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真実への実り♀2

 23.真実への実り♀2



 あんまんを買いに商店街まで橋を渡って行く、この辺りでは数少ないあんまんや肉まんなどを売っている店だ。作ったものを温めて保存してあるので、いつでも熱々のあんまんを食べられるようになっている。

『どうするあんまんだけで良い?』

『へ?肉まんも買ってくれちゃうの?』

『お望みとあらば』

『じゃあ、遠慮無く貰っちゃおうかな』

 お店のおばさんに話しかける。『すいません、あんまん一つと肉まんを二つください』

『おや、彼女と一緒に食べるのかい?それならお勧めがあるよ?』

『へえ、どんなのですか?』

 スルーしたの?肯定したの?どっちなの?

『ハートの形をしたラブまん』

『あー、大丈夫です、普通ので』

『じゃあこれは?マムシのエキスが入った、やる気まんまん』

『あー、大丈夫です、普通ので』

 スルーだったんだと確信しました!

『そうかい、残念だね、また今度来た時にはよろしくね!』

『はい、また今度ですね、ありがとうございます』


 店を出る。

『変なものが売ってるお店だったね?』

『あぁ、そうだったね。きっと普通のが一番おいしいよ』

『うん、面白いおばさんだったね?』

『そうだね、あんな商品思いつくなんて面白いね』

『恋人同士に見えたの・・・かな?』

『・・・何言ってんだ、早く食べて、本探そう』

『そ、そうだよね、変な事言っちゃった、ごめんね』

『謝る事はないけど・・・困る』

 そうだよね、矛盾してるやろうとしている事と、思ってることが両方は叶えられないのに、バカだな私。

『あー、でもやっぱり、ラル君に本探すの手伝ってもらうのは悪いなー、一人で探すよ』

『でも、そんな俺も手伝う・・・』

『ううん、良いの私一人の力で戻ってみせるから!』

『邪魔は・・・しないでね?』何言ってるの?わざわざ言うなんてして欲しいみたいじゃん。

『するわけ・・・無いだろ』

『そうだよね、じゃあまた明日ね』

『ああ、また明日』



 一人で図書館へ向かう。

 ほとんど一緒に居て、一人で居る事が少なかったから不思議な感じだ。あの時から一緒に居てくれていたんだね、一人になるまで気が付かなかったよ。

 太陽は夕日に変わっていく地平線の彼方に消えていく。夜になると世界が変わる暗闇だ。どこかに明かりが無くては自分がどこに居るのかも分からない。誰かが居なければ自分が存在しているのか分からない。

 夜になる前に帰らないと。

 図書館では見つけられなかった、といってもそんなにたくさん探せたわけではないのでまた明日も行って探さなければ有るか無いかも分からない。

『とにかく今日はもう帰ろう・・・』一人でこぼす言葉を拾ってくれる人も居ない。

『お帰りですか?探していた本は見つかりました?』

 あ、拾われた。

 拾ってくれたのは、ここの図書館で働いている女性で、年は見た目で20代後半に見える。髪が長くて肌が真っ白で清楚な大人の女性って感じ。黒い髪と白い肌と白いワンピースのコントラストが綺麗で見惚れてしまった。

