いけるところまで
「ハハハハ!!」
「ちょっと殿下笑いすぎ!」
「いや、待ってくれ、これは止まらない…ハハハハ…不死身だな、フウカ…ハハハハ!」
「マジで…なに1人でツボってんの?」
「マジ?ツボ?壷がなんだ?」
「もういいから」
シャルルと風花、そして医師の3人で風花の話をしていた。
シャルルは2人でいる時だけ、彼女を「フウカ」と呼んだ。
そして医師に全てを話してからは、医師も「フウカ様」と呼ぶようになった。
「フウカ様がソフィア様になられた時、嘔吐していたということは…もしかしたらソフィア様は毒を飲んだのかもしれませんね」
「毒か…」
「えっ、待って下さい。ということは、私はまず向こうの世界で事故に遭って、こっちでソフィアちゃんの毒を飲み、そして最後に殿下の毒を?3回って……やばっ!ってか、私絶対死んでません?」
「そう…です…ね…3回、あなたは死をくぐり抜けた…」
「ぶっ!ハハハハ!」
そしてシャルルの笑いが止まらなくなったのだ。
「うるさいなぁ〜殿下!
でも先生、そもそも私って生きてるんですか?今、生きてます?実は死んでるんじゃないですか?」
「確かめてみるか、フウカ」
シャルルがニヤリと笑う。
「ムカつく!」
「何の証拠もありませんので究極の推論ですが…しかも最初の事故のことは置いておいての話ですが…
毒に関しては、もしかするとフウカ様の身体に耐性があったのかもしれません」
「我々のようにか?」
「我々?」
「ああ。我々は万が一に備えて、幼い頃から少しずつ毒を摂取している。耐性を作る為だ」
「すごい…物騒な世界ですね、ここは。」
「まぁ仕方ない。で、フウカも耐性があったとは?」
「はい。もしかするとフウカ様があちらの世界で、今回の毒の成分に近いものを摂取していたのかもしれません。
毒は常に毒ではありません。量や使い方によっては薬にも食べ物にもなります」
「なるほど」
「なるほど」
「とはいえ突然ソフィア様の身体に移ったことに関しては…どう考えたらいいものやら…」
「まぁそれは置いておこう。考えたところで答えは出ない。出たところで、もうフウカをその世界に帰すつもりはない」
シャルルが彼女の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「もう私のものだしな…心も…身体もな」
ニヤリ。
ーーー!!先生の前で!
「もうっ!マジでうざい!」
風花が真っ赤になってシャルルを睨んだ。
「ウザイ?…フウカが時々意味のわからない言葉を使うことが不思議だったんだ。それもこの度、納得がいったよ。
今の『ウザイ』だろ、さっきは…「ヤバ」…か?兄に言い放った『クズ』は人に対しては使わないな。そして『ツボ』?前には『バクなんとか』と言われたぞ」
「爆イケね」
「たしかにフウカ様が使われる言語は時折とても興味深いですね」
「あ!あと『コウスケクン』だ!これはどういう意味だ?最近はないが、毒を飲んで意識を失っていた時はよく寝言で言っていたぞ」
風花がニヤリとする番だ。
「あー『コウスケクン』ね。それ、向こうの世界の恋人の名前だから」
「な、な、なんだと?!」
「へーんだ!」
「お前は…一体なんなのだ!」
シャルルが風花を掴まえ抱きしめ…
「きゃあーっ」
「では、私はこれで失礼します。」
やれやれ、というように医師が退室した。
部屋からは大きな笑い声が聞こえていた。
「殿下、お幸せそうで何よりです」
嬉しそうに微笑みながら呟いた。
2人の結婚式は2ヶ月後に決まった。
シャルルが風花の手を引いてある場所へ連れてきた。
「え…やだ、近寄りたくない」
「大丈夫だ。一緒に行こう」
そこは風花がソフィアとして覚醒した場所だった。
そして彼女が嘔吐した小部屋は…壁になっていた。
「閉鎖した。ここが向こうへ通じる場所だったのか…或いは場所の問題ではないのか…それはわからない。
しかしとりあえず可能性は潰したかったのだ。
悪いが君が帰れる可能性は1つ消えた」
「………」
「良かったか?」
「もちろん。ありがとうございます」
流れ出した涙が止まらない。
「フウカ。先のことは誰にもわからない。
ならば今、この瞬間君を愛そう。
そして1回でも多く1秒でも長い口づけをしよう。
君を愛する『今』を積み重ねること。
私にはそれしかできない。
でもそうやって一緒に生きていこう。
行けるところまで」
そう言って笑うと、彼は風花の頭をくしゃくしゃと撫で、優しく長いキスをした。
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