配信者異世界へ
ダンジョンを抜けると、そこは異世界だった。
いや、一見しただけでは、俺達の世界とそんなに変わらない山の中……って感じだが。
ただ、植物の植生が日本とは違うので、ちょっと外国っぽいが。
なんだか南米を連想させるというか……。
しかしそれ以上に──、
「空気中の魔力が濃いですね」
ダンジョンの中もそうだったけど、空気中の魔力の量が、向こうの世界とはまったく違う。
慣れない者には、息苦しく感じるかもしれない。
「そうなのか?
私にはこれが普通だから分からないが……」
マヤさんにはピンとこないようだが、彼女の強さの一端は、この魔力が潤沢な世界の影響もあるのかもしれないな……。
「わうー(明るい)!」
「きゃうぅ(眩しいよー)!」
……って、ダンジョンで生まれ育ったコボルト達が、慣れない陽光に戸惑っている。
しかしこれは、慣れてもらうしかないよなぁ……。
その為には、落ち着いて生活できる場所が必要だが……。
「コボルト達は、何処で保護してもらえるのですか?」
「まずは私が住んでいる村へ運ぼう。
今後のことは、そこで詰めていこうと思う」
「そうですか。
よろしくお願いします」
「ああ」
マヤさんがそう答えた瞬間、目の前の景色が変わった。
「ここは……!?」
「転移魔法で、私の村まで移動したよ」
すご……転移魔法なんて使えるんだ。
……って、目の前にあるこれ、村というよりも町という規模なんじゃ……。
しかも現代の地球に似た建物が、あちこちに見える。
それに道路を走っているあれは、自動車か?
ちょっと変わったデザインだが、たぶんそうだな。
「なんだか、あまり異世界っぽくないですね……」
●アイ:私が持ち込んだ技術や文化が、かなり発展したよね
●ナウーリャ:私が持ち込んだものかもしれませんが
いや、何やってるの、この神様……。
ちょっと異世界のことを楽しみにしていたのに、異世界感が皆無になったんだけど……。
ただそれでも、滞在するのなら文明レベルが高い方が快適なのは事実で、家には綺麗なトイレやベッドに、風呂や水道なども完備されているらしい。
だが──、
「……さて、コボルト達を何処に泊めるか……。
まずはそこから考えようか。
彼らが今後どのような生活をしたいかによって、変わってくるけれど……」
「どのような生活……ですか?」
マヤさんの言葉で、俺は首を傾げた。
今後の生活で、宿泊先が変わるとは……?
「コボルト達が今まで通り、原始的な生活を送りたいのなら、あまり文明に触れさせない方がいいだろうし……。
これから文明の中で生きていくつもりなら、文明の利器の使い方とか一般教養を学ばなければならないし、社会の中で生きるのなら仕事もしなきゃ駄目だろうから……大変だと思うよ?」
「ああ……なるほど……」
●:ちなみにこの世界で人間達と生活しているコボルトの中には、ペットみたいな扱いの者達もいるね
●:人権的な問題は無いのか……という議論もあるけど……
●:でも、コボルトだからなぁ……
「ああ……はい」
ほぼ犬だしな……。
しかも「相互自動翻訳」とかのスキルが無ければ、言葉も通じない。
人間の社会で人として普通に生きていくのは、かなり難しいというのが実情だろう。
だからペットという形が、一番問題がなさそうだというのも分かる。
あとは訓練次第で、警察犬みたいなことはできそうか……?
だけどコボルト達が、それを望むのかは別問題だ。
「……本人達に聞いてみます」
●エルシー:それが良いでしょうね
で、コボルト達に聞いた結果、彼らは今まで通りの生活を送りたいと望んだ。
……というか、それ以外の生活を知らないので、他の生き方が想像できないのかもしれない。
だからといって、文系的な生活を体験させると、もう元の生活には戻れなくなる可能性が高いしなぁ……。
実際、俺がお好み焼きを食わせた3匹は、俺に付き従うことを強く望んでいる。
うん、美味しい物が食べたいだけだよな?
ともかく、コボルト達にいきなり発達した文明に接触させると、そのあり方を大きく歪めてしまう可能性が高いんだよなぁ。
結果として、何か予期せぬ問題が生じてしまうかもしれない。
だから大半のコボルトは、人里離れた山奥に村を作って生活してもらった方が良さそうだ。
外部との接触は徐々に……だな。
「それではコボルト達は、村のキャンプ場に泊まってもらうとしよう」
●:隔離する感じだね
●:それでも移住する場所の選定には時間がかかるから、どうしても文明との接触は増えてしまうだろうねぇ
●:それで考えが変わるのなら、それも仕方がない
●マルル:既にナオちゃんに同行して、地球に行くことが決定している子もいるもんね
……うん、3匹の説得は失敗した。
どうしても俺から離れるのが嫌だと、チワワみたいな潤んだ瞳で見つめられたら拒否できねぇ……。
食い物への執着、恐るべし。
お好み焼きを食べさせてしまった責任は、とらないと駄目か……。
まあ、水杜も受け入れに前向きだから、いいか……。
●水杜:ドッグフードとかを買って、準備しているね!
……それは不満を訴えるんじゃないかなぁ……。
せめてチ○ールにしてあげて。
ホームセンターで売れ残っていた水草の種を買ったんだけど、種が古い所為かそれとも気温が低い所為なのか、150粒くらいまいても1つしか発芽しなかった……。
あと、麻婆豆腐に小松菜を入れたら美味しかった。




