AmericanHeroine 第三話。
ワシントンD.C.南東部に位置する街、アナコスティア。
古くからアフリカ系アメリカ人の多い街であったが、ここ最近は異星人の移民も多く、今や最も現代アメリカを象徴する街と言っていいだろう。
そんなアナコスティアのカラフルな建物に、黒く大きな影が忍び寄る。
「おい、嘘だろ……。」
若いアフリカ系の男性が振り返ると、銀色に輝く巨大な円盤が目に入る。
巨大な円盤の前方のハッチが開くと、シルバーに輝く巨大な砲塔が姿を現した。
巨大な砲塔から真っ赤に光るレーザーが放たれる。
アナコスティアの街を次々と焼き払う真っ赤なレーザー。
アナコスティアの街が炎と煙に包まれてゆく。
巨大な円盤の中で男が口元を緩めた。
セルゲイだ。
「見ているかアメリカ娘。これで、アメリカも終わりだ。」
2メートル程の高さのあろう、司令官の椅子に深く腰掛け、足組をしたセルゲイが人々を見下すように笑う。
学校帰りのアヤが黄色いカマロを走らせる。
ハンドルを握る左手の時計がブルルルと震えるとCall Me, Beep Me!が鳴り響いた。
車を道の傍らに寄せ、腕時計を見るとホログラムが投影される。
ホログラムに父、ジェイクが映った。
「アヤ、大事件だ。アナコスティア上空に未確認飛行物体、数分でホワイトハウスに到着する。現地で合流、いいな。」
「オーケー、父さん。」
アヤが黄色いカマロのドアを開け、左手の時計に触れると叫ぶ。
「HENSHIN、AmericanHeroine!!」
白地にピンクのコスチュームに身を包み、青い空へと飛び立つアヤ。
瓦礫の中、炎と煙に包まれるアナコスティアの街。
白人が、アフリカ系が、女性が、子供が悲鳴を上げ、その命を散らしてゆく。
黒く焼け焦げた遺体の中には異星人の姿も見える。
鼻をつく強烈な匂いが立ち込める中、横たわり息絶え絶えのアフリカ系の女性の横、小さな子供が呆然と立ち尽くす。
「お母さん……。」
ワッと泣き出すアフリカ系の少年。
真っ赤なレーザーが少年を貫こうとした瞬間だった。
「大丈夫かい?坊や。」
その身を挺し、真っ赤なレーザーから少年を守るキャプテンスカイ。
アヤが少年をギュッと抱きしめる。
「見つけたぞ、アメリカ娘。」
セルゲイが円盤のモニターに映るアヤを見つけると部下に命じた。
「あの、アメリカ娘を貫け。この、レーザー砲の最大収束でな……。」
「最大収束……。それではレーザー砲が持ちません。」
部下が振り返り、セルゲイに進言する。
セルゲイが部下を鋭く睨むと、怒りに満ちた低い声で部下に命じた。
「構わん、撃て。」
巨大なレーザー砲が少年を抱きしめるアヤをロックする。
キィーンという機械音を鳴らし、真っ赤なレーザーが放たれた。
アヤと少年を守る為、2人の前に立つキャプテンスカイ。
キャプテンスカイが胸の前で両手を交差し、エネルギー密度の上がった真っ赤なレーザーからアヤ達を守る。
「うぉぉぉ——ッ。」
雄叫びを上げるキャプテンスカイ。
その時だった————
真っ赤なレーザーがキャプテンスカイの左肩を貫く。
娘であるアヤの目の前。
静かに、ゆっくりと、後ろへと倒れるキャプテンスカイ。
倒れたキャプテンスカイにアヤが駆け寄る。
アヤの青い瞳が涙で溢れる。
「お父さん……。」
「大丈夫だ、アヤ。それより、あれを……。」
ハァハァと息をしながら、円盤を指差すキャプテンスカイ。
「アヤ、お前は皆を守るヒーローだ。今、何をすべきか分かるな。」
静かに頷き、涙を拭うと、ゆっくり立ち上がり円盤を睨みつけるアヤ。
「許さない……。」
アヤが左手の時計に触れると、真っ赤な炎にゆらゆらと揺れるアナコスティアの街にデジタルサウンドが鳴り響く————
「Change、SkyForm!!」
アヤが光に包まれる。
光の中、アヤの背から白い翼が覗く。
光に包まれていたアヤが姿を現すと、白い女神のようなコスチュームから白い羽がヒラヒラと舞い落ちた。
アヤが円盤を睨むと、白き翼を大きく広げ、猛スピードで空へと舞い上がる。
そのまま円盤の上へと舞い上がり、急降下するとアヤが司令室の屋根を蹴破った。
「ヒィ——ッ。」
セルゲイの部下達が悲鳴を上げると、コントロールパネルから黄色い火花が飛び散る。
円盤の外から爆発音が聞こえた。
