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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第80話:羽ばたく準聖女

 ――――――――――建国祭当日、王宮にて。ネッサ視点。


「こっちが聖教会大司教アナスタシウス王弟殿下で、そっちがゲラシウス筆頭枢機卿ね」

「よろしく」

「よろしくである」

「こちらこそよろしくお願いいたします」


 準聖女として建国祭を俯瞰で見る機会があってもよかろうということで、私も王宮に招待された。

 昨日自然派教団による騒ぎがあったところなのに、普通に建国祭が開催されることは驚きだ。

 治安当局も、もう危険はないという判断なんだろう。


 大司教猊下は長身の穏やかそうな人。

 ゲラシウス様はたまにパルフェさんが従者として連れていることがあるので、顔は知っている。


「ネッサちゃん、建国祭のバタバタがすんだらすぐ引っ越してくると思うから、部屋用意しといてよ」

「うむ、手配しよう」

「最初は寂しいかもしれないけど」

「大丈夫だよ」


 寂しいというならずっと寂しかったから。

 子爵家に引き取られてずっと精神的に孤立していた。

 今年になってからだ。

 学院生活が楽しくて、また養父である子爵も私のことを考えてくれていたとわかったのは。


「あたしも王都に来たばかりの頃は寂しくて寝られなくて」

「初日からグースカ寝てたである」

「人知れず枕を濡らしていたんだよ」

「よだれで濡れていたのである」


 アハハ、絶妙な掛け合いだなあ。

 大司教猊下が聞いてくる。


「ネッサ嬢はどの程度の魔法の使い手なのだ?」

「結構器用にいろんな魔法を使うよ。でもそーいや聖属性の魔法って、ヒールしか見たことないな」

「ヒールしか使えないんだ」

「マジか」


 ヒールはどういうわけか物心がつく前から使えた。

 その後魔法に興味を持って、それほど危なくない、簡単な魔法をいくつか習得した。

 でも聖女とバレる恐れがあったので、聖属性の魔法を覚えることは教団から禁止されていたのだ。


「ヴィンセントと協力して、治癒魔法キュアと祝福は早めに教えてくれ」

「りょーかーい。ヴィンセントさんっていうのは聖堂魔道士長だよ。聖女の教育係みたいな人でもあるから、わかんないことあったら大体ヴィンセントさんに聞けばいい」

「わかった」


 新しい生活が始まるということが実感できてくる。

 頑張ろう。


「ところでその棒は何なんだい?」

「これ? ネギソードだよ」

「ネギソード?」


 大司教猊下が笑う。


「聖教会に伝わっている杖だ。初代聖女が作ったと言われているものでな」

「魔力補正があるから楽かと思って、去年建国祭の祝福の時に使ってみたんだ。そしたら思ったより魔力を持ってかれたな。確かに効果は増強されるけど、もう一つ使い勝手がわからんというか」

「普段の癒しでも使用して、感覚を身体に馴染ませればよかったではないか」

「まあねえ。でもあんまりオモチャすると折っちゃいそうだしな?」

「オモチャするな!」

「聖教会の秘宝であるぞ!」

「秘宝扱いなのか。大したもんじゃないよ、これ」

「そうなのかい?」

「うん、材質的には。同じもの作ってくれって言ったら、ちょっと良さげなふつーの剣一本分くらいのお値段だと思う」


 大司教猊下とゲラシウス様が呆れている。

 パルフェさんは歴史とか伝統をあんまり加味しないようだ。


「聖女様!」

「あっ、殿下、じっちゃん。こんにちはー」


 クインシー殿下と、もう一人は確か殿下の母方の祖父フェリックス様だ。


「聖女殿。そろそろ出番ですぞ」

「行く行く。唸れネギソード!」


 ソードじゃないけど、そこは誰もツッコまないんだな?

 バルコニーへ。


「ええと、これから祝福を授ける?」

「そうそう」

「去年私のところにも祝福が届いたんだ」


 王宮に見物に来ていたのならわかる。

 でも去年私は自室にこもっていた。

 どういう理屈で祝福が届いたんだかわからない。


「去年は王都全域に祝福を飛ばしたんだ」

「えっ?」


 何それ?

