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八十八話

なんとなく投稿

「俺が引き起こしたことについては簡単だ。俺が変化の短剣になかった魔術回路を増やしたからだ」


「なら延びたのは?」


「それについては長くなるが、人外状態から人状態に変化したことによる。元々ドラゴンのジブが人になるなんて、明らかの劣化だろ?」


「まあ、そうだね」


 ジブは頭の中で想像し、あっさりと答える。

 

「その劣化の差、と呼べばいいのかな。戦力がかなり落ちるから何かで補おうとする。今のジブで言えば、身体能力や火を噴く代わりに魔術だったり鋭い爪や牙の代わりに斧、硬い鱗の代わりに鎧と、ね」


 この機能は武刀が付け加えた魔術の一つでもある。

 人外状態から人化状態になったとしても、元々有していた機能に変わりない。

 失う機能もあるが、それは魔術として変わる。

 ただ人の形になっただけだ。

 

 しかし、人状態は違う。

 人状態は本当に人に変わる。生まれ変わる。

 人いなれば、今まで有していた機能を失うことになる。

 

 それを防ぐため武刀は失うはずの機能をなんらかの形で、武器や防具、魔術と変化する。

 

「人化状態は武器も防具もないが身体に魔術回路が刻まれている。そこで人化状態から人状態に変われば、失う機能を補おうと武器や防具が現れる。そのせいで、魔術が延びていることになる。オーケー?」


「えっと」


 ジブは眉間を両手の指で揉みながら、小難しい顔をしていた。

 

「人化状態での鱗とかが鎧になるから、身体にあった魔術回路が鎧に延びたということ?」


「そうそう」


 武刀の話を、ジブが分かりやすく言った。

 

「魔術が使えない状態はいつまで続くの?」


「そうだな。この状態は魔術回路が完成するまで、といった所だな」


「完成? そういえば、魔術回路は延びてるて言ってたね。完成するとどうなっちゃうの?」


「そう、だな。人状態と人化状態と間みたいな感じになる。まあ、人前ではあんまり使えない技だけど」


 人状態と人化状態の間と言われ、ジブは頭の中で想像するがもやもやとしたものではっきりと頭の中で思い浮かぶことが出来なかった。

 

「本当は、こんなのなかったんだ」


 何も喋らないジブに、この空間は沈黙が支配していた。

 それはジブが考え事をしていたからだ。

 そんな事露知らず、武刀は静まる空間を嫌がり謝るように喋り出した。

 

「俺が本当の意味で人にする機能を付け加えなければ、こんなことにはならなかった。だけど、反省もしてないし後悔もしていない。だから、魔術が使えないジブには苦労を掛けてしまう」


 魔術が使えない。

 それは武刀がこの世界に来て初めて味わった感覚だ。

 今まで魔術に頼って来たこそ、使えない感覚を知った。

 あの時、魔法を使い続ければ良かったかもしれないが魔術を捨てる気にはなれなかった。

 

 そんな武刀だからこそ、今のジブの苦労が分かった。

 

「まあ、構わないよ。特に気にしてないし」


 ジブは気軽に、あっさりと答えた。

 

「あ、あれ?」


 そんな風に答えるジブに、武刀は毒気が抜かれた。

 てっきり、かなり気にしていると思ったからだ。

 

「どうしたの?」


 気にしていると思ってたが本当はそんな事ないと知って武刀は驚き、ジブはその武刀の今の感情が理解できずに尋ねた。

 

「いや、いいんだ。俺の気のせいだから」


 武刀が教えないため、ジブは理由が分からずに首を傾けたが特に気にはしていなかった。

 

「さて、やるぞ!」


 気分を一新するために戦ったが、まさかこんなことになるとは武刀は思わなかった。

 

「うん。気分転換もできたし、薬草を探すの頑張ろう」


 ジブも気合いを入れ、薬草を探す作業を始めようとすると急に険しい顔になる。

 

「どうした?」


「何か、来る」


 明らかに尋常じゃない雰囲気に、武刀は只事ことは分かった。

 

「判別できる?」


「足音は一、大きいな。近づいて来てる」


「そうか。ジブは下がって、今は魔術が使えないんだから」


 今のジブは強化魔術が使えない。

 元はドラゴンといっても、今は人間。

 ただの少し頑丈な人間だ。

 

「いや、戦うよ。ドラゴンになっても戦うよ」


「それは嬉しいが、やれるのか? というか町の近くでやったら問題になるだろ。それは駄目」


 二人が言い合いをしていると、徐々に近付いて来る音が武刀にも聞こえた。


「ジブの言い分は分かった。なら、ジブは俺のサポートを頼む。いいか?」


「了解!」


 近づく音に武刀は長くは相談することが出来ないと判断し、ジブの意見を譲歩する形で参加させることを決めた。

 

 音が徐々に大きくなり、木が破壊されていく音も聞こえる。

 

「来るぞ。構えろ!」


 魔術が使えないジブに変わり、武刀が前に出て強化魔術バージョンⅤ、障壁魔術バージョンⅢを発動する。

 何が来ても耐えられるように、全力全開だ。

 

 ただし、その分魔術回路が焼き切るのが早い。

 武刀としては短期決戦を望んでいる。

 

 音がした方に盾を構えると、木々の隙間から動く赤い物が見え、目の前の木が殴られて頭の上を通り越し、後ろに吹き飛んでいった。

 

「鬼……」


 それを見て武刀は呟く。

 

 身体は全身が赤く、人よりも大きく筋骨隆々、ガタイがいい。

 大きさとしては三メートルぐらい。

 額からは短く赤い二本の角が、天に向かって伸びている。

 

 顔は険しく、全てを憎んでいるようにこちらを睨んでいた。

 腰に動物の毛皮のような物を腰に巻いていた。

 

「オーガ!」


 ジブも武刀と同じように、目の前に現れた魔物を見て叫んだ。

 

「オーガ?」


 武刀はジブの言葉を聞き、もう一度目の前の魔物を注視する。

 確かに見比べてみれば、違いがある。

 

 鬼は人っぽさがあり友好を築くことができる。

 だが目の前の魔物、オーガはどこか獣っぽさがある。

 

 オーガは目の前に二人の人間を見て吠えた。

 

「GAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!」


私的にはある程度まとまって一話、としていたんですがなにせ量が多い。

ということで、少し分割して投稿の回数を増やすことにしました。

ただ、その投稿は決まった日にちに投稿するわけでなく、書けたら投稿、ということになりますのであしからず。

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