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百話

これがラストです。

 武刀は外を出て、冒険者ギルドに寄ることなくそのまま南門に向かった。

 向かう中、町の住民はまだ魔物の大群が来ることを知らないらしく、いつも通りの平穏の姿が見えた。

 

 もしこれが知っていれば、町は地獄絵図となるはずだ。

 ここから逃げようとする町の人で。

 門に辿り着き、門番にカードを見せた。

 

「用件は?」


「偵察」


「そうか。頼んだ」


 既に魔物が押し寄せてくるのを知っているらしく、期待を込めた声だった。

 

「ああ、分かった」


 武刀は答え、門から出た。

 ずっと開いている門から、入ろうとする者達は、どちらかというと商人が多い。

 情報が命である商人だ。

 既に知っているのかもしれない。

 

 さて、行くか。

 

 まだ人前である以上、強化魔術バージョンⅤは使えずバージョンⅠを使い、少し離れたを目指して走った。

 

 普通に走れば疲れるが、強化魔術を使うとあまり疲労が感じなかった。

 

 ここぐらいでいいか。

 

 後ろを向いて町からだいぶ離れた事を確認した後、強化魔術バージョンⅠをⅤに上げる。

 

 まずは全力!!

 

 スタンディングスタートのように構え、武刀は思いっきり地面を蹴って走った。

 蹴った直後、力が強すぎて地面にヒビが入った。

 

 走るのが速すぎるせいか、周りが高速道路を走っているような景色に見えた。

 途中、馬車が町に向かっているのが見えたが速すぎてすぐに見えなくなった。

 

 だいぶ進んでるが、魔物らしいものが見えないな。

 なら、次。

 

 武刀は一度ジャンプし、両足揃えて地面に着地して真上に跳んだ。

 地面が両足の中心にひびが入り、蹴った場所は陥没してしまった。

 

 強化魔術バージョンⅤによるジャンプは、木の高さを超えて小山ほどの高さぐらい飛び上がる。

 

 真上に跳び上がったことで、今までは見えない景色を見ることができた。

 

「魔物は……」


 森に魔物がいるかを確認するが、生い茂っていて見えはしない。

 街道に目を向けても、魔物の魔の字もない。

 

 高く跳んでも駄目か。

 街道にいないとすると、森の中で身を潜めているのが妥当か。

 それとも、ただ隠れて獲物を狙っているか。

 

 まあいい。

 さらに進んで一度着地するか。

 

 グリーブに刻んだ強化魔術を起動させる。

 足の強化魔術は風。

 瞬風と呼ばれる魔術である。

 名前の通り風を起こす魔術であり、出力を自由にすることができる。

 

 瞬風を発動して体勢を変え、水泳で壁を蹴るように空を蹴って見せた。

 すると、蹴った場所に壁があるかのように、武刀は前方やや下に向かって頭から猛スピードで突っ込んだ。

 

 地面に向かって頭から猛スピードで突っ込む中、武刀の心の中に焦りが生まれる。

 

 やばい。スピード出し過ぎた。

 

 また瞬風を発動させ、身体の向きを反対に変えて足から着地するようにする。

 その時には既に地面間近で、瞬風で発動した時には地面とぶつかった。

 

 まるで地面を削るように武刀は前に移動する。

 削る振動が足から身体に伝わり、より不安にさせる。

 瞬風で生まれる風をブレーキにし、減速させるが全然速度は落ちるようには見えない。

 着地して五十メートルほどぐらいして、武刀は止まった。

 

 武刀は止まったその場所で尻を着けず座り、ため息を吐く。

 

「ああ゛~疲れた~」


 強化魔術があるといって、あの速度、あの高さから落ちれば無傷では済まない。

 武刀の顔から冷や汗が流れる。

 

「大丈夫?」


 冷や汗を流していることに気づいたストリアは、武刀は心配する。

 

「ああ、大丈夫だ。もう問題ない」


 ストリアに見られている以上、もう心配されることはない様に武刀は疲れて緩んでいた顔を引き締める。

 

「それじゃあ、魔物を探すとしよう」


 街道から道を離れ、右に進み森へと武刀は進んでいく。

 残された物は武刀が引き起こした、五十メートルほど削った街道であり、そこを通った者達は街道の状態を見て何か恐ろしいのがいるのではないかと、恐怖したという。

 

 

 

 

 

 森は足場が悪く歩きにくいが、強化魔術をバージョンⅤからバージョンⅠに下げた武刀には、特に気にするほどではなかった。

 道は明るく徐々に高くなっていき、武刀は息切れ一つせず登る。

 

 登り終えると、道は急に薄暗く下っていく。

 武刀がいるのは、その境目。

 後ろが明るく、目の前が薄暗くなっている。

 

 右の木を右手で押して身体を支え、目を凝らす。

 目の前は薄暗く、隠れるのには丁度良い場所だった。

 

 しかし、薄暗くても何かが蠢ているのが見えた。

 

 あれは、なんだ?

 

 より目を凝らす。

 すると、一瞬だけだが日の光が森の奥まで照らす。

 たった一瞬。その一瞬だけで蠢くものを見た。

 

 魔物だ。魔物の群れだった。

 それも、両手両足では明らかに足りない。

 

「やばいな。これは非常にやばい」


 一目見て、百は超えている。

 ここにいるのが百なら、どれだけの魔物共が町に向かっている。

 

 町を守るためには、数を減らす必要が、殲滅するしかない。

 

 これは徹夜だな。

 

「ストリア。悪いが、付き合ってくれ」


「分かった。一緒に頑張ろう」


 武刀は両腕を横にし、両肘を曲げる。

 右の手は氷、左の手は炎に包まれる。

 さらに、強化魔術をバージョンⅡにして軽く蹴って跳び、降りた。

 

 それから四日後、魔物が町へ押し寄せる。

 そして、その四日の間に武刀が帰って来ることはなかった。

魔術解説のコーナー

魔術:瞬風 効果:風を圧縮させて足場にしたり、風を生み出して放つこともできる。

 右手、左手の魔術については後の話で




祝百話。ここまで投稿できたことなかったので嬉しいです。なんとか完結させたいので応援よろしくお願いします。


次の投稿は明日、土曜です。

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