第3回 よいお天気でございます
朝食のあとは、お嬢様のお呼びがあるまで下がっております。
お呼びとあらば、いつでも参じます。
とは申しましても、待機中なにもしないわけではございません。
わたくし、本日は他のお仕事がございまして……
いま、屋根の上におります。
正確には、尖塔のてっぺんでございます。
本来、ここには避雷針があります。
が、なにぶん、避雷針はいま、お抱え風水士のハイキング用ステッキとして貸し出しております。
そのため、落雷を防ぐことができるのは、わたくしだけでございます。
ついでに風見鶏の役割も兼ねております。
両手を鳥の翼のように広げ、背すじを伸ばして片足で華麗に直立いたします。
屋根の上でポーズを決める不審……勤務中の執事でございます。
すると、周囲の風向き、湿度、気温などがよく分かります。
お屋敷の中からもかすかに流れてくる空気……
聞こえてくる音…… 目に入る光の加減……
それらが一体となって、わたくしに五感ではっきりと教えてくれます。
これぞ執事魔法――
≪執事触角≫!!
どうやら、お嬢様が紅茶をご所望でいらっしゃいます。
呼び鈴に、その白磁のお手を伸ばされようとしておられるのが、見えずとも伝わって参ります。
回転しながら塔から飛び降り、外壁を伝い最短距離でお部屋へ向かいます。
黒いタキシードをまとい壁をカサカサと這い回るその姿。
さながらゴキブ……勤務中の執事でございます。
「お待たせいたしました、お嬢様。ルクレティレ産オレンジペコーでございます。
お茶請けはエクレア、こちらがバニラたっぷりカスタードでこちらが辛子明太子となっております」
ちなみに、逆立ちして身体を反らせる
『しゃちほこスタイル』もございます。
お嬢様のご希望に応じて、つつがなく。




