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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第41話:王立学院高等部入学式その2

 ――――――――――王立学院講堂にて。スイフト男爵家令息マイク視点。


「失敗したなー」

「真にそうである」

「……ごめんなさい」


 クインシー王子殿下の人気が凄まじい。

 殿下見たさに生徒の保護者がたくさん詰めかけ、椅子が足りなくなったそうだ。

 急遽設けられた座敷席の一番後ろに、聖女パルフェ及びゲラシウス様とともに三人ぽつんと座っている。


 少しでも前で新入生総代の挨拶をする殿下を拝見したい。

 が、どうせちっちゃくしか見られない、後ろなら小声で好き勝手話していられるよ、という聖女パルフェの意見でだ。

 もっともなことではある。


「マイク君を見捨てて、もう少し早く教会を出るべきだった」

「ええ? 今になってそれはひどいんですけど」


 本当に聖女のセリフなのかな?

 慈悲の欠片も感じられないんだが。

 聖女パルフェに裏はないけど、その分言い様が正直過ぎるというか。


「真にそうである」

「ゲラシウス様までそんな。前の方はきっと徹夜組ですよ。少しくらい早く教会を出発してても一緒でしたよ」

「そゆことじゃないんだ。座敷席は女の子の大事なお尻が冷えちゃうなーと思って」

「「えっ?」」


 予想外の感想だ。

 お尻が何だって?

 聖女パルフェのくりっとした目に見つめられてドキッとする。


「女の子のお尻は子供を産むための大切なものなのだ」

「かもしれませんけど、クインシー殿下のことはいいんですか?」

「よくはないよ。でも殿下とは同学年で同じ学校に通うんだぞ? 今後いくらでも接触はあるでしょ。今はお尻の方が重要」


 確かに学園内は身分の上下はないという建前だ。

 しかし高等部ともなると、将来の人脈も考えに入れなければならない。

 殿下の側には常に人だかりができちゃうんじゃないかなあ。


「オレなんかが殿下のお近付きになる機会がありますかねえ?」

「そりゃあるでしょ。学院は身分関係なく、有用な人材と知り合うための機会でもあるって入学案内に書いてあったぞ?」

「その通りである。マイクが有為の者になればいいのである」

「マイク君がすごいやつなのに見逃されたら、それはマイク君のせいじゃないんだし」


 簡単に言うけど、初等部で自分がどれくらいのレベルかわかってるからなあ。

 聖女パルフェは才能の塊だって聞くけど、オレはどうだろう?

 贔屓目に見ても凡人のような。


「……ひょっとしてマイク君。自分に見切りをつけてない?」

「え?」

「諦めたらそこが限界だぞ」


 思わず息を呑む。

 考えが顔に出ていただろうか?

 オレにはまだやれることがあるのか?


「小娘よ。たまには聖女らしいことをほざくではないか」

「マイク君があたしのこと才能があるって、心の中で褒めてくれた気がしたんだよね。お返ししなきゃと思って」


 すごいカン!

 これが聖女パルフェか。


「しかしマイクよ。努力を怠ってはならんというのはその通りである。努力が報われるとは限らぬが、努力せねば良き結果は永久に訪れぬのである」

「おお? ゲラシウスのおっちゃん言うなあ」

「たまには吾輩も偉そうなことを言ってみたいのである」


 クインシー殿下の挨拶の真最中ですよ。

 笑い声は抑えてください。

 あっ、聖女パルフェが手を振ってる?


「殿下がこっちに気付いたみたいだよ」

「笑い声が大きいんですよ!」

「マイク君の声の方がよっぽど大きい」


 思わず口を両手で塞ぐ。

 こんなことで王族に睨まれたらどうしてくれるんだ!


