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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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135/176

135.雪山登山

 雪玉による妨害を乗り越えて第1区画のゴールに到着した。

 ちなみに現在の順位は最下位である。

 いやコロンが防いでくれてたとは言っても前に進むのも困難なほど大量の雪玉が飛んできてたので仕方ない。

 それにまだ1/3が終わっただけなのでまだこれから逆転の目はあるだろう。


「それでここに戦車があるって話だけど」

「あれじゃない?」


 そこにあったのは1台のソリ。

 大きさは横幅は1人分で長さが3人分のストイックな形状だ。

 ながえに相当する部品は付いてるけど、ソリを引く馬や犬は存在しない。

 ということはこれは。


「ソリというより人力車?」

「魔法で飛んだりはしなさそうね。

 こっちに付いてるこれはランプ?」


 全体は木製なんだけど、ソリの前方、轅の根元部分に透明なガラスのコップみたいなのが付いてて、中にロウソクが入っていた。


「試しに点けてみようか」

「私ライターとか持ってないわよ?」

「そこは大丈夫」


 この為に持ってたって訳じゃないけど、僕はマッチを取り出してロウソクに火を点けてみた。

 するとロウソクとは思えない程明るい光を放ちながらソリの前方を照らし始めた。

 なるほど、これはヘッドライトの役目を果たしてたのか。

 ただし今は昼時間なのであまり意味は無い。


「大体構造は分かったし出発しようか」

「ええ。先に行ってる人達に追いつかないと」


 コロンには座席に座ってもらって僕は轅を掴んで立った状態で走り始めた。

 第2区画は妨害は無いと言ってもソリを引きながら山を登るのでさっきより足が重く感じる。

 そしてすぐに観客からの妨害が無い理由を理解することになった。


「ウキキーーッ」

「ここからはモンスターが出るのか」

「動きは複雑だけど、容赦なくぶん殴って良い分、さっきより楽ね」


 過激な発言をするコロンは近づいてくる猿型のモンスターを盾で殴って雪の中に沈めていく。

 モンスターの強さは鉱山の町付近に出るのと同じくらいなので、ここに来れてる時点でそこまでの脅威ではない。

 前方を走ってる他の参加者たちも余裕を持って対応している。


「先に行ってる人が数を減らしてくれてるから助かるわ」

「……ちょっと楽過ぎる?」

「そうね。という事は次があるんじゃない?」


 アトラクションという意味ではこれくらいが丁度良いのかも知れないけど、イージー過ぎると面白味に欠けることになる。

 僕が運営ならこの第2区画で半数近くが脱落するくらいが良い塩梅だと思うので、第2第3の障害を用意するだろう。

 しかし視界に映るのは雪とモンスターのみ。……雪?


「コロン、雪だ」

「そんなのそこら中にあるわよ」

「じゃなくて、降って来てる」

「え、うわっ」


 第1区画を走ってた時は晴れてた空がいつの間にか曇って、雪が降って来ていた。

 それもふわふわとか、ぱらぱらなんて生易しい降り方じゃない。あっという間に大雪だ。

 しかも風も強くなってきた。

 雨なら暴風雨。でも今は雪だから猛吹雪だ。

 雪が目に入ってくるのでほとんど目を開けていられない。


「山の天気は変わりやすいっていうけど凄いね」

「何よこれ。全然前が見えないじゃない!」


 コロンの言う通り数メートル先も見えず、他の選手たちの姿も吹雪の中に消えてしまった。

 もうどっちが前なのかも分からない。

 これがリアルなら遭難と凍死を避けるために早々にレースなんて中断して避難すべきなんだけど、ゲームの世界だからなぁ。

 この吹雪だって偶然ではなくコースの障害物として最初から計画されていたのかもしれない。

 なら突破法もあるはずだ。


「・・・そうだ。ライト!」


 昼間だから点けても意味が無いと思ってたけど、今なら先を見通せたり出来るかも。

 そう思ってライトを点灯させてみると。


「多少先が見えるようになったわね」

「うん。あっ何か棒みたいなのが光ってるよ!」


 ライトで照らされた範囲に雪以外にオレンジ色に光るものを発見した僕は急ぎそこに向けてソリを引っ張った。

 光の正体は順路を示すポールだった。

 目に雪が入らない様に手でガードしながら周囲を探せば他にも同じようにオレンジ色が見えた。

 そちらにライトを向ければ光を反射して吹雪の中でもはっきりと見える。


「よし、このオレンジ色を頼りに先に進むね」

「ええお願い。私は雪や風がラキアに届かない様にするわ」


 コロンが透明な盾をバイクの風防カウルよろしく僕の前に出してくれたお陰でだいぶ楽になった。

 そのまま30分くらい吹雪の中を進んだところでようやくゴールにたどり着いた。

 いつの間にか雪も止んでいて日差しが温かいとさえ感じる。


「第2区画の走破お疲れさまでした。

 こちらで一息入れてください。

 皆様の健康を考え、ここで5分間の休憩となります」


 声の方を見ればスタッフと思われる人達が焚火で暖を取りつつ熱いお茶をみんなに振舞っていた。

 そのお茶を貰いつつ周りを見れば、ここまで来れたのは僕らを含めて5組だけのようだ。

 みんなあの吹雪をどうやって突破したのか。

 いやそれよりここまで来れなかった人たちの心配を先にすべきだな。


「あの、ここまで来れずに遭難した人って大丈夫なんですか?」

「ご安心ください。リタイアした方の元にはベテランの救助スタッフが向かっております」


 あの吹雪の中から遭難した人達を探し出すって凄いな。

 僕ですら雪で視界が遮られて大変だったのに。

 救助専用の魔法やスキルがあるんだろうか。


「っしゃあ。5分経ったし行くか!!」

「おうっ!」


 一番乗りでここに到着したチームが気合を入れながら第3区画へと進んでいくのが見えた。

 第3区画はこの山頂から坂道をソリで滑り降りるコースだ。

 速度が出る分、道中の障害物を避けるのが大変らしいけど。


「あの、すみません」

「はいなんでしょう」

「あの戦車というかソリって、ブレーキとか方向転換ってどうやるんですか?」

「あぁ」


 お茶を配ってくれたスタッフにソリの仕様を聞くと丁寧に教えてくれた。


「ブレーキレバーが一番後ろの席に付いてますので、減速したい時は左右のレバーを同時に引いてください。

 曲がりたい時は体重を横に傾けるか片側のレバーを少しだけ引いてください。

 間違って引きすぎると車体が回転して倒れますので注意してくださいね。

 緊急時には外に飛び出して雪の中に飛び込めば大怪我は防げるでしょう。

 もちろんその場合はレース失格になりますが」

「なるほど」

「あとゴールまでの道は2つあって、1つは障害物だらけの最短ルート、もう1つは距離は長くなりますが障害物の少ない比較的安全なルートとなっています。

 ゴールするだけなら安全なルートをお勧めしますよ」

「分かりました。ありがとうございます。

 あ、それともう1つだけ聞いても良いですか?」


 色々と情報を得た僕はコロンの所に戻ってきた。

 周りには僕ら以外居ないところを見ると既に全チーム出発した後なのだろう。

 僕はコロンに先ほど聞いてきたことを伝えた。


「優勝するなら最短ルートを全速力で突破しないといけないと思う」

「そうね。じゃあこっちの道を行きましょうか」


 そうして僕らは最後尾から他チームを追いかける形で第3区画へと進んだ。

 今降ったばかりの真新しい雪にソリの足あとを残しながら。



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