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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第56話:試験前

 ――――――――――新学期二ヶ月が経過したある日、学院高等部廊下にて。マイク視点。


「聖女様はいいなあ」

「え? 何がよ」

「頭がいいから」

「そりゃあたしの頭脳は最高だけれども」


 ケラケラ笑う聖女パルフェ。

 臆面もなく言うなあ。

 でも聖女パルフェの優秀さは、既に同じクラスの誰もが認識しているのだ。


「試験が近いからビビってる? あたしも他人事じゃないわ。行儀作法が合格できるかどうか不安だわ」


 行儀作法のレイチェル先生は、聖女パルフェを気に入ってるみたいだよ。

 ガミガミうるさくはあるけど。


「聖女様は何でも知ってるから、試験で苦労なんかしないだろう?」

「おいこらマイク君。頭がいいことと知識があることは別だぞ?」

「それは……」

「いくら頭が良くたって、知識は学ばないと入ってこないわ。最初から知識がインストールされてるほどインチキじゃないわ」


 そうだ、聖女パルフェは頻繁に図書室へ行って調べ事をしている。

 読書クラブの全員と顔見知りになったくらいだ。

 知識は努力なしでは得られないということか。


「クインシー殿下もユージェニー嬢もネッサ嬢も、勉強ができるから羨ましいよ」

「まー殿下とユージェニーちゃんは優秀な家庭教師がいるんだろうけれども」

「ネッサ嬢は?」


 ネッサ嬢は子爵家の令嬢だ。

 高位貴族でもないのに、そんなに教育に熱心なんだろうか?


「ネッサちゃんも従者がいるからな? ケイン子爵家って裕福なのかも」

「オレのために皆に試験勉強させてるみたいで心苦しい」

「そーだ、反省しろ! じゃなくて気にしなくていいって」

「本音が先に出てるんだけど」

「本音じゃないとゆーのに。ついお約束で」


 聖女パルフェにはお笑い回路がインストールされている。


「いや、クラブの皆も試験勉強したい雰囲気じゃん? マイク君だけじゃなくて」


 学院の一つの学期は三ヶ月であり、その後一ヶ月の休みがある。

 学期ごとに試験があって、最低習得基準点に達していないと追試だ。

 一ヶ月の休業期間中に追試に合格しないと、問答無用に落第が決定する。


「ああ、いいスコアを取りたいなんて言わない。とにかく落第が怖い」

「マイク君は優秀だから平気だってば」

「何が優秀なんだよ」

「もう回復魔法ヒール覚えたじゃん。普通は四年間かけてもっとしょぼい魔法覚えるものなんでしょ?」

「言われてみれば……」


 魔法クラブの一年生と、まだ魔法を使うことができなかった二年生の先輩がヒールを覚えさせられた。

 全員が使えるようになった。

 とにかく丸暗記でいいから一つ魔法を覚えろ、でなきゃ魔力を実感できない、という聖女パルフェの持論であり、熱血指導だったのだ。

 習得がヒールだったのは使いっきりの放出系魔法で事故がまずあり得ないから、必ずどこかで役に立つからという理由だった。

 各自の持ち魔法属性を丸っきり無視してるって、先輩方が驚いてたけど。


「でも魔道理論はまだまだだけどね」

「いっくらソーサリーワード構文が完璧でも、それじゃ三分の一なんだってば。実際に魔法を使うためには魔力の操作とイメージ力がいるってことは、もうマイク君もわかってるじゃん?」

「それはもう」

「学院のカリキュラムは魔道理論が先になってるけど、個人的には魔力操作とイメージが先だと思うんだよね。魔法使えりゃ魔力もイメージ力も育つ。でも理論覚えたって育たんもん」


 わかる気がする。

 魔道理論でソーサリーワードを習っても退屈で仕方なかった。

 魔法を覚えてようやく理論も重要だと思い始めたところだ。


「まー試験も大事だよ。休みが潰れるといけない。あっ、先生こんにちはー」


 向こうからアルジャーノン先生だ。


「やあ、パルフェ君マイク君。これからクラブかい?」

「そーです」

「一〇分ほどいいだろうか? 私の研究室に来てくれ」

「あたしも先生に聞きたいことがあるんだった」

「オレは部室に行っていた方がいいでしょうか?」

「いや、マイク君も来てくれ」

「そうそう。今から話すことは内緒だぞ?」


 ええ? 聖女パルフェとアルジャーノン先生は意思の通じ合ってることがあるみたいだな。

 何だろう?

