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【完結】致死率100%の事故物件に住んでみた【えっ! この部屋で一週間過ごすだけで〇〇万円!? 女子高生心霊バイト】  作者: 日原夏至


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第35話

「四ツ辻不動産の方ですよね? 郷田について知りたいっていう……。その、情報料をいただけるとか」


「内容次第だけどな。最後に郷田さんに会ったのが深津さんらしいから、俺は期待してるよ」

「あの! 恥ずかしい話なんですが、実は仕事を首になって、お金に困ってるんです! 知ってる事は何でも話しますんで、どうかお願いします!」

 深津はテーブルに額を擦り付けた。頭に白髪が混じっている。怜司より歳上だろうに、余程事情があるのだろう。


「郷田とは同期の入社で、最初の配属先も一緒で。ウマがあったというか、よく飲みに行ったり、休日にも時々一緒に出かけたりしました。3年ぐらい経って、郷田が仙台営業所に転勤になって。しばらく会ってなかったんですけど、去年の4月に東京に戻って来て。また時々飲みに行くようになって」

「へえ。郷田さんが東京に戻って来た時、何か変わった様子は無かった?」

「えーと……喜んでましたよ。東京に戻って来れたって。元々、転勤なんてしたく無かったんだろうけど。ちょっとやらかして、懲罰的に飛ばされてたって言うか」

 そう言うと、深津はアイスクリームが溶け掛けたクリームソーダを啜った。


「懲罰? 何したの?」

「えーと、言っていいのかなぁ」

 深津はそう言うと目を横に逸らして足をゆすった。

「言ってよ。俺、口は固いからさ」

「あの……派遣社員の若い女の子にセクハラで通報されたんだですよ。社内用のチャットツールで下着の色聞いたり、下ネタ言ったり。それから、何度も2人で飲みに誘ったりとか」

 深津は、無精髭にアイスがついた口でニヤニヤ笑う。

「なかなかのゲス野郎だな。でも、東京から飛ばされて反省したんじゃないの?」

「いえ。こっちに戻ってきた途端、新入社員にコナかけて回ってましたから。その中の1人と深い仲になりましたが、他の女の子にも手を出してるのがバレて振られてましたね」


 乃亜は眉を顰めた。

「ふーん。じゃあ、去年の春の時点では深津さんが知る限りは平常運転だったと」

「はい。派手な生活が好きで、夜遊びも止められなかったようです」

「深津さんも一緒に遊んでた?」

「いえ、私は……たまに、ぐらいです。2人で女性のいる店で飲んで、風俗行って、みたいなことを月1、2回ぐらい」

 深津はそう言うと頭を掻いた。

「まあ、その辺はあんまり関係無さそうだから詳しくはいいや」

 乃亜の苦虫を噛み潰したような表情を見て、怜司は話題を変えた。


「郷田さん、去年の9月から山陽マンションに引っ越してるでしょ? 何で引っ越したか知らない?」

「ああ、それについては自慢してましたよ。東京に戻ってからしばらくは、会社が借り上げてた西東京のアパートに住んでたんですけど。知り合いの紹介で、破格で新宿のマンションに住める事になったって。郷田は見栄っ張りですから、話を聞いて即決したそうです。職場にも近いですし」

 怜司と乃亜は顔を見合わせた。


「知り合いねえ。誰の紹介かわかる?」

「さあ、そこまでは……。郷田は、飲み屋で知り合った友人もたくさんいましたので。怪しげな人脈もあったんじゃ無いかな」

 深津は腹が減っていたのか、チョコレートパフェを一気に口に放り込みながら言った。

「私も引っ越しの日にそのマンションに行ったんですけど、正直羨ましかったですね。広くて綺麗で。でも、あそこに引っ越してからですよ……郷田がおかしくなったのは。私が知る限り、一ヶ月も住んでいないと思います」


「……おかしくなったって、どんな風に?」

 怜司は何も知らないように話した。

「引っ越して1週間もすると、家に帰るのを嫌がるようになりました。大した用事もないのに会社に残ってたり、毎日のように誰かを飲みに誘ったり。一緒に飲みに行くと、終電まで付き合わされました」

「どうして帰りたがらなかったんだ?」

「私も聞いたのですが。どうもそのマンション、夜中に誰かがチャイムを鳴らすそうです。で、インターホンに出ても、誰もいないっていうのが何度も続いたみたいで」

「柊木さん! それって……」

 怜司は乃亜が何か言おうとするのを手で制した。


「誰かがピンポンダッシュしてたんじゃないの?」

「郷田も最初はいたずらか、誰かの嫌がらせじゃないかと腹を立ててたんですけど。夜中に不規則に鳴るのが、だんだん気味悪くなったみたいで。管理会社に言っても取り合ってもらえないから、勝手にインターホンの配線を切ったらしいんですが……それでも夜中になるとチャイムが鳴ったそうです」

「普通に考えたら、有り得ねーな」

「はい。それ以外にも、部屋の中で人の気配がしたり、原因不明の音がしたり。いわゆる怪奇現象が続いたそうで。そのうち、毎日遅刻するようになっちゃったんですよね」

「郷田さんは、そういうの……心霊的なやつ? 信じるタイプだったの?」

「いいえ、全然。以前、肝試しで廃墟に行ったときも、怖がっている奴を馬鹿にしてました。そんな奴が神社に行ってお札を買って、神棚まで部屋に設えて拝んでたらしいんですが……」


「神棚……」

 乃亜は、ゴミ捨て場で聞いた話を思い出した。

「それでも、怪奇現象は収まらないって、柄にもなく怯えていたのを覚えています。で、二週間もすると会社に来なくなっちゃって。連絡しても返信が来ませんでした。人事部の知り合いから聞いたんですが、その月末に退職届が郵送されてきたそうです」

 深津はそこまで話すと、クリームソーダを飲み干した。


「じゃあ、その後は会っていない?」

「いえ。私は、郷田が退職した後も、一度だけマンションに行っています。『今まで世話になった。もうすぐ旅立つから、最後に会いたい』って連絡が来まして」

「……その時の郷田さんはどんな様子だったの?」

「酷くやつれてました。目が窪んで、頬骨が突き出てる感じで。部屋の中は黴臭くて、何かが腐ったような匂いがしていました。多分、荒れた生活をしていたんでしょうね。酒瓶や、ストロングの缶が落ちてましたから。でも、不思議と郷田は……なんて言うか、会社を辞める前に比べると、落ち着いてました」

「落ち着いてた?」

「はい。普段は、不機嫌な顔で周りを威圧しているような奴だったんですが。常に微笑を浮かべていて。それに、何かに怯えた様子は無くなってました。ただ……言っていることは訳がわかりませんでしたね。『この部屋は森と繋がっている』とか何とか」


 乃亜は心臓が締め付けられるような感覚を覚えた。

「どう言うことよ?」

「私にもわかりませんよ。目がバキバキで、ハイテンションで話してたから半分ぐらいしか理解できませんでした。『夜になると森の仲間がやってくる』とか言って、笑っちゃいますよね」

 深津は不揃いな歯を見せて笑った。

「『森のクマさんにでも会ったのか?』って言ったんですが、冗談も通じなくて。『神様に会って、俺も森の仲間に入れてもらった』って意味不明なこと言ってました。本物の神様に会えたし、神棚もいらなくなったから捨てたって」


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