強制物理的転生
板中:(あー、アレだ、アレ、オレ死んだ。何も聞こえない。
ぼんやり見えるのはオレの身体と群衆。
これが臨死体験か、初見。
近所のじいさんは臨死体験は五回目とか豪語していて、いつも元気なのだが。
心なしか距離が離れた気がする・・・。
このままでは本当に死んでしまう。
早く戻らねばと、平泳ぎの姿勢で戻る振りをしてみる・・・。
アレ、オレの身体は?
手足の感覚がない・・・)
看護師:「やっと救急車が来たか、AEDもなしに蘇生でヘトヘト・・・」
警官:「怪しい人物とか見かけませんでした?」
女子高生P:「いえ、ここにいる人は全員最初からいました。
全員が目撃者だと思います」
板中:(心なしかまた距離が離れた気がする・・・。
50mくらい離れたか。平泳ぎが進まん・・・)
謎の生命体隊長:「至急、帰還する」
謎の生命体A&B:「ラジャー」
板中:(心なしかまた距離が離れた気がする・・・。
青い地球が1cmくらいに見える。
なんか加速しているような。
音が何も聞こえない。匂いも感じられない。
目で見ているような映像ではなく、ぼんやり見える。
なんか直接脳に来る映像。手足の感覚もない。)
謎の生命体隊長:「各自点検」
謎の生命体B:「全神経細胞離脱、問題ありませんよー」
謎の生命体A:「全神経細胞はすべて健康だよー」
謎の生命体隊長:「おっけー♪
ほんじゃ、王城に戻るまで仮死状態にしておいてねー」
謎の生命体A:「ラジャーだよー」
板中:(心なしかまた距離が離れた気がする・・・。
体感数分しか経っていないのに、
太陽系全体が見える距離まできたか・・
なんか、眠くなってきた。
もうすぐ天国かな、地獄かな。転生するのかな。転移するのかな。
死後の世界ってなにも無いところらしい、本当に何もない。意識もない・・・
なにもない・・・ ・・・)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
板中:(・・・、・・・、んー????・・・。寝るわ)
・・・
板中:(ハッ!二度寝?意識がある。記憶もある。リーマン時代の記憶もある。
3日後の定年退職のはずが、どうしてこうなった?
えっと、まとめると、生きている?真っ暗だ。何も見えない。手足の感覚もない。
匂いも、音も感じない。
何もない・・)
謎の生命体隊長:「王城、到着ー。あと、よろー。帰って寝るわ」
謎の生命体B:「ラジャー」
謎の生命体A:「しっかし、隊長も強引だな。強制的に必要部位だけ持ってくるなんて」
謎の生命体B:「んだんだ。物理的にこっちの世界に持ってくるのは手間暇かかるつーの」
謎の生命体A:「ちゃっちゃと魔法陣使えば、楽なのになぁ」
謎の生命体B:「よくやるよ。
転生するには魔法陣が昔からのやり方なのに、なんて手間暇かけるのやら、ブーブー」
謎の生命体研究員:「転生なんて無理っす。
特殊相対性理論を全否定してるわよ、あーた。
無限のエネルギーがあれば可能ですけど、全宇宙のエネルギーを使っても
無限エネルギーは再現できないっすね。
強いて言えば、ブラックホールが一番近いかな。
その場合でも、瞬間転移は無理。
魔法陣なんて信じているなんて、ラノベの読みすぎじゃない?」
謎の生命体A:「あっ、すんません。
最近、中二病と成人病が併発しまして、日に日に酷くなっています」
謎の生命体研究員:「強制的物理的転生とでも言っておこう」
謎の生命体B:「まぁ、作戦は成功したからいいんじゃない。
さっさと帰って寝よう」
謎の生命体研究員:「おし、設置完了。後は大魔王様のお目覚めにご期待する」




