388:殲滅戦のフロア10
新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
年明けなので、お年玉として本日は三話更新となっております。
こちらは一話目です。
≪先へ進む道が閉ざされた。敵を殲滅する事でしか道は開かれない≫
「知ってた」
『ブブ。本当にそうなりましたね』
フロア10に入ると同時に殲滅戦のハプニングが発生した旨を告げるアナウンスが響く。
まあ、来るだろうなと思ってたので問題はない。
『トビィ。属性は氷結です』
「まあ、そうだろうな」
坑道予測で分からなかった属性の部分が氷結属性であることは一目で分かった。
と言うのも、俺が今居る部屋の床一面が厚さ3センチ程度の真っ白なパウダースノーで覆われていたからだ。
雪とはつまり氷なのだから、特殊な仕掛けが関わらないなら、雪がある時点で氷結属性なのはほぼ間違いないのである。
「んー。見た目と感触はパウダースノーではあるが、坑道の床とかと同じ扱いだからなのか、挙動は砂に近いかもな」
『ブン。となれば、立ち回りには注意が必要かもしれませんね』
「だな」
ただ、このパウダースノーは坑道の壁や床と同じで、普通のゴーレムの挙動では破壊不可能なものなのだろう。
踏みつければ、踏みつけた場所は一時的に沈むが、足が離れて数秒もすれば元通りになる。
また、巻き上げて目くらましにすることは出来るようだが、圧縮して雪玉にするような事は出来ないらしい。
一番の注意点は……挙動が砂に近いので、滑って転ぶことか。
状況次第では致命傷になりかねないので、注意は払っておこう。
「しかし、外と通じていない、そう言う装置があるわけでもないのに雪と植物か」
『ブーン。まあ、坑道ですから。あ、水はあるようですよ』
他に目立つものとなるとだ。
天井はきっちり岩で閉ざされていて、雨も雪も光も入ってこない構造になっている。
竹に似た植物や、灌木による藪が所々で生えているのだが、これらは隠密行動には役立ちそうだが、攻撃を防ぐ遮蔽物にはならなさそうな密度になっている。
床をよく見てみると、一部の床からは水が湧いていて、その周辺だけは床が岩のものになっているが、湧いた水は湧いた地点から離れると消えてなくなるようで、水が溜まることはないようだ。
「脱出ポッドはあっちだが、全部の部屋を巡らないとまず殲滅は出来ないだろうから、進む方向は適当でいいか」
『ブン。分かりました』
では、フロア10のギミックがある程度分かったところで探索開始。
俺はアドオン『昇降機方角把握』を無視して、適当な通路へ向かって歩き始める。
「出来る事なら最初に黒キパに遭遇しておきたいんだよな……」
『ブーン。余力があるうちに、と言う事ですか?』
「それもある。それに加えて緋色の魔物たちの知性を考えての事だな」
『ブブ。知性ですか?』
とりあえず現状では妙な気配や異音、振動の類は無い。
なのでもう暫くは大丈夫だろう。
「ああ。殲滅戦と言う概念を相手が理解している前提の話になるが、それなら味方に遭遇した魔物たちはその後に分散して行動を取るようなことは無くなるはずだ。援軍がない状態で、単独行動中と集団行動中、どっちのが危険かくらいは知性強化が入っていなくても分かるだろうからな」
『ブーン。無いとは言えませんね。そして、トビィの言う通りなら、時間が経つほどに集団は大きくなって……と言う事ですか』
「そういう事だな。まあ、本当にそうなるという論拠は何処にもないわけだが」
通路はほんの僅かに中央が盛り上がっていると同時に、端の方に湧水を流すための溝があるようだ。
足裏の感覚からそれが分かった。
まあ、戦闘には影響がない話だな。
「む……」
『トビィ』
と、ここで斜め前に転移エフェクトが生じる。
どうやらフロア9に引き続き、射程フロアの特殊能力持ちが居るようだ。
「予告線か」
そして、その転移エフェクトから、俺の胴体に向かって真っ赤な線が伸びている。
ダメージはなく、状態異常もない。
となればこれはシューティングゲームなどで敵が大技を放ってくる前に出してくる予告線の類と言う事になるだろう。
うん、拙いな。
となれば、避けないと危険な奴だ。
だから俺はゆっくりと歩き続けて、それでも予告線が俺の胴体を正確に捉えているのを確認する。
そして予告線の動きが止まった瞬間。
「今っ!」
俺は二重推進で前方に向かって飛び込む。
「いいっ!?」
『!?』
直後。
来ると分かっていてもなお驚く光景が俺の後方では起きていた。
轟音と共に予告線を中心として、直径3メートル近いビームとしか言い様のない光の柱が伸びて、壁に当たったそれが周囲に氷雪の暴風をまき散らしていたのである。
その強烈な風によって俺は通路を転がり、まき散らされる寒波によってシールドゲージが30%近く削り取られていた。
「はあぁっ……ヤバいな、こりゃあ」
『ブン。拙いですね』
やがて光の柱は消え、転移エフェクトも消えた。
うん、危険だ。
放ったのが黒キパなのか、それとも雑魚の魔物なのかは分からないが、ほぼ完璧に避けた余波でこれと言う事は、直撃すれば確実にシールドが全損する一撃である。
どの程度の間隔で撃てるのかも分からないが、どうやらこのフロアにはどの魔物よりも優先して倒すべき魔物が居るようだ。
「急ぐぞ」
『ブン』
俺は通路を駆けていく。
そうして辿り着いた次の部屋には、ぬめりを持った緋色の体表を持つウナギ一体と、動き回る緋色の壺が二体居た。
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