第4回 自然の恵みでございます
「ねえ、サン。あそこに見えるのって、なんていう名前の木だったかしら?」
お嬢様がわたくしにお問いかけになられます。
申し遅れましたが、わたくし、サン・チョパンサと申します。
通例、使用人は名字で呼ばれるものでございますが、お嬢様はわたくしをファーストネームでお呼び下さいます。
初めてお呼びいただいたとき、わたくし、興奮のあまり大量の鼻血……
感動のあまり大粒の涙を流したことを憶えております。
「どちらでございましょう、お嬢様?」
「あれよ。うんしょ。あれ……」
お嬢様は、わたくしの隣にお顔をお近づけになり、その白魚のような細いお指を伸ばされ、お庭の隅の木を指されました。
わたくし、お嬢様の立たれていらっしゃらないほうの鼻からのみ、鮮血を吹き出しました。
「あちらは、ブラックベリーでございます。ずいぶん、大きく育ちましたね」
そのように申し上げながら、わたくしは人差し指を立てて、その上に小籠を乗せました。
指先に、意識を集中いたします。
お掃除の魔法の応用技――
≪執事収穫≫!!
小籠にいっぱい、ブラックベリーの実が集まりました。
さっそくお嬢様はおひとつ摘ままれ、お顔を桃色にして喜ばれました。
「サンも食べて。はい、あーん」
わたくし、お嬢様にかからないよう、頑張って鼻血を耳から噴出させました。
この作品には、流血表現(鼻血)が含まれております。
苦手なかたは、ご注意下さいませ。