『見つからなかったです。今日はもう遅いので一度帰って明日また来ます』

『そうですか、最近よく来てくれますよね?』

『そ、そうですね、ここは大好きな場所です』

『ありがとう、嬉しいわ。珍しく何も借りないなぁ、と思っていたら独り言が聞こえてしまったのでつい、声を掛けてしまったわ』

『ところで、なんていう本を探しているのかしら?』

『えっと、あの、境界ドロップという本です』

『ああ、聞いたことが有るわね、この図書館にも有った様な気がするんだけど、まぁ良いわ、明日来るなら私も探すの手伝いますよ、それも仕事の一つだからね』

『良いんですかぁ!ありがとうございます!よろしくお願いします』

『うん、だから今日はもう帰ったほうが良いわ遅くならないうちに、ね?』

『はい、あ、ではまた明日!』手を振って分かれる。

 寒くて暗かったけど少し暖かかくなった気がした。



 翌日もラルは迎えに来てくれた、二人で登校する。いつものように接してくれるラルに感謝する。

 昨日の事怒ってないのかな?気になるけれどもなかなか聞けない。

『何?どうしたのこっち見て』

『ううん、なんでもないよーははは』


 昼休み。いつも女友達と食べているので別々で食事にしている。スパッと食べ終わって、いつもラル君が友達とご飯を食べている所を覗きに行く。

『楽しそうだなーいつもと変わらないじゃん』怒ってないんだろうか。


 放課後、一緒に帰ることが多いけれど、今日は図書館に行くから、一人で帰るって事を伝えていた。なので、ラル君は一人で教室を出て家に帰宅しようとしてる。

 何となく後をつけてしまう。

 しばらくしてラル君が立ち止まった。

『イツキ、図書館まで一緒に行くか?』

『あ、ば、ばれてた?』

『当たり前だろう、休み時間だってこっそり覗いてたでしょ?何か言いたい事でもあるの?』

『え、別に言いたい事って言うか・・・その、なんか、昨日はごめん』頭を下げる。

『ごめんって何が?』

『何がって、その、なんか色々だよ』

『色々・・・か。うん、大丈夫。でも気にしてないって言ったら嘘になるかもしれないけれど、でも怒って無いからだから大丈夫なんだよ』

『それだけ、言いたくって。ありがとう、聞いてくれて』

『うん分かったから、テキトーで良いんだよ。それより早く本を探しに行った方が良いんじゃにかな?』

『そうだね、うん、行って来ます』



 図書館の近くまで来ていたので、すぐに着いた。扉を開けて中に入る。きょろきょろと周りを見渡したけれども、昨日会った女の人は居なった。とりあえず、一人で探そうと思い、調べていく。

 図書館は円形の内部構造をしていて中は広く一階から二階までのある。扉を開けて中に入るとまず真ん中に100人位は座れるようにテーブルと椅子が置いてあるスペースがあり、それを囲むように本棚が放射状に並べてある。

 階段は三つあり、真ん中が吹き抜けになっているので真ん中のスペースを回る形で上がっていく構造になっている、どの二階も放射状になって本棚が置いてある形だ。本をその場で読む場合は一階のスペースで読んで、一度持って帰りたいときは入り口の横にある受付で名前と年齢、住所と所属を書くことになっている。

 そういえば、あの人に前も教えてもらって無かったな。という事を思い出し少し後悔する。この図書館は広いので人とはぐれてしまった時もなかなか見つけられないのだった。

 とにかく、探しているうちに会うかもしれないと思い本を探し始める事にした。

 昨日は、ファンタジー小説のカテゴリーで探していたので、ノンフィクションのカテゴリーで今日は探してみる事にする。


 ノンフィクションのカテゴリーにある本を探し終えても境界ドロップは見つからなかった。そろそろ高いところを見たり低いところを見たりと背伸びしたりしゃがんだりした事で疲れが見えてきた。一度椅子に座って休もうと思い、一階の本を読んだりするスペースで休憩しつつ、次に探す場所を考える事にすることにした。

『こんにちわ』考え事をしていたので、気づかない。

 肩を叩かれて振り向くと、昨日ここで会った、ここで働いているお姉さんに会った。


『こんにちわ、まだ見つかってないみたいね?とりあえず紅茶淹れたから一緒に飲みましょう?』

 今日のお姉さんは、頭の両側をそれぞれ捻りながら束ねて後ろに結んでロングヘアーにかぶせた髪型で、服装は長袖の白いブラウスに薄めなピンクの毛糸でネックの広いカーディガンと紺色のスカートを履いていた。昨日よりもカワイイ印象でちょっとドキドキしてしまう。

『ここ、こんにちわ、ありがとうございます』

『遅くなってごめんなさい、返却された本を元の場所に戻していたの』

『い、いえ、お仕事邪魔になるんだったらだったら大丈夫です・・・よ?』

『気にしないで、来館者の本を探すのも私たちの仕事ですから』

『ありがとうございます。それに紅茶もおいしいです』

『これは私個人からのサービスね?いつも来てくれているお礼よ。そういえば境界ドロップって本を探すのだったわね、なんでその本を読みたいの?』

 なんで?なんでだろう?自分の街に帰る手がかりがあるかもしれないから・・・そんな事言われて分かるかな?

