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紅頭巾Ⅲ・Ⅳ ~呪詛石の戦慄~  作者: サッソウ
紅頭巾Ⅳ
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第三十三篇 決心と突入

「ん? 狸では無いのか?」

 お祖父さんの一言に熊沢は

「逆になんで狸なんですか!?」

「狸は化けるからな」

「えっ? ……それじゃあ狐でも良いのでは?」

「狐とは色が違うじゃろ」

「もういいです……」

 珍しく熊沢が白旗を揚げた。

「ゲート魔法を使うぞ」

 呆れたシェイはさっさと事を収束させるためにフロールを呼ぶ。

「熊に一応聞かれたから説明するとゲート魔法は、何も(さまた)げが無い場合は半径十メートル未満の範囲であらかじめ指定した場所に行くことが出来る魔法だ。ちなみに、妨げがあることを意味するのは魔法だ。館に閉じ込められたとき、魔法が邪魔してゲート魔法は無意味だった。だが、今回は違う。魔女の近くを指定して、ゲートで行く。ただし、ゲートをくぐれるのは魔法使用者のみで一回につき一人だけ。まぁ、努力すれば将来的には半径数キロぐらいまでの範囲で使えるようになるかもな。その分魔力を消費するけれど……」

 なお空間移動魔法とゲート魔法は異なり、空間移動はそのままの意味で空間の間のみを移動可能とし、人や物を運ぶ魔法と併用可能となっている。しかし、ゲート魔法は本人と本人が触れているモノのみがゲートをくぐれて、併用は不可能。つまり、魔女をゲート魔法で外に出すことは出来ないのだ。ただし、膨大な魔力を使う瞬間移動魔法を使えば魔女と一緒に脱出可能だが、魔女がアンチ魔法を使えばフロールの魔法を無効化することが可能である。したがって、力ずくで引きずり出すこととなるのだ。

 フロールがゲート魔法を使い、ゲートが出現した。

 ゲートは高さ2メートル程でさほど大きくはない。扉は白と灰色で、魔方陣のような模様が(ほどこ)されている。扉は観音開き、つまり両開きである。重量感たっぷりの扉は数段の階段をのぼる必要があるため、階段の高さを入れれば、2.3メートル程か。

 フロールは階段手前でゲートを見て、やる気を上げる。


 ロバは全員が黙っているため、分かっている忠告を敢えて発言する。

「そのゲートをくぐれば、魔女がいる龍の腹でしょう。しかし、これは命に関わる危険と隣り合わせです。魔女の強さは計り知れません。もしものとき、どうなるかは分かっていますね……」

 フロールは頷き、

「頑張って魔女を連れて帰ってくるからね」

 重量感たっぷりの扉が音をたてて閉まり、光となって消えた。

 手を振り続けた熊沢は、シェイに

「よかったんですか? 何も言わなくて。せめて頑張って来いとか…」

「体力温存」

 そう答えて移動するシェイに熊沢は

「素直じゃないんですねぇ。……って、龍に魔法を」

「多分、今の魔法はリスがやってる。龍はリスに任せて、俺はやることがあるからな……」

 シェイはその場を去る。

「さて、イオ君と私は暇なのでロバとお茶にします?」

「報告があるので……」

「……ところで、イオ君って私のように動物が喋っているのに驚かないんですか?」

「なんて言うか、似たような人がいましたので……」

 「へぇ~」と相槌を打った熊沢だが、内心は驚いてくれたほうが面白かったのに、と思っていた。


 シェイは大通りにやって来た。大通りは騒動が一段落しており、車や自転車などが無造作に放置されている。これは一段落とは言えないか……。

「フロールの魔法のことは知らなかったんだ!」

 シェイが向く方向には、フロールの母親がいた。

「しかし、フロールの目の前に現れたのは評価できない」

 シェイは説明、理由、いや言い訳を考えるも、それらを捨てて

「すみませんでした」

 何よりも先に謝ることにした。返答は変わらないことを知っているから。

「謝って済む問題ではない」

 フロールの母親の性格は昔から知っている。笑顔なんて見たことがなかった。

 母親は花屋のパートでも無表情に近かった。

 そして、怒らせてはいけない。血が上ってしまうと、お手上げである。

 シェイはどっちにしろ怒られるのだから、いっそのこと聞いてしまえとばかりに、

「そもそも、何で俺がフロールに会ってはいけないかの理由が分からないんですが……」

 返答なんて返ってくるはずないと思っていた。

「フロールに悲しい思いをさせたいのなら、会えばいい」

「えっ……?」

 返答が返ってきたことと返答の内容に対し、シェイは素で声に出してしまった。後悔するも後の祭りか。だが、

「覚えているだろ? フロールが時渡りの魔法を使ったことを」

「……はい。覚えています……。フロールは罰を受けた。それなのに、解放されても街の者から攻撃されていたことも……」

「フロールが受けた罰は、未来に対することだ」

 母親の発言にシェイはフリーズした。罰については知らないのだ。

「罰は″これから会う最も信頼できる"親族ではない人"との記憶を定期的に失うこと″」

「それって……」

「忘れられる方も辛いが、忘れたくないのに忘れさせられる方はもっと辛い。意味が分かるか!?」

 シェイには充分すぎるほど分かった。シェイとしての記憶はもう存在せず、メネアとしてならば、まだ記憶は残っている。だが、その定期的の時期が来るまでだろう。だが、なぜ街の者たちがフロールを攻撃していたのか、シェイにはまだ分からない……。

 フロールの母親は、無言でその場を去った。母親が去ると、天候は豪雪に変わった。


To be continued…


ついに、突入の時。

1点だけ。栗鼠山さんが魔法を使えるのに、飛蝗のときのシェイは、何故魔法が使えなかったのか。魔法を使用するときは、指であったり詠唱や杖の使用といった方法があります。シェイが使えないと思い込んでいた可能性も、無きしもあらずですが……。通常であれば、魔法が使えなくなります。ということは、栗鼠山さんが特別な人物とか……?

8年前でしたっけ。かなり前に書いた作品なので、確かそうだったと記憶が合っていれば……ですが。

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