 あっ、でも王都全域を祝福していたなら、特別魔力的に隔絶された場所でなければ効果が及ぶわけか。

 パルフェさんの得意そうな力技だった。


「王都外壁に結界があるから、その外に祝福飛ばすのはムリだけどさ」

「聖女様でなければ不可能な、大規模で美しい祝福ですよ」

「うーん、でも難しいんだよ」

「祝福が? そんなことないだろう。パルフェは気軽に祝福使ってるじゃないか」


 パルフェさんが難しいって言うほど、祝福はコツが必要なのだろうか?


「いや、油断すると祝福を王都の結界にぶつけて壊しそうなんだよね」

「「「「「えっ?」」」」」


 皆目が点になってる。

 祝福で結界が壊れる?

 そんなことあるの?


「……以前、結界が破れると修復に莫大な金がかかるだろうと言っていたな」

「うん、多分ね。去年すこーし結界にこすっちゃったんだ。ピリッとした手ごたえがあってさ。ヤベっと思ったから、今年は自重する」

「「「「「……」」」」」


 常人と注意するポイントが違う。

 やっぱりパルフェさんはすごい。

 バルコニーの下には多くの民が集まっていた。


「おお、聖女パルフェよ。来たか。今年も盛大に頼むぞ」

「任せて。でもおかしいな? 去年王都のどこにいても祝福は届くってことをわからせたから、今年はこんなに混雑しないと思ったんだけど」

「去年のバカげた祝福にはそんな意味があったのか。いや、可愛い聖女があれだけの祝福を行うとなったら、近くで見たいのは当然であろう?」

「そーだったか。美しさは罪だねえ」


 パルフェさんの言ってることは冗談なのか本気なのか、時々わからないことがあるな。


「聖女様、拡声の魔道具です」

「ありがとう。いくぞお!」


 バルコニーの下の群集に向かって伸びのある声を放つ。


『天の神よ、地にあまねく祝福を!』


 眩しい! 天空から降り注ぐ流星群のような輝き!

 そうだ、これだ。

 抜け出せない泥の中みたいな変化のない日常を過ごしていた一年前に浴びた、未来に道筋を示す希望の光。


 眼下の民の大歓声の中で思う。

 祝福、文字通りだ。

 呪われていた私は祝福されたんだ。

 自然と涙が出てくる。


「聖女様、すごいです!」

「ふいー、いっぺんに魔力が出てくとお腹が減っちゃう」

「聖女パルフェよ、御苦労であった。存分に食していってくれ」

「やたっ、王様ありがとう! あれ? ネッサちゃんどうしたん?」

「あっ、いや、感動してしまって……」


 涙を見られた。

 恥ずかしい。


「感動してるとこごめんよ。あれ薄っぺらい祝福だから、見かけほど効果ないんだよね」

「そんなことはない」

「そお?」


 パルフェさんは不思議そうだが、私は確かにあの光に救われたのだ。

 今だって心が熱い。

 自分自身で強い心臓の鼓動を感じる。

 昨日逮捕された自然派教団の面々も、今日の祝福で絶対に思うところがあるはずだ。


「私にもあんな祝福が使えるようになるだろうか?」


 心を照らす祝福を。

 人々を導く祝福を。

 単なる魔力の大小じゃないんだ。

 聖女は特別な存在じゃなきゃいけない。

 私ではパルフェさんの代わりにはなれないだろうが。


「使えるよ」


 パルフェさんがにこっと笑って右手を差し出す。

 やや躊躇したけど、私もその手を握った。

 温かい。

 そうだ、私も努力して少しでもパルフェさんに近付かなければならない。

 準聖女になるのだから。


 準聖女という言葉の響きが、改めて私の感性を刺激する。

 思えばパルフェさんを偽聖女と断じていたこともあった。

 でもパルフェさんは立派だ。

 決して揺るがない。 


「とりあえずお腹が減っちゃ何もできない。王宮の料理人さんが張り切って作ってくれてるんだよ。食べに行こうよ」


 そのままパルフェさんに手を引かれて臨時の食事処へ行く。

 いい匂いがしてきた。

 幸せの方向に導かれているんだと実感した。

 第二部はここまでです。

 次話から最終第三部が始まります。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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