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百二話

なんとか執筆して、更新が前回と同じぐらいになりそうです。(週に2~3日に一回)

 アルフィーは魔物の大群に四体の精霊を呼び出し、全力の魔法は放ち撃退した。

 残ったものは、巨大な氷の障害物だけとなった。

 

 大群を撃滅したことで町の人間は浮かれていたが、地平線にいるそれを見た瞬間、城壁の上にいる人間、エルフは表情を一変させ、ありえない、この世の終わり、という顔をした。

 

 異変を感じた者が徐々に城壁の上に上がり、同じようにそれを見て固まり、一早く我に返ったアルフィーが焦るように大声で知らせた。

 

「魔物が来る!! 主力だ!! 全員ッ!! 準備!!」」


 切羽詰まったアルフィーの声を聞き、さっきまで浮かれていたがすぐに落ち着き直した。

 

 くそ! あの大群は囮だったか。こちらの手を読まれた。

 思えば、あの大群の方には強い魔物はいなかったな。

 

 アルフィーも表面上は落ち着いているが、内心は焦りながら必死に考えている。

 

 オーガが十以上。赤いリザードマンは上位種か、二十。空にも鳥系の魔物がどれだけいる。

 

 こちらに向かってゆっくりと来る魔物達を観察しながら、アルフィーは勝つ算段は建てる。

 そのためにもまずは戦力を知ることが大事だが、一体だけ知らない魔物がいた。

 

 なんだ、あの先頭を歩いている魔物は、初めて見る。

 

 それは黒いリザードマンに見えた。

 リザードマンはドラゴンになれなかったトカゲ、と言われるぐらいにトカゲっぽさがある。

 

 しかし、黒いリザードマンにはトカゲっぽさがなかった。

 どちらかといえば、人のような感じが残っていた。

 

 なんだ、あれは。けど、何か知っているような気がする。

 

 アルフィーが必死に思い出そうとしていると、黒いリザードマンが動いた。

 右手を上げて、下した。

 それは何かの合図のようで、右手が下りた瞬間、魔物達が黒いリザードマンを追い抜いて一斉に動き出した。

 

 城壁に向かって来るが、その前に障害物となるものがあった。

 それは、アルフィーは全魔力を込めて生み出した氷だ。

 

 氷は城壁ぐらいまで高さがあり、乗り越えようにも高すぎて乗り越えることができず、壊しながら進んでいた。

 

「水と氷の魔法が使える者は、あの障害物を増やして。あの障害物がなければこの町が攻撃される」


 魔物達が氷の障害物を壊しているのに気づいたアルフィーが、城壁のデコボコとした壁の窪みに身体を出し、城下にいる者達に叫んだ。

 

 魔法が使える者達は城壁の上に登り、水と氷の魔法でアルフィーが生み出した氷の障害物を割り増ししていた。


 私の魔力が残っていれば。

 

 先の戦いで魔力を全て失ったアルフィーは、ただ見る事しかできない自分が悔しくてならなかった。

 このままでは負けてしまう、という思いがあったからだ。

 

 

 

 

 

 魔物の大群が襲ってくる前、北門では町に残っていた人を馬車の中に収容し、逃げる準備をしていた。

 その中には、武刀との決闘で負けたバンデットの姿があった。

 

「バンデット! 逃げるのか、貴様! 冒険者の矜持はどうした!」


 町の住人と一緒に、まるで自分は戦えない、という雰囲気を醸し出しながら歩くバンデットを見つけたエンテは、迫りながら問いただした。

 

「矜持? そんなもの知るか! それに、俺は武器がないんだぞ。戦う武器ないのに戦えっていうのかよ。無駄死にしろってか?」


 バンデットは武刀との決闘において負け、武器だけでなく金や防具すら奪われた。

 そのため、バンデットは買うこともできず丸裸なため、戦うことを選ばなかった。

 

「まあ、安心しな。王都のほうに行ったら、すぐに戻って来てやるからよ」


 言い訳をしても尚、エンテは不満顔だったため、バンデットはさらなる言い訳をした。

 

 まあ、助けに来る気なんてさらさらないんだがな。

 

 心の中で、さっきの言葉に付けたした。

 

 バンデットにとって、自分の命が優先。

 魔物が大群が襲って来るのに、わざわざ戦う気になれなかった。

 冒険者は町を守る義務があるが、依頼を理由にこの町から離れようとする者もいた。

 

 そしてバンデットも冒険者だったが、武器や防具がないため町を守る義務がなく、パーティーの仲間だって冒険者の男女のペアを殺して仲間にしたようなものだ。

 

 このままでは罪人になる所だったが、この状況はまるでバンデットのために世界が回っているように思えた。

 

 バンデットは決闘で戦い、勝った武刀にお礼を言いたいぐらいだ。

 彼のお蔭で、戦わずに済むのだから。

 

 さっきまで不満顔だったエンテだったが、戻ってくる、と聞いて納得したような顔を浮かべた。


「分かった、待っているからな。俺たちの町を」


「ああ」


 エンテはバンデットに背を向けて去り、その背中をバンデットはジッと見ていた。

 エンテとバンデットは性格が真逆だが、一緒にいることが多かった。

 その理由は同期だからだ。

 

 冒険者となり、気づいたら横にエンテが並んでいた。

 一緒にいる時間が多かったからこそ、エンテからすればこの町は、思い出残るこの町を守りたいんだろう。

 しかし、

 

 勝手にしんどけ、馬鹿が。

 

 エンテのことを邪魔者としか思わず、町に関しては思い出が何一つないバンデットからすれば、余計なお世話であり、バンデットは王都行きの馬車に乗った。

次回は木曜日を予定しています。

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