駆け抜ける
ゴールデンウィークは、ずーっと地元にいました!
俺達は巨大蟻の巣の中を進んでいる。
マヤさんの「幻術」で巨大蟻に化けているから、他の蟻達から攻撃されることなく進むことができた。
しかし巨大蟻の1匹が、こちらに接触してくるという緊急事態が発生。
蟻は触角の触れ合いで情報のやり取りをするらしいが、今まさにそれをやられた。
結果、「幻術」を見抜かれ、今まさに襲われそうになっているという状況だ。
「これは……駄目だな」
と、マヤさんは「幻術」を解除し、すぐに攻撃へと移行した。
腕を振った瞬間、巨大蟻の身体が真っ二つに裂ける。
今のは風属性魔法か!?
それとも純粋に物理的な衝撃波!?
凄すぎて俺には分らん。
とにかくさすがの強さだけど、倒される寸前に蟻が呼び寄せたのか、周囲の巨大蟻が無数に押し寄せてきた。
あれらが一度に群がってこられたら、マヤさんはともかく、俺達はひとたまりもないだろう。
●:これは強行突破で逃げるしかないね
●:でも、逃げ切れるか?
蟻って素早いぞ
●:コボちゃん達はドンクサイから、抱えて逃げるしかないかも……
でも、それだと追いつかれそう。
●:なんだかんだで30kg以上はありそうだしな
●アイ:まあ、マヤなら全員乗せて走れるでしょ?
「……仕方がない」
「にゃっ!?」
次の瞬間、マヤさんの姿が劇的に変化した。
それは尻尾が5本もあり、毛皮が赤い狐だった。
しかし普通の狐と違う部分は、それだけではない。
大きさが牛ほどもある。
もう、完全に猛獣の大きさだ。
これがマヤさんの真の姿……!!
●:ん? 何がどうした?
●:ナオちゃんビックリしてる?
ああ、配信のカメラがマヤさん視点だから、彼女自身の変化は視聴者に見えていないのか。
「マヤさんが大きな狐に変化しましたね」
●:モフモフか!!
うん、モフモフだね……。
ただしその巨大さの所為で、トラやライオンよりも怖く見えるが……。
『早く私の背に乗れ。
脱出するぞ!』
と、マヤさんは地面に伏せるが、狐の姿とはいえ女の人の背中に乗るのは、ちょっと抵抗があるな……。
が、巨大蟻達が押し寄せている状況では、そうも言ってられない。
だけど先にコボルト達を乗せないと……!
「ほら、お前たちも……!」
「わ、わう……!」
「ぴぃ~」
しかし彼らは、迫りくる巨大蟻の姿は当然として、巨大な狐となったマヤさんにも怯えているようだった。
すっかり動転して、右往左往している。
『ああもう、仕方がない!』
その時、マヤさんの尻尾が伸び、俺やコボルト達の身体を巻き取り、そして──、
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「「「きゃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんんん!?」」」
マヤさんが高速で走り始めた。
俺達はマヤさんの尻尾に巻かれたままだからすごい揺れるし、ダンジョンの壁にぶつかりそうで超怖い。
●マルル:うわ、ジェットコースターみたい
●:酔う、これ酔うよ!!
●ナウーリャ:サラマンダーより、ずっとはやい!!
●アイ:みんなのトラウマ や め れ
それから5分なのか、それとも10分なのかよく分らないけど、マヤさんは時折行く手に立ち塞がる巨大蟻を瞬殺しながら走り続け──、
「はあ、はあ。
怖かった……!!」
「きゅう~ん(死ぬかと)……」
「わうう(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル……」
「……」(白目)
そしてようやく止まった。
「これで逃げ切れたと思うが……。
ただ、正しい道を通ってきたかどうか……」
「あ、『オートマッピング』があるので、確認してみますね』
う~ん、自分が通った道しか表示されないからちょっと分かりにくいけど……。
「たぶん道はあっていると思います」
「そうか……。
最悪、『転移』で出口に戻れるが、ダンジョン内では磁場が安定していないのか、失敗して何処かに飛ばされる可能性もあるからなぁ……」
「ボクも『転移』には、いい思い出はありませんね……」
●:いやな事件だったね……
●:そもそも、まだその問題は解決していないんだよな……
●エルシー:日本に帰還して、ようやく解決ですね
そうそう、『転移』の罠で見ず知らずの場所に跳ばされて、帰れなくなったのが現状だからな……。
それでも着実に、日本へと近づいている。
順調にいけば、懐かしい我が家まであと数日だ。
通販で買った本を置いてあった場所から、トコジラミらしき虫が出てきて心中が修羅場と化したの一か月ほど前。増殖すると、業者に依頼しないと根絶が難しい存在だし……。
すぐに駆除したし、雄っぽかったので繁殖はしていないと思うけど、安心できないので専用の殺虫剤を二種類購入し、部屋中に散布しました。今のところ明確な吸血の被害は無いので、安心してもいいのかな……?




