第三十四篇 自白
ゲートをくぐったフロールの目の前には、城が建っていた。黒と灰色の城は、草原に建っていた。空には暗雲が広がっていた。城以外の建造物は見当たらない。冷たい風が草原を駆ける。
「どこだろう?」
フロールは疑うこともせずに、城内へ入る。
城内は照明となるモノが壁に固定された蝋燭の灯火だけであった。
玄関からのびる灰色の絨毯は、まっすぐと正面の部屋へと敷かれていた。
決して綺麗とは言い難いが、掃除はされているようだ。
フロールはためらうこともせずに、正面の部屋の扉を開ける。
扉を開けると、女が椅子に座っていた。女とフロールとの距離は、とても長い長方形のテーブルを挟み、20メートル程だろうか。灰色のテーブルクロスの上には、蝋燭が等間隔に置かれている。女は考え事をしているようで、ぼーっとしているかと思われたが、急に
「誰かいるの!?」
フロールや音に気付いたというよりも、気配に気付いたようだった。
「すみませーん」
フロールはゆっくりと女へ近づく。
「どなた?」
「フロール・クリズンです。よろしく。あなたは?」
「スミシュ・グルミィよ」
フロールは(あれ?)と思った。グルミィ。どこかで聞いた気がする……。
ロバとクマとヒトという異色のお茶会は、シェイが帰ってきても続いていた。
熊沢はノリに乗ってきて、ロバに
「ロバさんって、sweetheartとかいないんですか?」
「言い方が古いな」
シェイがツッコミを入れたが、そこじゃない。確かにやや古い言い方だが。
「じゃあ、loverは?」
熊沢は言い直した。
「……恋人というよりも、妻がいました」
ロバの発言に思わずなのかわざとかは分からないが、熊沢は口笛を吹いた。
ロバの名は、メナードリー・グルミィ。偶然ではあるまい。
フロールは外の出来事をスミシュに伝えた。
「では、貴方は私をここから連れ出したいわけですか……。ですが、それは不可能です……」
「どうして?」
「……国王の結界が張られているからです」
フロールは首を傾げた。
一方、お茶会は空気が張り詰めて、シェイは
「じゃあ、国王の誤解かよ!?」
「すみません……。勇気が出なかったので……」
ロバは意気消沈した。話が変わった……。状況が変わった……
イオが指摘した直後、メナードリーは自白した。正しく言えば、イオの仲間の調査によって発覚したことをメナードリーに聞いた。「似非魔女はあなたの妻ですね?」と。
「情報屋の仲間がいて、この国のことを調べてもらったら、案の定……、出てきましたよ。メナードリーさんとスミシュ・グルミィさんの話が。簡潔に申しますと、スミシュさんは貴方のおっしゃった似非魔法使いのように、国王から国を奪おうとした。理由までは分かりませんでした。その後、貴方とスミシュさんが頻繁に隠れて話をしていたことが当時の兵士が知っていました。貴方はスミシュさんを救うために動くも、黒幕によって作戦を強行された。その後、黒幕から逃れた貴方達は結ばれ平和に暮らす。しかし、黒幕によってスミシュさんと離ればなれになってしまう。その時に、呪詛石が貴方の切実な願いを叶えた。おそらく、生きているうちにまた会いたいという願いを。だから再会するまで不死となってしまった。スミシュさんは黒幕によって、龍になった国王に食われた。大方、こんな感じではないのですか?」
イオはこの長台詞を言い切るまで、携帯電話の画面に映ったメール内容を何度かカンニングした。正直、電話では内容が覚えきれなかったみたいだ。
「ただ、二人で幸せに暮らしたいって思いましたよ……」
ロバ、いや、メナードリーは元気を失った……。熊沢はイオに直球で
「黒幕って誰なんですか?」
「それは分からないです……。おそらく、国王を龍の姿に変えた張本人だろうけど、特定は困難だと思いますよ……」
いずれにしろ、スミシュとフロールが龍から脱出しない限り、事態は終わらないようだ。
フロールはもっと具体的にスミシュから話を聞いていた。だが、呪詛石のことは知らないので、なぜ自分が生き続けているのかは分からないと言っていた。ただ、イオの表現した黒幕は分かった。
「じゃあ、スミシュさんをここから出られなくしたのは、龍に吸収された怪物だったの?」
「……吸収とかはよく分からないけど、怪物だったわ」
怪物、つまりディアモスの1体であったキメラ。現在は龍に吸収されている。吸収は融合とかではなくて、キメラの魂が龍に取り込まれたということである。よって、キメラは誰かに倒されたということだ。そして、倒されたキメラは魂が玉になり、その玉を龍が食べたということである。
To be continued…
イオに関しては、前にも書いた気がしますが、かなり先行しており『黒雲の剱』でまだ扱っていない部分が多々ありますね……。致し方ない……