 先生の研究室へ。


          ◇


「ネッサ君のことなんだ」

「あたしもネッサちゃんのことで。あの子の魔力おかしくない?」


 ネッサ嬢?

 魔法クラブに入部する前からヒールを使えた優秀な人だと思うけど。

 魔力がおかしいってどういうことだろう?


「パルフェ君もそう思うか。彼女が無属性だということは聞いたかな?」

「うん、聞いた」


 たまに優勢な魔法属性を持たない人がいて、それを無属性と言うそうだ。

 もちろん魔力自体を持たないというわけではない。


「パルフェ君の感じたことを聞こう」

「ネッサちゃんの魔力、全然ブレがないの。普通は感情や身体のコンディションに伴う揺れがあるはずじゃん?」

「やはりそれか。実際はもっと多くの魔力を所持しているのに、スパッとカットしてるように思えるのだ」

「そうだ、そんな感じだねえ」

「とすると怪しいのは……」

「首に着けてる魔道具かな」


 ネッサ嬢が首に魔道具を着けている?

 二人は感知魔法で知ったんだろう。

 ……ネッサ嬢はいつも首を隠した服装だな。

 ファッションかと思っていたけど。


「魔力を隠してるのが本当なら、そもそもそんなことしてる理由がわかんないんだけど。何か得があるのかな?」

「ちょっと思い当たらないな。持ち魔力量が多いことはステータスと見る人もいるんだ。魔力が多いために平民が貴族の養子に迎えられたり、嫁や婿に求められたりすることはあるが」

「マジか。あたしモテちゃう?」

「パルフェ君は魔力量以前に容姿と性格でモテモテだろう?」

「それもそうだった」


 アハハと笑い合う。

 何なんだろう、このノリ。


「はい、ここからマイク君の出番でーす」

「えっ?」

「ネッサ君について知ってることを教えてくれないか?」


 だからオレも来いってことだったのか。

 といってもネッサ嬢とは初等部時代も関わりがあったわけじゃないから、通りいっぺんのことだけだ。


「初等部二年になる時に編入してきたんです。ケイン子爵家当主様の庶子だとも養子だとも噂で言われていましたが、実際のことは知りません」

「ふむ、続けたまえ」

「いつもどこか超然としている印象で、誰かと仲がいいとか、逆に不仲であるとかいうことはなかったです」

「ネッサちゃんが魔法を使えることは、マイク君は知らなかったんだよね?」

「うん」

「ユージェニーちゃんも知らなかったみたいだしな。付き合いのある人がいないようなら、誰も知らなかったのかな?」

「そこまではわからないけど」

「でも魔法クラブで隠す素振りはなかったな? 魔法使えることを隠してないのに、魔力を隠すってのはさらにわけわからんし」

「では魔力も隠しているつもりはない。そしてあの首の魔道具の本来の効果は魔力を抑えることではない、と考えるのが自然か」

「なるほど?」


 聖女パルフェとアルジャーノン先生は思うところあるみたいだけど、オレにはサッパリだ。

 内緒って言ってたから、知らなくていいことなんだろうけど。


「マイク君、ネッサ君が首を覆う衣装を着ているのはいつからだかわかるかい?」

「編入してきた時に既にそういうスタイルでした。変わってるなと思ったから覚えています」

「ふーん。理由はわからんけど怪しいな」

「いいだろう。思った以上の収穫だった。ネッサ君について新しくわかったことがあったら教えてくれ。それから今話したことは他言無用で」

「りょーかいでーす。じゃ、あたし達クラブ行くね」

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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