33話
「あんたは? いや、あなたがマオの、エグゼローザの母親か?」
女性は、ふふっと笑みを浮かべる。
「誰が来たのかと思ったが、そうか、あの子の知り合いか。まさか、あちらの世界の住人か?」
質問を質問で返された。だが、否定しないということは合っているのだろう。彼女が、マオの母親であり魔王の娘、エストリア。
「一応こちらの世界で生まれ育った。ただマオ、エグゼローザと知り合ったのは向こうでだ」
「マオというのが、お前たちのあの子への愛称か。別にどちらでもよいぞ。こちらの世界であの子を愛称で呼ぶものはいなかった。戻ってきて、変わったと思ってはいたが、うむ、いろいろあったようだな」
どうもさっきから、彼女は何かを楽しんでいる気がする。何を考えているのか。何かを考えているのか。
「あなたは愛称では呼ばなかったのか?」
「必要あるのか?」
また質問で返された。彼女は本当に母親なのか?
「しかし、私を監視していた兵士どもが、やっと来たのかと思ったが、まったく別のものたちが来るとは。貴様らの目的は? あの子を連れ戻しに来たか?」
「そのとおりだ。返してくれるか?」
「返すもなにも、あれは私の娘だ」
そしてまた一つ、ふふっと笑う。
「ただ、終われば貴様にくれてやってもいいぞ。もう用済みだ。まぁ生きているかはわからんがな」
「生きてって、あんた、マオに何をしているんだ!」
「教えて欲しいか? いいぞ、もう最終段階だ」
はははっと、彼女はさらに盛大に笑った。




