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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
7章 ACT2

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第23話 うちのポチが真っ二つやないか!

 それは、神の気配を求めてこの世界を彷徨っていた。

 あてどなく世界をうろつき、感知範囲内に現れた気配の元へと移動する。

 基本的にそれは、殺すことしかできない。

 なので、本来の目的である相手ではなくとも邪魔であれば殺すし、敵対すれば殺すし、情報を引き出す必要があれば殺した。

 もっとも、対象である神以外を殺すことにこだわっているわけではない。殺す相手が無関係だとわかれば、次の目標を設定して立ち去ることもあった。

 その判断基準はよくわからない。それ自身ですらわかってはいなかった。

 それの内部には、いくつもの演算装置が内蔵されているが、それは適当にぶちこんだだけという代物で連係がなされているわけではなかった。

 それを送り込んだものにたいした計画はなかったのだろう。いつかどこかで対象にかすりでもすればいい。そんな程度の考えだったのだ。


「あー、くそっ! うちのポチが真っ二つやないか! どないしてくれんねん!」


 廃墟となったマニー王国首都近郊にある森。

 そこて針鼠(ヘッジホッグ)と呼ばれる侵略者(アグレッサー)と神格を持つ女が対峙していた。

 黒い全身に刃物を備えた針鼠(ヘッジホッグ)は殺戮の権化であり、この世界において様々な者を切り裂いてきた。

 女が乗っていた巨大な狼、この世界では餓狼王とよばれる獣も針鼠(ヘッジホッグ)の犠牲となったのだ。


「まさかもまさかや。うちを無視して、ポチを斬るってなんやねん!」


 針鼠(ヘッジホッグ)は、局所的には正常に動いていた。

 隙なく身を守っている神は無視して、狼に攻撃を加えたのだ。

 神に生半可な攻撃は通用しないが、精神的に揺らげば綻びが生じる。

 なので、隙ができないかと針鼠(ヘッジホッグ)は期待したのだが、驚きはしたようだが女の防壁は万全なままだった。

 針鼠(ヘッジホッグ)は、その後のことまでは考えていなかった。

 最終目的を達成するために、それが必要なことなのかまでは考えておらず、場当たり的な行動を繰り返しているだけだったのだ。

 針鼠(ヘッジホッグ)は、壊れていた。

 初期不良といっていいだろう。ろくに調整もされずにこの世界へと放り込まれたそれは、いくつもの演算装置がバラバラに判断を行っており、大局的な考えを持つにはいたっていないのだ。


「死ねや!」


 針鼠(ヘッジホッグ)の右腕がねじ切れて、吹き飛んだ。


「今のを避けるんかい!」


 最初こそ怒っているようだった女は、それを見て楽しそうに吠えた。

 過去への攻撃。

 確定した事象を無理やりに書き換えるその攻撃を、針鼠(ヘッジホッグ)はさらに過去の自分を操作することにより対応したのだ。

 限定的な時空間においての事象の改変は、神ならできて当たり前の技能だ。その次元での闘いができないのなら、神と闘う資格はない。

 神を倒すために作られた針鼠(ヘッジホッグ)は、当然それに対抗できる機能を持っていた。


「さすがは殺神マシーンやな! けど、実力差は歴然や! こっから何を見せてくれる!」


 ここは、その女が支配する世界ではなく、その力は本来のものではない。

 だが、それでも針鼠(ヘッジホッグ)との力量差は明白だった。

 ではどうするか。

 針鼠(ヘッジホッグ)に考えなどない。

 現時点でできるだけのことをするだけのことだ。

 全身のブレードを展開し、前傾姿勢になって力を蓄える。


「へぇ? 破れかぶれの特攻かいな。ええで。そーゆーのもええんとちゃうか!」


 女が胸の前で両掌を打ち合わせる。

 破裂音とともに世界が一変した。女の周囲に、支配領域が広がったのだ。

 針鼠(ヘッジホッグ)は女の世界に呑み込まれたが、動じることなく力を集中し続ける。

 いくら神といえども、他所の神の支配領域下において全力を出すことはできない。領域を展開しようが、出せる力には限界があるのだ。

 針鼠(ヘッジホッグ)も周囲に小規模な領域を展開していた。そのため、直接神の力がその身に及ぶことはない。最低限、即死は避けられるのだ。

 眼が現れた。無数の眼が現れて、針鼠(ヘッジホッグ)を十重二十重と取り囲む。今度こそ、攻撃を叩き込むつもりなのだろう。

 過去現在未来。その全てを見通し、回避不可能な一撃を繰り出すつもりなのだ。

 針鼠(ヘッジホッグ)はお構いなしに力を溜め続ける。

 女は大きく腕を振りかぶった。神の攻撃に構えなど必要はないが、そういった動作に意味を見出す者もいる。この女も、こうしたほうが威力が上がる気がするというタイプなのだろう。

 静かに、二人の間に力が満ちていく。

 その力がぶつかりあい、弾ける直前。それは唐突に訪れた。

 これまでにはなかった神の気配。

 そんなものがあたりを満たし、そして消えていったのだ。

 それは、波のようなものだった。

 どこか一点から放たれた気配が空間を伝播していったのだ。


「え? これって……そうか。この世界の神が封印しとったんか! どうりでどこ探しても見つからんわけや!」


 女が一瞬、神の気配に気をとられる。

 それは、針鼠(ヘッジホッグ)にとって千載一遇の好機だっただろう。

 その隙をつけば、女を倒せはしなくともかなりのダメージを与えることができたはずだ。

 だが、針鼠(ヘッジホッグ)は逃走を開始した。

 優先順位が変わったのだ。

 それは、針鼠(ヘッジホッグ)が探し求めていた気配。起動時に設定された、倒すべき神の波動だった。


「あ! ちょっと待ちや!」


 女の大声が遠くから聞こえる。

 だが、針鼠(ヘッジホッグ)は全力で駆けていて、すぐに女の気配はわからなくなった。

 針鼠(ヘッジホッグ)は、神の波動が発生したほうへと走り続ける。

 神の波動を感じたのは一瞬のことだ。今はもう鳴りを潜めていた。

 近くではない。

 場所もはっきりとはわからない。

 だが、針鼠(ヘッジホッグ)は闇雲に駆け続ける。


「ルアアァァアアァアアアア!」


 針鼠(ヘッジホッグ)に感情があるのかはわからない。

 だがその雄叫びは、歓喜によるものとしか聞こえなかった。

なんとなく日付と話数を合わせて投稿することにしましたので、8章は5月1日から掲載予定です。

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