四十八話
翌日、武刀達は朝ご飯を一緒に食べた。
朝食はパンが一つとスープだ。
成長期の男子にとっては、この量はさすがに辛い。
もうちょっと欲しい。
「どうしたんだ? そんな不満そうな顔をして」
僅かな表情の変化を読み取ったアルフィーが質問する。
「量が少し、な」
「それはしょうがない。これでもあるほうだぞ」
「そうなんだ……」
納得はしていないが無理にでも納得し、朝食を食べる。
食べていると、少し味が薄いように思える。
それがまた、不満の原因でもある。
ああ、早くお家に帰りたい。
パンを噛みながら思う。
パンが固い。モソモソしてる。
今日の予定は村から離れて森辺りまで行き、魔術の講義。
正確にには、魔術回路の講義だ。
極力人に見られたくないため、森まで歩く。
それなら宿屋でもいいのだが、あそこにずっといると頭がおかしくなりそうだ。
宿から出ようとするとき、宿屋の主人がアルフィーと会話をしているのが見えた。
離れているせいで会話の中身は分からないが、少し時間が掛かるから気になってしまう。
めんどくさそうなことでなければいいが。
この村は森まで行くのに、時間が掛かった。
その分、人がいないからいいのだが。
ただ、それは危険地帯ということを表す。
魔物がでてくるため、一応、完全武装している。
また、魔物がでてくることについては問題ない。
魔物が出たって、この槍があればなんとかなる。
その槍も、昨日は魔術回路が見えていたが、今では浸透し普通の槍のように見える。
しかし、念のため、だ。
「魔物が近くにいるか分かる?」
「分かんない」
ストリアが答える。
「近くにはいないと思うな」
ジブが答えた。
「どうして?」
「僕は一応、こんななりだけどドラゴンだからね。魔物達もそれが分かって近寄って来るとは思えないな」
自分の胸を叩き、ジブは言う。
今の姿は人であり、部屋にいた時の人化状態、ドラゴンが人の形をした姿ではない。
あの姿はジブにとっては一番楽なのだが、人にとっては化け物にしか見えない。
そのため、人に見られる可能性を考慮してジブは我慢をし、人になっている。
「本当にいないと思うぞ。周りに魔物がいないと言っている」
次にアルフィーが答える。
その言い方に武刀は少し引っかかりを感じた。
言ってる、とはどういうこと? 頭がおかしくなった、というわけはないだろうな。
何かしらの理由があるんだろうな。
武刀はアルフィーに追及はしなかった。
「魔物がいないならここでいいかな。では魔術回路の講義を始めたいと思います。三人は座って」
手で座るように合図をし、促された三人は地に腰を下した。
各々持っている武器を地面に置く。
「昨日は魔術を簡単に話した。今回はその魔術を発動するための魔術回路。それは昨日見せたと思う」
三人は各々頷く。
アルフィーは強く。
ジブは何度も。
ストリアは首を傾げ、ゆっくりと頷く。
ストリア。君は本当に聞いていたのかい? 昨日のことだよ。
首を傾げたストリアに、少し頭を抱えそうになる。
「魔術回路を教える前に。アルフィーは魔術を使えないけどここにいるの? 時間の無駄だと思うけど」
時間は有限。それは武刀が一番知っている。
だからこそ、魔術を使えないアルフィーがいなくてもいい、と思っている。
「気にしなくても大丈夫。色々と勉強になるし」
それはアルフィーの本音だ。
魔法が衰えて魔術が発展した、現代世界の魔法をアルフィーは知りたかった。
ただ、別の理由もある。
独りぼっちは寂しいものだ。
「そう、なら始めるとしようか。ではジブ。鎧を脱いで裸になろうか」