アナコスティアを襲っていた巨大な砲塔が根を上げたのだ。
黄色い火花が飛び散る中、セルゲイと対峙するアヤ。
「何故、たくさんの人に酷い仕打ちが出来るの!!」
2メートル程の高さ、司令官の椅子からセルゲイがアヤを見下すように指差した。
「酷いだと……。我ら高見に存在する者からすれば、まともに教育すら受けれぬ弱者の命に価値などない!!」
セルゲイの言葉に口をグッと真一文に結ぶと、右手の拳をギュッと握り締めるアヤ。
怒りで右の拳がブルブル震えると、バリバリッ!!という音と共に青白い光がアヤを包み込んだ。
「弱者に……価値はない?……違うッ!!」
大きく首を左右に振ると、アヤがセルゲイに向かって静かに歩き出した。
アヤの足音が司令室に響き渡る。
カツ、カツ、カツ————
「父さんも——」
「母さんも、こう言った――」
「すべての弱き人を守るヒーローになりなさい。それが……私のヒーロー道だ!!」
アヤが再び左手の時計に手をかける。
「Change、UltimateForm!!」
再び光に包まれると白地に赤と青のアルティメットフォームを纏うアヤ。
後ろにまとめた髪がほどけ、バリバリッ!!と青白い光がアヤを包む。
それまでのアヤにない雰囲気に戸惑うセルゲイ。
「なんだ、この雰囲気。そして、光とパワーは……。」
戸惑うセルゲイの視界からアヤが消える。
「何処に消えた、アメリカ娘。」
辺りをキョロキョロと見渡し、焦るセルゲイ。
その瞬間————
突如、セルゲイの目の前にアヤが現れ、渾身のパンチをお見舞いする。
2メートル程の高さ、司令官の椅子から薄汚れた床へと突き落とされるセルゲイ。
「許さんぞ、小娘!!これでも食らえ!!」
セルゲイが背中から触手を出し、立ち上がると口から墨を吐き出す。
辺り一面が暗闇に包まれた————
「うぁぁ——ッ。」
暗闇の中、アヤの苦しむ声が響く。
セルゲイの8本の触手がアヤを締め上げていたのだ。
「卑怯な……。」
苦しむアヤを尻目にセルゲイが嘲笑するように答えた。
「卑怯だと?知的だと言って貰おうか。フハハハハ、貴様のヒーロー道とやらもこれで終わりだ!!」
触手に締め上げられ苦しむアヤ。
だが、アヤは諦めない。
「終わらせない……父さんなら、母さんなら、絶対諦めたりしない。うぁ————ッ!!」
アヤの叫びに呼応するように左手の時計からFall Out BoyのThe Phoenixが流れ、続いてデジタルサウンドが鳴り響く。
「UltimateForm、FullThrottleMode!!」
アヤの周りの青白い光が、かつてない輝きを見せ、セルゲイの八本の触手が千切れ飛ぶ。
「チクショ——ッ。俺の触手がぁ——ッ。」
セルゲイが苦悶の表情を浮かべ、触手を背中に戻すと、怒りで我を忘れたのかギューッと顔を引っ張り、真っ赤に染まった醜い姿をさらけ出した。
「姿を見せたわね、この偽善者!!」
FullThrottleModeのアヤのパンチを食らうと、ヘモシアニンを含んだ青い血を吹き出しながら吹き飛ぶセルゲイ。
セルゲイの体が司令室の扉をぶち破る。
次々と船内の扉をぶち破ると、動力室のエンジンに叩きつけられるセルゲイ。
「小娘め!!覚えてい————」
動力室のエンジンがバチバチと火花を散らし、セルゲイを巻き込み爆発する。
かろうじて船外へと脱出したアヤが呟く。
「悪かったな、小娘で。」
セルゲイを倒し、脱出したアヤの後方で爆発する巨大な円盤。
「父さん。」
左肩の傷口を押さえ、立ち上がったジェイクに走り寄り、抱きつくアヤ。
巨大な円盤がアナコスティアの街の外へと落ちてゆく。
「行こうか、アヤ。」
アナコスティアの外に落ちた円盤が爆発すると、ハワード親子を真っ赤な光が照らした。
ドイツ連邦共和国、首都ベルリン。
総理官邸のガラス越しにノーカラーのジャケットを着た小太りの中年女性が立つ。
「セルゲイが死んだだと。許さんぞ、アメリカ娘。」
そう言うと、右手の薬指で鼻をほじり丁寧にハンカチで拭くメルツ首相。
「ククク……アメリカ娘。我がドイツの技術を味合わせてやろう。」
メルツ首相は顔をギューッと引っ張り、赤褐色の醜い姿を晒すと不敵に笑った。
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