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Short Storys.01『失恋』


 まずは一話目。

 失恋直後の男子生徒の心情を描いてみた。













「別れて」


「……は?」




 短い吐息が漏れる。

 少女の放った言葉の意味が一瞬分からなかった。

 でも、理解するまでは早く、一気に頭が冴えていく。


 理解なんてしたくなかった。

 いっそ、このまま思考の波に埋もれてしまいたかった。

 されど、現実はそれを許さない。

 目まぐるしく景色が変わっていくようだった。

 徐々に太陽は沈み、やがて空を紅く染め、そしてすぐに暗くしていく。


 ある夏の日。長い長い青春の日々が始まろうといていたその日。

 つまり―――今日、それらの日々はこの日を持って寒々とした『何か』に変わった。



 長い長い停滞の時間が、幕を開けた。





          *   *   *





 はぁ……。

 自室の布団に埋もれ、大きなため息を吐く。

 当然、今の時期は夏であるため、冷房もないこの部屋ではその行為は地獄そのもの。

 体が熱に反応し、不快感を示すかのようにどっと汗を噴き出した。

 けれど、それを拭うだけの気力も、此処から出る勇気もなかった。



「……何が駄目だったんだ」



 明日から夏休み! 去年できた彼女との愛に満ちたデートの日々が、今始まる!


 馬鹿だった。

 そんな妄想をしてばかりで、最近、彼女の気持ちをまったく考えていなかった気がする。

 そりゃあ、こうなるだろ。今になって思い出すと後悔が半端ない。

 妄想が実現する直前、そもそもの前提からぶっ壊された。夏休みが始まる矢先、いともたやすく俺は彼女にフられた。

 『彼女』という存在がない時点で、愛に満ちたデートの日々なんてものは絶対送れない。



「や……、違うだろうが、俺」



 デートなんかよりも先に心配することがあるだろうが。

 デートが出来なくなったからってことよりも後悔するべきことがあるだろうが。

 結局、そうなんだ。

 俺は去年からずっと浮かれていた。彼女ができたというだけで、リア充どもの仲間入りしたと思っていた。いや、事実、そうだったわけだが。

 俺はただ、その優越感やら満足感やらに浸っていたかっただけだったんだろう。



「……くそっ」



 枕に向けて拳をたたきつける。

 が、どうやらその下に何か置いてあったようで、ばきっという嫌な音が聞こえた。

 おーん? と枕を持ち上げて確認してみると、



「……うぇ」



 おそらく、今一番見たくなかったものがそこにあった。

 置いてあったのは一枚の写真。それを守るようにして覆っていたスライドガラスは、たぶん今の殴打によって割れた状態で散らばっていた。


 彼女と俺の、最初で最後の写真。

 この写真以前は撮ることもなかったし、以降もまた是だ。

 なんとなく気恥ずかしかったという理由だった。あまり慣れてなくて、彼女が撮ろうと提案してくるたびに俺は、「悪い。写真はちょっと苦手でさ」などと意地を張るように断っていた。


 まぁ、わからないでもないだろう。

 彼女の前では、自分の弱みどころを見せたくなかったのだ。確かに、「慣れてない」と言うよりも、「少し苦手」と言ったほうがまだ恰好が付く。

 ―――けれど、彼女はどうだっただろう。

 自分から提案してくるあたり、まず写真を撮りたくないなんてことはないだろう。俺とは違って、出来る限りは撮りたいと思っていたかもしれない。


 だとすれば、そんな彼女の思いを踏み躙ったのは。

 気恥ずかしい、慣れてないだなんていう下らない理由で、それを否定しやがったのは。

 他ならぬ、この俺だ。



「……くそ、くそおおぉぉ……ッ!」



 今度は殴りはしなかった。

 代わりに思いきり写真を握りしめ、しわができるころにはぼろぼろと涙が零れていた。

 泣いたって、何も変わらないことぐらい分かってる。

 後悔したって、すべてが元通りになんてならないことだって理解している。

 ―――でも、泣かずにはいられない。

 ―――それでも、後悔せずにはいられなかった。


 暑さなんてとうに感じなかった。

 それ以上に、目頭が熱かった。ぼろぼろ、ぽつぽつと涙が一向に止まらない。



 延々と、流れ続けた。















 Q.なぜ失恋直後なのか?

 A.ふと思い至った結果がこれだよ!


 コメントか評価かを頂けたら嬉しいです。

 作者のやる気が上がり、しかも文才の成長もできるという、まさしく一石二鳥な展開なのだ!



 

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