『言えないなら別に良いわよ?』考えていると先に言われてしまった。

『言えない訳じゃないんです、ただ説明するのが難しいんです』

『そっか、何か複雑な事情があるのね?そんな大切な本なら早く見つけないとね?』隣で優しくこちらに微笑んでくれる。

『私はチユキ、あなたは?』

『あ、イツキって言います、よろしくお願いします』

『ふふふ、なんか、名前似ているわね。よろしく、イツキ』


 それからしばらく二人で探したけれども、中々見つけられなった。

『昨日ここ数日の貸し出し記録を見たけれどもその本の名前は載ってなかったんだけどなー』置いてある場所が載っている記録を見て、そこを探したけれども見つけられなかった。

『誰かが他の場所に間違えて戻してしまったとかなんですかね?』

『そうね、その可能性もあるし、誰かが持って行っちゃったとかもありえるわね』

『そんな!別にお金取ってるわけじゃあないのに何でそういうことをする人が居るんですか?信じられませんよ』

『うーん、まぁでもいろいろな事があるからね、悪いことではあるんだけれど、理由を聞けばちゃんと納得できる事もあるから。自分の考えだけが正しいとか思うってことは相手の事を蔑ろにしているって事よ?』

『そういうものですか?』

『どうだろうね?』

『どうだろうって・・・』

『無責任な事をって思った?でも私は自分の事をそんなに信じてないのよ』

 寂しそうな顔を見ると何か申し訳ない気持ちになってきた。『なんか、すいません』

『何でイツキちゃんが謝るのよ?悪いのは私なんだから、自分で勝手に落ち込んじゃって、でも、もう大丈夫よ。次の場所探してみましょう』

 しかし、見つける事が出来ずにまたしても夜になってしまった。

『ふう、今日はこの辺にしておきましょうか?』

『うー、何で無いのー!』

『そうね、誰かが間違えて本棚に戻してしまったとなると、見つけるのは難しいかもしれないわね、明日も私探してるからまた来てくれれば、見つかった時に渡せると思う』

『・・・すいません』

『こちらこそごめんなさい、しっかり管理していればこんな事にはなってないから。他の職員にも聞いてみるわ』

『はい、また明日です』



 次の日も学校が終わってから図書館へ行った。もちろん寄り道なんかせずに。

 図書館に入ってすぐの受付にチユキさんが居たので声を掛けた。

『こんにちわチユキさん、今日も探させてもらいますね』

『あっ!イツキちゃん、こんにちわ!見つかったわよ』

『本当ですか?』

『ちょっとこっち来てここだと話せない』耳元で囁かれて少しくすぐったかった。

 後をついて行って、人が少ないところまで行ったら話しを始めてくれた。

『正確には見つかったわけじゃあないんだけれども、特別会員の方が長期貸し出しを希望していて、それが無期限貸し出しという形で通ってたの』

『そんなのがあるんですか?でもそういうのは、秘密にしないといけないんじゃあ・・・』

『うん、そうなんだけど、なんか事情がありそうだったし、私はイツキちゃんの力になりたいと思っちゃったから』

『・・・ありがとうございます。今度ちゃんと話しますね』

『うん、ありがとう。それで、借りた人なんだけれど、それは・・・この街の高等学校の教頭先生名前はカノンさん』

『教頭先生!?そんな名前だったの!』

『ビックリするところが違うわー!』

『か、可愛過ぎる』

『素敵な名前よねー、やっぱりイツキちゃんの学校の先生だよね?』

『うん、すごい先生です』

『そうなんだ、借りられたのが、確か一ヶ月ちょっと前くらいだったみたいでいたよ』

『私がこっちに来てすぐ位・・・かな?』

『ん?イツキちゃんは引っ越してきたの?』

『あ、はい、実はそうなんですー、あはは』あぶない、独り言のつもりが声に出ちゃってた。

『珍しいわね?』

『確かにそうですね、でもこっちの街もとても良い人達ばかりで大好きになりました』

『嬉しいわね、なんか大変みたいだけど、時間ができた時はいつでも遊びに来て下しね?』

『本当にありがとうございます、これで・・・』これで帰る手がかりが見つかれば。


今すぐにでも学校に戻って教頭先生に本を貸してもらえたらと思ったけれど、いまから行っても迷惑になるだろうと思い止める事にした。

『明日でも遅くないよね』明日からまた頑張ろう。

読んでいただき、ありがとうございまあした。感想やレビュー、評価を書いていただけたら幸いです。辛口なものでもお願いします。

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