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ライラと友達  作者: 角刈りチーズ
第五章 選ばれなかった者
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25/25

第25話 私が盾になる

ーーー倒れているリサが立ち上がるころ、不吉な魔力がどんどん膨れ上がっていた。

「なんだありゃ?」

スタインさんが驚くのも無理はなかった。


魔王らしき物体の上空が歪んでいった。

天まで届きそうな歪みに、草木が吸い寄せられるようにたなびき、地面にヒビが広がる。

魔族も人もエルフも思わず手が止まっている。

声も出せず、恐怖で座り込んでしまう人たちがいる。

畏怖の念に膝をつくものがいる。

皆が食い入るように眺めていた。

徐々に歪みが集まっていき、最後には槍と呼ぶには不釣り合いな禍々しいものが出来ていた。

(リサが殺される!なんとかしないと!)

そう思ったもののすぐに思い返す。

《なんとかって私程度に何ができるの?》

(叫んでも、魔法も間に合わない!)

《役立たずなお荷物には無理だよ。》

(魔王の気をそらさないと。なんとかして!)

《リサは私とは別の世界の人間、勇者の宿命に従っただけ。死んだって関係ないよ。》

「あるよ!!!」

私は思わず大声を出していた。

横にいたチャコさんが気付いて私を抱きしめてくる。

「大丈夫ライラ。私はあきらめないから。」

そう言って私の顔を見てにこりとつぶやく。

「もう友達でしょ。」

その時、自分の中で何かがつながった気がした。


(どうすればいいかなんてわからない。けど・・・リサは私の友達だから!だから!)

「・・・私は諦めない!」

そう思うと、肩にかかる重さを思い出した。

その石を握りしめる。

思い出されるのはあの時調べた伝説の一説「転移に使える」その一言に私はかけた。

なりふり構わない、ありったけの魔力を石に込める。

(私が・・・私がリサを助ける!)

心の底からそう願ったとき、私の体が紫の光に包まれた。

目の前の景色が一瞬で変わる。

魔王と振りかぶられた槍が目の前に広がっていた。


怖いとかそんな感情は浮かぶ隙すらなかった。

私は力いっぱい、腕を広げた。

(私が盾になる!それしかないんだ!)

がむしゃらに、力の限り魔力を放出した。

槍が振り下ろされるさなか、魔王の目が見開かれ驚く表情が見えた。

「ぬう!」

そんな声と共に、槍が・・・明後日の方向に飛んでいく。

私めがけて突き立てようとしていたのに。

無理な軌道を描いたせいで、魔王の体はバランスを崩して大きくねじれていた。


何が起きたのか、考えるよりも先に叫んでいた。

「「今!!」」

リサの声と重なった瞬間、私の横から伸びた聖剣が魔王の額にめり込んだ。

その瞬間、戦場から音が消えた。

叫び声も、驚きの声も、だれも何も発さなかった。

ただゆっくりと、魔王の体が灰のようにボロボロと崩れてゆくのを皆が見ていた。

全身が崩れ去って消えたとき、遠くの方で歓声が聞こえた。

「「勇者が魔王を討ち取ったぞ!!!」」

そこから歓声が戦場に広がっていく。

呆気に取られていると、後ろからリサがもたれかかってくる。

私はリサが倒れないように、しっかり背中で支えていた。


あれから数日、本当にいろんなことがあった。

魔王軍は頭を失った影響で総崩れ。

士気の差を覆せるわけもなく、大幅に数を減らして散り散りになっていった。

カルディア平原はボロボロだったけど、ボルタラさんが気長に修復するといった影響で、イゴンコウの事業の一つになった。

エルフの面々は挨拶もほどほどにミアレスに帰っていった。

もともと人類と仲良しこよしというわけではなく、どこか居心地が悪かったらしい。

主役が回復するまで宴はお預けになっているが、それはそれでまたの約束となった。


魔王と戦った面々は皆重傷だった。

イゴンコウで大人しく入院生活を余儀なくされている。

一番ひどい状態だったのはリサだったが、そんな彼女も今では・・・


「もうベッドの上は飽きましたよ。」

「だめだよ。もう少し安静にしていないと。魔法で傷は治ったとはいえ、体も魔力も全快には少しかかるって言われてるでしょ。」

「そうなんですけど・・・」そう言って頬を膨らませるリサに思わず笑ってしまう。

「元気になったらその分、いろいろ回ろう。ミアレスも、行ってみようよ。」

「いいですねそれ!」

そう言ってニコニコしながらこっちを見てくる。

「ライラさんから行こうなんて、珍しいですね。」

「そんなことないよ。」

口ではそういったものの、変わった自覚はあった。


これから先リサと見て回る世界を少し楽しみにしている自分がいる。

これからも、きっといろんな依頼をこなすのだろう。

今なら自信をもって帰れる気がする。

自慢の友達を、みんなに紹介しないと。

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