 ――――――――――同刻。王子クインシー視点。


 学院高等部の入学式で、新入生総代として皆の前で挨拶を述べることになった。


『王になれば演説の機会などいくらでもあるのだ。いい経験になる』


 王たるお父様はそう仰るけれど、どうも気後れしてしまう。

 長い間目を患っていて人前に出なかったことが、こういう形で響いてくるとは。

 経験をカバーすることは大変だとつくづく思う。


「随分人が多いですね?」

「ええ。殿下への期待の賜物でございます」


 ボクを一目見に押しかけた保護者が多いらしい。

 まいったなあ、プレッシャーを感じてしまう。


 学院長の式辞が終わり、いよいよボクの出番か。

 用意した挨拶文を記した紙を片手に、拡声の魔道具に声を発する。


『麗らかな春の陽気の中、本日の良き日に学院の一員となれたことを嬉しく思っております……』


 居並ぶ人達からヒソヒソ声が聞こえる。

 やっぱりだ。

 退屈な定型の挨拶文だし、誰もボクの話している内容なんて聞いちゃいない。

 たまたまボクが顔を出す機会だったから見に来ただけなんだ。

 物珍しさを取ったらボクに何が残るだろうか?


 ああ、気分がくさくさする。

 読むことだけに集中するべきだな。

 学生もその保護者も、ボクを品定めしている真っ最中なのだから。

 原稿に目を落とす。


 ふとどこかから聞き覚えのある笑い声がした気がした。

 この声は……そうだ、聖女様!

 聖女様も高等部から学院に編入するということを、今の今まで忘れていた。

 どこにいるのだろう?


 原稿から目を離し、講堂の大勢の出席者に目を配る。

 一番遠くの座敷席で手を振っている女の子がいる。

 特徴的な黒髪で短めのボブヘア、聖女様だ!

 隣にいる大柄の男性はゲラシウス枢機卿だから間違いない!


 聖女様がボクを見てくれていたんだと知ると、急に嬉しくなる。

 晴れがましい気分だ。

 格好いいところを見せたいな。

 まだ原稿は半分残ってる。

 気合を入れよう。


『……学院に希望が、ウートレイド王国に繁栄が、人々に幸せがありますよう、願ってやみません』

「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」


 挨拶の終わりで大きな拍手をもらってビックリした。

 そういえば途中からヒソヒソ声も聞こえなくなったような。

 片手を挙げて歓声と拍手に応え、席に戻った。


「クインシー、いい挨拶でしたよ」

「ありがとうございます、お母様」

「前半は王たるに相応しくない、オドオドとした自信なさげな態度でしたが」

「えっ?」


 ヒヤッとする。

 お母様はおっとりしているが、ボクの目が治癒してからすごく厳しい。

 厳しいというのは少し違うか。

 要求水準が格段に引き上がったというべきか。


「後半は見違えました。遠くに悠然と視線を走らせていたでしょう? あれが臣民を見やる王の振舞いです。声もまた皆に届きます」

「そういえば……そうでした。前半は聞いてもらえていなかった気がします」

「最後にたくさん拍手をいただけたのも、後半が良かったからですよ。臣民はあなたの一挙手一投足を見ています。王に相応しいかどうかを。これからは気をつけるのですよ?」

「はい。よくわかりました」


 お母様はさすがによく見ている。

 お父様に言われているのかもしれないな。


「終わり良ければ全て良し。前半と後半の出来が逆転しているよりよほどよろしい。今日は合格です」

「はい!」


 ボクには経験が足りない。

 でもこうやって一つ一つ学んでいけばいい。


「今日の挨拶は、ボソボソと喋ってお終いなのかと思ってガッカリしていたのです。でも途中で急に背筋が伸びたでしょう? 巻き返したのは大したものですが、何故なのです?」


 ボクの功績じゃない。

 正直に話そう。


「……温かい笑い声が聞こえた気がしたんです」

「笑い声?」

「聖女様の」

「まあ、パルフェちゃんの?」

「会場全体を眺めたら、一番後方の席に聖女様がいて。手を振ってくれたのです。勇気が出ました」


 お母様がニコニコしている。

 今日ボクが恥をかかなくてすんだのは聖女様のおかげだ。


「パルフェちゃんは気取らず飾らず威張るでもなく、堂々としていますからね。あれこそ王族の自然な態度ですよ。クインシーも見習いなさい」

「はい、精進いたします」

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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