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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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133/177

133.ケーキはクリスマスだけじゃなかった

 更に幾つかの謎かけをクリアしつつ、僕らはダンジョンの奥に到着した。

 それは良いんだけど。


「イチゴはどこ?」

「全然見当たりませんね」


 周囲は雪ばかりでイチゴどころか植物の緑色すら見当たらない。

 そうなると考えられるのは2つ。


「イチゴは全部雪の下に隠れているか、最初からずっとダンジョン内で歩き回ってるモンスター達のドロップ品か」

「はい。ですが出来ればどっちでもないと嬉しいです」

「そうだね」


 この大量にある雪を掻き分けて探し当てるのはかなりの重労働だし、見た目は普通の動物で無害なモンスターを一方的に蹂躙するのも気が引ける。

 人によっては後者を選ぶくらいならクエストの達成を断念することを選ぶかもしれない。


「僕らが第3の選択肢として取る手はあれかな」

「あれですね」


 言いながら僕らはアイテムボックスから第3の選択肢を取り出した。

 それはもちろんニンジンやナッツを始めとした食べ物である。

 最初にモンスターが食べ物で釣れることは確認してあるし。


ピーッ

「みんな~。ここにある食べ物が欲しかったらイチゴと交換ですよ~」


 フォニーがホイッスルを吹きながら呼びかければ、周囲のモンスター達は一斉に耳を立ててこっちを見た。

 そして雪の中に潜ったかと思えば、イチゴが幾つか生った枝を咥えて出てくると、そのイチゴを僕らの前に置いて代わりに野菜を咥えて去っていく。

 あっという間にイチゴの山が出来上がってしまった。


「やっぱり雪の中に隠れてたんだ」

「ですね。じゃあこのイチゴをアイテムボックスに仕舞えば終わりです。

 あとは来た道を戻れば、って。出口そこですね」


 フォニーがイチゴを仕舞うと入口にあったのと同じ木の扉が突然現れた。

 その扉を抜ければ入口のあった場所へと戻って来れた。


「結局モンスターを1体も倒さずに終わったね」

「楽でよかったです」


 そんな感想を交わしつつ僕らは王都に戻り、依頼主であるケーキショップへと向かった。

 店内は結構広くガラス張りのショーケースにはいくつものケーキが並べられていた。

 窓際に用意されたテーブル席には数組のお客さんが談笑しながらケーキを食べている。

 どうやら持ち帰りだけじゃなく喫茶スペースで食べていくことも可能なようだ。


「こちらご依頼のイチゴです」

「ありがとうございます。

 まぁこんなに沢山。しかもちゃんと熟したものばかり。

 これはサービスしないといけないわね。

 おふたりの時間さえ良ければ空いてる席に座って待ってて」

「はい」


 言われた通り空いた席に座り改めて周りを見れば女性同士もしくはカップルで食べに来てる人ばかりだ。

 クリスマスだからって言うにはまだちょっと早いので、単純にこの世界でも甘いものは女性に大人気って事なんだろう。

 少し待っていると受付に居た女性(雰囲気からして女将さんかな?)が2人分のケーキセットを持ってきてくれた。


「お待たせしました。

 当店自慢のショートケーキと紅茶のセットです」

「ありがとうございます」

 

 2段重ねのスポンジの間にはイチゴと生クリームが挟まれていて、ケーキの頂上には色鮮やかな赤いイチゴが鎮座している。

 このイチゴはさっき採ってきたイチゴかな?

 スポンジにフォークを入れて1口食べてみれば甘いクリームとイチゴの酸味が口の中に広がりスポンジも柔らかくて溶けるようだ。

 ケーキに使われるクリームってお店によっては凄くクドい場合があるけど、ここのは後味もすっきりしている。


「美味しいね」

「はい。私、ケーキは誕生日の時くらいしか食べないんですけど、このケーキは今までで一番美味しいと思います」


 そっか、クリスマスはケーキじゃなくチキンだって言ってたもんな。

 なら誕生日の時はケーキ独り占めなんだろうか。あっ。


「そうだ誕生日」

「どうしました?」

「誕生日のケーキって、歳の数だけロウソク立てたりする?」

「小さいときはそうですね。最近はそれするとロウソクだらけになるので適当に8本くらいですけど」


 フォニーの言葉を聞いて1つ閃いた。

 ロウソクに火を点けるのは、リアルだとライターを使うだろうけどこの世界だとマッチの出番なのではないだろうか。

 ならケーキを買う人はロウソクとマッチも欲しがる可能性がある。

 僕は退店する前に女将さんに相談を持ち掛けることにした。


「この世界ではケーキにロウソクを立ててお祝いをする習慣ってありますか?」

「えぇありますよ。子供の誕生日などに」

「そのロウソクに火を点けるときにマッチを使ったりしませんか?

 実は今、マッチを売り歩いてまして、良かったらケーキと一緒にマッチも提供してみませんか?」


 言いながらマッチ箱を1つ取り出して見せてみる。

 女将さんはしげしげと眺めた後、僕に一言断って1本火を点けてみた。


「これは……」


 相変わらず、なぜかほっとする灯だ。

 そう思ったのは僕だけでは無かったようで、女将さんも優しい笑顔を浮かべて頷いた。


「とても上質なマッチですね。

 しかも火災防止と火傷防止の付与までされています。

 こんな凄いものを一体誰がお造りになったんですか?」


 え、そんな凄い機能が付いてたの?

 というかそれを一発で見抜く彼女はいったい何者なのか。


「すみません。僕は販売を委託されただけで製作者や製造法は分からないんです」

「そうでしたか。

 では、そうですね。50箱ほど頂けるかしら」

「っありがとうございます」


 思いがけず大量にマッチが売れてしまった。

 これで残り半分。この調子なら意外と楽に100個行けるかもしれない。

 などと考えていたらフォニーに袖を引かれた。


「ラキア君。そのマッチ私にもください」

「はいどうぞ」


 断る理由は何もないのでフォニーにもマッチを1つプレゼントした。

 フォニーは大事そうに両手で包んだ後、アイテムボックスに仕舞った。

 僕らに使い道は無い気がするけど、今日の記念みたいなものかな?



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