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ライラと友達  作者: 角刈りチーズ
第一章 ほどほどの居場所
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第1話 拾われた日

多くのものが門出を祝う春。

さわやかな陽気の中、この町に来てから2度目のこの季節をかみしめている。

彼女の名はライラ。

16歳、身体能力も魔力もそこそこの平凡な女の子。

これはそんな彼女が少しだけ自分の殻を踏み出すお話。


その町に流れ着いたのは、一年前のことだった。

15歳になったとき、居心地の悪さから家を飛び出した。

家族を含め周囲からうっすら気を使われている現状から逃げ出したくなった。

特に行く当てがあったわけではない。

準備もろくにしないまま、軽装で衝動的に飛び出した。

片手に握りしめた路銀のほとんどは、移動手段に消えていった。

行きついた町の名はトレバー、近辺では最大の港町である。

いつの間にか人付き合いが苦手になっており、どうしてもしり込みしてしまう。

多くの人が行きかう町の流れになじめず、朝から晩まで一人ベンチに座り続けていた。

孤独に苛まれたが、逃げ出した場所には帰りたくない。

次に行く路銀も尽き、途方に暮れていた。

「お前さん腹減っとらんか?ちと買いすぎてしまっての。良かったらもらってくれんか?」

背の低いローブを羽織ったおじいさんがパンを差し出していた。

町についてから何も食べていなかったので、無心で食べた。

おいしくて、優しさに包まれた味に、ついに涙が零れ落ちた。

「なんじゃそんなに腹が減っておったのか!はっはっは、ならうちに来なさい。悪くなりそうなものがまだあるから食っとくれ。」

知らない人に付いていったらだめだ、そんな判断力はもう残っていなかった。

渇望していた優しさに触れた瞬間、緊張も警戒も溶けてなくなっていた。

その日、食べたら気を失うように眠りについた。


「仕事しか楽しみがない老いぼれよ。好きなだけいなさい。」

翌日以降、おじいさんは何も聞いてこなかった。

ただただ今迄からずっと一緒に住んでいたかのように過ごさせてくれた。

申し訳なさから炊事や掃除をやろうとしたが、経験も浅く失敗の連続だった。

それでもおじいさんは笑ってた。


一つ季節を過ぎようとしたころ、おじいさんが話を切り出した。

「家事をやってもらうのは若者の未来を奪っておるようで気が引ける。いっちょ冒険者になってみんか?」

恩返しできていないことに後ろめたい気持ちを持っていたので渡りに船だった。

こうして私は冒険者として働き始めることになった。

冒険者ギルド ブルーサンシャイン

高名な魔法使いをマスターに置いた町の大きさには似つかわしくない、こじんまりとしたギルドである。

入団の面接は余裕だった。

冒険者になることを勧めたおじいさんこそギルドマスター ゼフその人だったからだ。

あの日、彼は私が朝から椅子に座って何も出来ず途方に暮れているのに気づいていたらしい。

その出自も薄っすらと…

町で困ってるやつは助ける!

ブルーサンシャインとはそういう志の元設立されたギルドなのだ。

一通りの初級魔法が使える私は、依頼で困ることほとんどなかった。

危険度が低いものを選べば、多彩さを活かし幅広い依頼をこなすことが出来た。

久しぶりに自分が肯定される気持ちを実感でき、ギルドの一員としての心構えを一気に形成していった。


1年後、16歳になった私はすっかり町の一員だった。

行動範囲をほとんど町中で過ごしており、幅広い依頼をこなせるとあっては必然的に町で知らない者はいない状態になった。

ギルドに向かう途中に両手いっぱいのパンをもらうなんてことも。

認められ、充実したこの日々に私は十分満足していた。

その日まで・・・

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