表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Reverse World   作者: 陽乃鳥 蒼
第一章 副隊長、学園へ
PR
1/23

第一章 副隊長、学園へ 第一話 軽さの向こう側

その力は、君のものではない。


 少年、神一郎が振るう剣、ツキカゲが敵の細剣を叩き落とす。


 敵の腕が跳ね上がる。


 神一郎の左手が、敵の襟を掴んだ。


「名前を言え」


 ツキカゲは敵の喉元に食い込んでいる。


「……」


「誰の命令で来た」


 敵は笑った。


 仮面の奥で、確かに笑った。


「もう遅い」


 転移陣が強く光る。


 敵の身体が輪郭を失い始める。


 神一郎はさらに強く掴む。


「言え!」


 その声に、敵は最後の一瞬だけ口を開いた。


「・・・だ」


 次の瞬間、敵の身体が光に呑まれた


 男の姿がかき消える。


 同時に、周囲を覆っていた結界がふっとほどけた。倒れていた敵も、荒れた地面も、空気に満ちていた血なまぐさい緊張も、まるで最初から無かったみたいに消えていく。


 代わりに現れたのは、学校の校舎だった。


 窓。廊下。植え込み。見慣れた白い壁。


 そして――


 キーンコーンカーンコーン。


 チャイムが鳴る。


 ついさっきまでの戦闘と、あまりにも噛み合わない音だった。


「おい、そろそろ戻らないと授業に遅刻するぞ?」


 後ろから女の声がした。


 神一郎は振り返らずに応える。


「そうですね。また放課後に食堂で会いましょう」


 この学校に来てから、もう数日になる。


 初日は結構緊張したが、もうだいぶ慣れてきた。道に迷うこともない。教室までの道のりも、教師の顔も、昼休みに混む場所も、おおよそ頭に入っている。


 神一郎は軽く手を挙げるようにしてから、校舎へ向かって歩き出した。


 廊下を急ぎながら、少しだけ気を抜く。


 戦闘から教室に戻る。この感覚にも、もう慣れた。


 けれど、さらに数日前のあの日は違った。


 あの日は、流石に少しだけ緊張していたと思う。


     *


 2025年6月12日。


 博文館学園高等部一年A組。


「今日からお世話になります。藤崎神一郎です。よろしくお願いします」


 教壇の前に立ってそう言ったとき、神一郎は自分でも少し緊張しているのがわかった。


 静かな教室。


 約三十人分の視線が、自分に向いている。


 正直、戦闘よりこういう方が苦手かもしれない。そんなことを考えた瞬間――


 ガタッ!


 椅子の引かれる音が、やけに大きく響いた。


 視線がそちらへ流れる。神一郎もつられるように見ると、一人の少女が立ち上がっていた。


「し、神一郎!?」


「え?」


 つい声が漏れた。


 いきなり名前を呼ばれたのだから仕方がない。


 少女は驚いたような顔で、まっすぐ神一郎を見ていた。肩までの髪。大きな目。昔より少し大人っぽくなった顔立ち。けれど面影はあった。


 赤坂奈々。


 どうしてここに来たのか。その理由の中心にいる少女。


 だが、その瞬間の神一郎は任務云々よりも先に、別のことを思っていた。


 ――覚えてたのか。


 その驚きの方が大きかった。


 しかしその顔を見た瞬間、頭の奥深く、記憶の縁に何かが引っ掛かるような違和感を覚えた。


 思い出そうとすると離れていく、そんな奇妙な感覚だけが残る。


 その違和感の正体を神一郎はまだ知らない、いや、知らないままでいたかったのかもしれない。


 神一郎がこの博文館学園に来た理由は数日前に遡る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