カフェの名前は「夏」
「今日も暇だな」
オーナーのマルタ氏は今日からここで働く従業員のオレに言った。
「そうですかね。これからじゃんじゃんバリバリお客さん来るんじゃないですか?」
「パチンコ屋みたいだね」
「嫌いですか?」
「まあ行ったことないよ。お前、行くんだろ?」
「そりゃまあ人並みには」
「いいねえ」
「オーナーだってホントは好きなんじゃないですか?」
「だから、行ったことないって言ってるだろ」
「そうですか。行ったら楽しいですよ」
「何が楽しいのかねえ」
こんな他愛のない話をしたり、しなかったりして2時間経った。
本日、初めての客は男性だった。オーナーが言った後にオレも続ける。
「いらっしゃいませ」
椅子に腰掛けて持ってきた新聞を読む高齢の男性だった。オレは従業員だから注文を取りに行く。
「何にしますか?」
「コーヒー」
「温かいのと冷たいのがあります」
「冷たいのでいいよ。見ない顔だな、新入りか?」
「今日からここで働きます」
「そうか。頑張れよ」
オレは返事をして頭を下げ、厨房に冷たいコーヒーの注文を伝える。仕事のやりがいを感じた瞬間だった。
オーナーが作ったアイスコーヒーができると、提供するのはオレの仕事だった。
「お待ちどおさまです」
「そこおいといて」
オレはトレイごと静かにテーブルに置いてその場を離れた。
オーナーがオレに話しかける。
「一人じゃ、儲からないんだよな」
「いいじゃないですか。来てくれたんですよ」
「これで今日は終わりだな」
「そんな。来てくれるお客さんにそれは失礼ですよ」
「もうやめよっかな」
「わかりましたって。じゃあ、オレの友達に声かけてみますよ」
「そうか。友達ならいいな。早めに呼んでくれよ」
「もう、せっかちだなあ」
「見りゃわかるだろ。この暇な店」
オレは心の中でどっちが使われてんだかと思った。
今日のお客はガチで4人だった。これじゃ、給料は貰えないだろう。売り上げにして1日4千円だとオレは1ヶ月タダ働きの可能性すら考えられる。オレは友達に声をかけて売り上げに貢献せねばと思った。




