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紅頭巾Ⅲ・Ⅳ ~呪詛石の戦慄~  作者: サッソウ
紅頭巾Ⅳ
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第三十五篇 解除と破壊

 では、ここまでの話をフロールに簡単にまとめてもらおう。

「つまり、実はスミシュさんは悪い人に操られていて、メナードリーさんがスミシュさんを救って、結ばれました。でも悪い人は、スミシュさんを捕まえて国王の龍に閉じ込めてしまいました。さらに、悪い人は強い怪物になってしまいました。これで大丈夫?」

 そして、今、悪い人は退治されたのですが、国王は龍の姿のまま。さらに、スミシュさんはまだ閉じ込められたままなのです。

 ちなみに、もう一度説明すると、スミシュは魔法使いではなく、悪い人によって魔法使い役をさせられたということです。


 熊沢がメナードリーに問う。

「でも、何で最初からちゃんと話してくれなかったんですか?」

「昔から、喋ることが苦手で……。呪詛石の叶えた願いを言うのが恥ずかしかったことと、どこかで妻を疑ってしまっていたのかもしれません……」

 メナードリーの説明は不十分のように思われるが、シェイは

「無理に言わなくても、本当のことを言ってくださったおかげで、今後の策が考えられます」

 フォローになっているようでなっていないような発言になってしまったが、メナードリーには十分すぎるほど通じたと思われる。


「結界が邪魔をするなら……」

 フロールは解除魔法を使う。しかし、他者の結界を破るのは相当な魔力を消費する。フロールの魔力では到底及ばない。

「それなら……」

 解除出来ないなら壊してしまえ。力ずくで壊せば、解除魔法よりも技術面では容易である。

 巨大なハンマーが宙に浮かび、空間を取り囲む結界を叩き割る!


 突如、龍がもがき暴れはじめる!

「内部で何か動きがあったのか!?」

 シェイは魔法で街に危害が及ばないように、結界で壁を作る。暴れる龍は体を地面や結界の壁に叩きつけ、自分自身へ攻撃しているように見える。

「熊、バイクを用意しとけよ。何かあったら病院直行だからな……」

「動物病院ですね」

「……おい、フロールとスミシュさんの身に何かあったらって意味だから!」

 ついでに言うと、熊沢は動物病院に行くのか? 元々人間だから、普通の病院か? いずれにせよ、今はどうでもいい。龍をおさえるのに精一杯だ。

(リスの魔法でもこんなに暴れてるってことは、尋常じゃないな……)

 龍は自分自身を傷つけ、混乱状態か。

(荒療治だが……)

 シェイは魔法で龍の口を開き、脱出の手助けをする。しかし、いつ外に出るかは分からない。持久戦だ。


 一方、フロールは結界を破ることができずにいた。

(こうなったら、自分の知ってる中で一番強い魔法を使って壊すしかないよ)

「デストリュクシオン」

 "destruction"はフランス語及び、英語で"破壊"を意味する。ところで、魔法の名前を叫ぶのは今回が初めてなのでは……? ……いや、そうでもないか?

 さて、最初から使えよと言われるほどは出し惜しみせず、あっさりとだが、フロールの魔法で結界に切れ目が入り、だんだん割れていく。

 それと同時に、城が大きな音をたてて崩れ始める!

 結界を壊せば、この空間は消滅する!

 結界を壊すと同時に脱出する必要があるのだ。


 シェイは迷っていた。自分はどうすべきか。フロールにシェイとしての記憶は無い。メネアとしての記憶もいつ消えてもおかしくはない。一瞬で消えるのか、徐々に消えるのかは分からない。むしろ、後者の方が時間が長い分だけ、辛い気がする。

 フロールが禁忌の魔法を使った代償である罰は、それまでとそれ以降…つまり、フロールの人生すべてにおいて継続されるとシェイは考えている。

 実際に、シェイとフロールは幼馴染みで小さいころから知り合っていた。この記憶は罰よりも前。フロールをシェイはかばい、護り続けていた。この記憶は罰よりも後。どちらの記憶も抹消されていることから、永遠であることが推測される。

 まぁ、かけた本人が定期的にと言うのだから、これらの推測のうち、瞬時に消えることと永久であることにはかわりないだろう…。

 罰の魔法をかけたのは、もちろん魔法使いであり、その一人が皮肉にもフロールの母親だった。魔方陣と数人の魔法使いが必要である。罰の魔法は親族が行うものとされており、母親の姉妹と3人が行ったのだろう。

 対象者は″これから会う最も信頼できる親族ではない人″。″対象者との記憶を定期的に失うこと″が罰である。現在は対象者がシェイとなっている。

 ポイントは"最も"という言葉だろう。"もっとも"は無論"一番"を意味する。つまり、シェイよりも信頼できる"親族ではない人"が現れたら、一体どうなるのか?

 答えは3パターン考えられる。シェイとの記憶は復活するが、新しい対象者との記憶は消える。シェイとの過去の記憶は消えたままで、新しい対象者の記憶は消える。新しい対象者は現れない。

 パターン1は、最もハッピーだと思われがちだが、フロールが忘れていたことを()に感じるのではないか。また、シェイも苦しい思いをする。パターン2は、フロールは忘れていたことさえも忘れていて、苦しい思いをするのはシェイのみである。まだ堪え忍ぶことができるか。だが問題はパターン3である。パターン2において、記憶が戻れば自然と信頼を取り戻し、新たな対象者を越えるのは時間の問題である。すると、シェイの記憶を無くす。無限ループとなってしまうのだ。つまり、パターン2はパターン3と背中合わせ。いずれにしろ、苦しい思いをするのだ……


 物語は佳境へ。結界が遂に崩れて、完全に割れていく!

「みんなのところに行くよ」

 フロールはスミシュの手を引っ張り、結界の外へ。スミシュを遮るものはもうない!

 結界の外は暗闇だが、先に光が見える。暗闇の中、光に向かって走る。

 だが、フロールは突然倒れた……。


To be continued…


魔力を吸い取る……。どこかで聞いたような。『MOMENT・STARLIGHT』とネタが、ちょっと被ったことに後になって気付きました。シェイ君、察知魔法苦手らしいけど、『MOMENT・STARLIGHT』では使用時に何も言ってないですが、多分苦手意識はあるのかな。

次回について、『MOMENT・STARLIGHT』最終回に合わせて、明日更新します。

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