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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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159.リアルとVR空間の違い

 冬休みも終わり3学期になった。

 と言っても特に何かが変わる訳でもなく。

 大変そうなのは受験を控えた3年生と、部活の引継ぎがある人達くらい。

 僕は上級生と面識がないので卒業で別れが悲しいとか、そういうのはない。

 のんびりと冬の冷たい空気を肌で感じながら日々を過ごしていく。


(こうしてるとVRで感じる寒さ冷たさはリアルとは若干違うんだよな)


 VR空間ではノセボ効果を防ぐ意味合いもあって本物の死を連想させる痛みや凍傷するような冷たさはだいぶオブラートになっている。

 ー30度の世界でも精々手足がかじかんだように動きにくくなるくらいだ。

 お陰で冬でも薄着で過ごしたり逆に夏に厚着をしても活動出来る。

 過ごしやすさで言えば断然VR世界だろう。

 じゃあリアルとVRどちらが良いかと聞かれたら、僕はやっぱりリアルが良いかな。

 目が視えないのは不便じゃないかと思われるかもしれないけど、僕の場合は生まれた時からだからね。

 肌で感じられるあれこれが鮮明なのは重要な事だ。

 生きてるって実感が持てる。


「照元、ちょっといいか」


 放課後に先生からの呼び出し。

 この感じははあれかな。

 案の定、来年度から試験的に始まるVR授業の件だった。

 なんでも校内への設備の導入が遅れているらしく、教室で行われる普通の授業をVRを通じて一緒に受けるのが難しいらしい。

 その代わり他の学校でも同じような試みはスタートしているので、そちらと連携してVR専用の合同授業を開催する方向に話がシフトしているらしい。

 距離が関係ないVRならではだ。

 こちらが上手くいけば日本中(もしかしたら世界中)の僕と同じように目や耳が不自由な生徒が集まって授業が出来るかもしれないとのこと。

 うん、念のため多国語を学んでてよかった。

 まぁいずれにしても早くて4月からの話だ。

 僕ら生徒が準備することはほとんどないのでのんびり待つことにしよう。


 帰宅した僕は究極幻想譚にログインした。

 僕達が今居るのは王都から南に街2つ分進んだ所。

 海が見える街を目指してるんだけど想像してた以上に遠いらしい。

 まぁ進行が遅いのは気になるものがあったらすぐ寄り道してたせいでもあるんだけど。

 今も絶賛寄り道中だ。

 小さな村で昨夜大雪が降ったらしく、お年寄りの家の扉が雪で埋まってしまったから雪かきを手伝ってほしいと頼まれた。

 時々ニュースで北の地方では一晩で1メートル近く雪が積もるって言うけどこんな感じかな。

 口の広いスコップで雪を通路脇に投げ上げる単純作業。

 それを繰り返しながら僕は横で一緒に作業してるフォニーに昼間思ったことを聞いてみた。


「リアルとVR空間どちらが良いか、ですか」

「うん」


 フォニーは雪かきの手を止めて一瞬考えたけどすぐに答えが出たみたい。


「最近ではこちらで会話に不自由することは無くなりましたけど、それでもリアルの方が好きです。

 リアルでは音が聞こえませんけど、それでも生命の息吹を肌で感じられる気がするんです」

「あ、そこは僕も同じだ」


 どんなに精巧に造られた世界だと言っても限界はある。

 例えるなら造花と生花みたいなものだ。

 最近の造花は見た目どころか手触りすら生花と変わらない物が存在する。

 でももちろん光合成はしないし葉脈も流れていない。

 他の人は気にならない(気付かない)些細なことも僕らみたいに目や耳が不自由だと感じとれてしまう。

 今どかしてる雪も僕の目でも結晶の形に違いは無いし、指が触れた時に溶ける感触もリアルとはちょっと違う。

 まぁだからってこの世界が嫌いな訳じゃないけど。


「私はリアルよりこっちの方が良いわ」


 少し離れた所で作業していたコロンがこっちの会話が聞こえたらしく話に入ってきた。


「リアルは嘘や裏切りが多くて面倒で。

 その点こっちにはふたりがいるし。って何にやにやしてるのよ」


 コロンは突然デレるから不意打ちを受けると表情を作るのに失敗する。

 真っすぐ伝えてくれるのがコロンの凄い所だ。

 でもそっか。

 この世界では悪人が一般人の振りをしてることはあっても、一般の人が嘘を言ったり僕らを騙したりすることはない。

 街の人同士の喧嘩も僕達は見かけていない。

 もちろん貪欲なプレイヤー達が他人を騙して利益を得ようとする場面を見たことはあるけど、それはリアルと変わらないし、それもあって僕らはごく一部のプレイヤーとしか交流を持っていない。

 付き合いたくない人から簡単に離れられるのはゲームならではと言う感じだ。


「それよりさっさと雪かき終わらせましょう」

「コロンの方はもう終わったの?」

「広い場所はブルドーザーみたいに盾で押しのければ一瞬よ」


 言いながらコロンが大楯を構えて実演してくれた。

 重量級のゴーレムすら跳ね返すんだから積もった雪くらい余裕か。

 細い通路では難しそうだけど、そこは僕とフォニーが頑張ればいい話。

 そうして無事に雪かきを終えた僕達は依頼主の家で休ませてもらうことになった。

 若干腰の曲がったおばあさんがヤカンと急須を持ってお茶を淹れてくれた。


「大したもてなしも出来なくてごめんなさいね」

「いえいえ。一仕事終えた後の熱いお茶は美味しいです」

「です」


 何の変哲もないほうじ茶なのに心温まる味っていうのはこういうのを指すんだろうね。


「皆さんはこれからどちらに向かうのかしら」

「南へ。海を見に行こうと思ってます」

「まぁ海。私は見たことが無いけど、南に行くのならこれを持っていくと良いわ」


 そう言って差し出されたのは薄い円柱型のガラスケースに入ったひし形の針。

 右を向いても左を向いても針は一定の方向を指し示している。


「方位磁針?」

「この村の南には冬でも夜しか雪が降らない場所があるそうよ。

 そこを抜けるのにきっとこれが役に立つわ」

「なるほど、ありがとうございます」


 思いがけず次の場所の攻略情報が手に入ってしまった。

 ただ、冬でも夜しか雪が降らない場所って何だろう。ダンジョンの一種かな?

 プレイヤーは地図機能が使えるから普通は迷子になることが無いんだけど、多分それが使えない場所なんだろう。



2日に1話ペースに戻したいけどなかなか筆が進まないorz

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