデットの方である。
だが、当のバンデットはそんなことを知らずアルフィーの後ろにいる武刀だと思っている。
「おめえらそういえば、一緒にいたよな」
バンデットは三人が、冒険者ギルドに入った時の事を思い出した。
思い出したバンデットは、良い事を考えたのか悪い笑みをする。
「なあ、ゲームをしないか?」
「ゲーム?」
「ああ、対戦だよ。俺とお前で戦い、負けたら勝った方の言うことを聞く、どうだ?」
バンデットが提案すると、今まで蚊帳の外にいたエンテが割り込んできた。
「おい、それは!」
「いいだろ。簡単なゲームだよ」
憤るエンテに、バンデットが優しく宥めている。
それを見ると、武刀の心は少し苛立ちを覚えた。
既に勝った気分か。
それに、あんな目でアルフィーやジブを見られるのは気分が悪い。
武刀は性的な目でアルフィーやジブを見られていることに、我慢がならなかった。
「いいよ。やってやる」
「おい!」
武刀が了承すると、アルフィーは振り返って訂正させようとするがもう遅かった。
「そうこなくっちゃ」
バンデットの口が三日月のように開き、唇を舌で舐めまわした。




