390:スカーレットスライム
年明けなので、お年玉として本日は三話更新となっております。
こちらは三話目です。
「ウナッギィ!」
「ポットォ!」
「ツゥボォ!」
スカーレットイールが青白い電撃を放ち、それに合わせるように二体のスカーレットポットが突っ込んでくる。
だが、この場に居る魔物で一番の脅威になるのは目に見えているこいつらではない。
「何処に……」
だから俺は三体の攻撃を避けつつ周囲に目を配り……見つける。
スカーレットイールの移動の痕跡、ぬめりのある液体の一部が地面の傾きやパウダースノーの偏りを無視して移動している姿を。
「ス……」
「奇襲で無ければどうとでもなる」
その液体が俺の背後にまで素早く回ってきたところで色が緋色になる。
だが、何処に居るか分かっていれば、ランダム強化で攻撃強化と素早さ強化の二つを引いていようとも対処は容易だ。
「ラ!?」
「イル!?」
「ポト!?」
「ツボ!?」
俺は二重推進で駆けて、スカーレットスライムの奇襲を回避。
その回避先に向かって放たれたスカーレットイールの電撃も紙一重で回避。
衝突するのも辞さずに突っ込んできたスカーレットポットたちは片方の背後に回り込んで蹴る事で、スカーレットポットたち自身の意思よりも強く衝突させることで対処。
「まずは二発!」
「イルゥ!?」
その上でスカーレットイールに接近し、まずは一発。
正確な殴りと『昴』の射出を。
そして、吹き飛んだスカーレットイールを追いかけて、更にもう一発同様の攻撃を。
「スラ……」
「来るだろうよ。スカーレットイールの注意の向き方からして」
『ブブ。トビィが妙な事を……』
で、殴ったタイミングで更なる追撃ではなく横へ跳ぶことでスカーレットスライムを回避。
ついでにグレネードを投げてスカーレットイールのシールド回復を阻害。
『ブブッ! トビィ!』
「分かってる!」
「「ポットォ!!」」
そこへ転移エフェクトから予告線が放たれたので三重推進で緊急回避し、突っ込んできたスカーレットポットたちは避けてビームへと蹴り込む。
「一気に仕留めるぞ!!」
「イルァ!?」
その後もスカーレットスライムもスカーレットポットたちも果敢に突っ込んでくる。
スカーレットイールは自分が狙われていることを理解しているのか、逃げ回りつつ電撃を撃ち込んでくる。
転移エフェクトからのビームも勿論飛んでくる。
だが俺はその悉くを攻撃を掠らせる程度で避けてスカーレットイールに近づき、殴り、シールドを削って……剥がす。
「トドメ!」
「イル……」
そしてトドメとして口から『昴』を突っ込み、尾まで切り裂くことによって撃破。
それから残った三体の攻撃を回避しつつ数秒経つと、スカーレットイールの残したぬめりもなくなる。
つまり……。
「さて、ようやくまともに姿が見えるな」
「スラァ……」
ぬめりに触れて同色になる事で姿を隠していたスカーレットスライムが現れる。
どうやらスカーレットスライムは名前通りの緋色の液体で体は作られており、液体部分よりも少し色の濃い球体が液体中に浮かんでいると言う姿をしていたようだ。
となれば、あの球体がスカーレットスライムの核であり、他の部分への攻撃は無効化あるいは殆ど効果がないと言う定番パターンの可能性が高そうか。
「スラァ!」
「まずは斬る」
スカーレットスライムが素早く飛び掛かってくる。
俺はそれを避けると、『昴』で体の端を斬り飛ばす。
「なるほど。そういうタイプか」
スカーレットスライムの変化は?
シールドゲージに変動は無し。
体積は斬り飛ばされた分だけ減った。
斬り飛ばされた側はあっという間に蒸発して消滅した。
この時点で俺は先述の推測がほぼ正しいことを察する。
「ポットォ!」
「ツゥボォ!」
「お前らは後回しで……ビームも避けて……斬る!」
「スラァ!?」
俺はスカーレットポットたちの攻撃とビームを避けつつ、スカーレットスライムの体を斬り刻んで体積を減らしていく。
そうして体積が削られるのはスカーレットスライムの戦闘能力の低下に繋がるのだろう。
切り刻む度にスカーレットスライムの動きは鈍くなっていく。
『トビィ。シールドが少しずつ削られています』
「まあ、竜命金の体でも溶かすスライムが相手だからな。これは仕方がない事だ」
「スススゥ……」
だが、スカーレットスライムもただ切り刻まれるだけでないようだ。
『昴』が自身の体を通り過ぎる僅かな時間だけでも、『昴』を溶かし、それを無かった事にするために俺のシールドは消費されていく。
「だがそれもここまで……だ!」
「スラァ……」
しかしそれでも、スカーレットスライムの体は削られて行き……ある程度削ったところで投げ込んだ特殊弾『焼夷ガス発生』付きフググレネードによって、スカーレットスライムの液体を沸騰させて打ち砕き、核を焼く事でシールドを削っていく。
そうしてトドメとして、焼夷ガスの外に転がり出た核を俺は殴って粉砕した。
「ポットオオォォ!!」
「ツッボオオォォ!!」
「これで残すはお前らだが……」
これで残すはスカーレットポット二体。
俺は二体を均等に削り、出来る限り同時にシールドを剥がす。
そして片方を特殊弾『影縄縛り』によって拘束し、動きを止める。
「同じ強度同士のものがぶつかれば、ぶつかり方次第だが、どっちも割れる……よなっ!」
「「!?」」
で、俺はもう片方のスカーレットポットを上手く受け止め、担ぎ上げると、拘束しているスカーレットポットに向かって投擲。
投げられたスカーレットポットは綺麗な放物線を描いて飛んでいく。
だがしかし、俺は投擲の結果を見ることなくその場から三重推進で逃げ去り、出来る限り部屋から離れる。
「っ!?」
『一体何が……』
直後、如何なる反応が起きたのかは分からないが、凄まじい爆音、衝撃、振動、舞い上がるパウダースノーと何かしらのガスの混合物が響き渡り、俺の下にまでたどり着いて、ほんの少しだがシールドが削れる。
やはり部屋の中でただ倒すような真似をしなくて正解だったらしい。
≪設計図:イールスキンを回収しました≫
≪幻想系マテリアル:エーテル・氷結を1個回収しました≫
≪鉱石系マテリアル:隕鉄・氷結を1個回収しました≫
≪鉱石系マテリアル:隕鉄・氷結を1個回収しました≫
「とりあえず四体きちんと倒せたのは間違いないようだから、良しとしよう」
『ブン。そうですね』
俺は次の部屋に向かって移動を始める。
さて、想定外や射程フロアの攻撃による支援があったとはいえ、たった一戦でこの消費と時間のかかり方か。
こうして俺が戦っていた間に、他の魔物たちは集合を果たしているはず。
となると、次の戦いからはさらに厳しいものになるかもしれないな。
「やっぱり、マトモに戦う想定ではない感じだな。これは……」
しかも俺が使っているのは竜命金製のゴーレム。
それでこれなのだから……他のプレイヤーたちがどれだけきつかったのかは推して知るべしという奴だろう。
だがそれでも俺は戦って勝つしかない。
殲滅戦と言うのはそういうハプニングなのだから。
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