46話 診察
山田の姐さんは二人が大人しくなるのを確認して戻っていった。
俺は部屋に用意されていた車いすに乗り一度診察室で診察を始めた。
「いやー、本当におすごいですね。数日でこんなに回復しているなんて。
流石ですね、何か体でも鍛えてらっしゃるんですか?」
「うん、すごいね古河君これなら予定より早く退院出来るかもね」
山田の姐さんにより、二人の喧嘩が止められた後、二人は特に後腐れを残している様子を俺に見せる事なく検査を終えた。
「はい、体は結構鍛えている方だと思います」
「へー、何をやっているの? サッカー? バスケ?」
「あー、えっと、……まあ格闘技系ですね」
「そっか、格闘技なら体は頑丈にしないといけないか、いやー鍛えてて良かったね」
「もしかしたらお坊っちゃまの御付きの方々と同じ忍者でしょうか?」
「えっ、
「御付きの方々? 多分似たような感じのやつかもしれません。でも資格はまだ持ってません」
冥のことか? あいつがやっているといえば忍術かメイドぐらいしか思い付かない。
それに資格って忍者検定のことだよな。
「先輩って確か天馬君の御付きの中学生をナンパをして目にに痣をつけられたんですよね? 正直中学生ナンパってありえないですよ」
「いや、お前は見てないからそういえるんだ。……あれが中学生だと初見で分かる人なんていないって。
はは、彼らと同じなら治療は延びることになりますね、今回の怪我で体にどんな影響があるか鍛えてある分表に出にくいので入院は延びるかもしれませんね」
笹木さんは右目を軽く撫でると山田さんを一度睨むと悲しげな顔して説明を続けた。
怖いなナンパって志村は夏はナンパをしまくって彼女作るって豪語してたけど無事だろうか……。
「えっ! そんなぁ、僕この調子ならすぐにでも退院できそうなんですけど?」
「……申し訳ありませんが院長から丁寧に診察するように言われていますし、ご了承ください」
「ごめんね、院長が過保護って言われるぐらい慎重にしろという指示だから」
「とりあえず当初の予定通り二か月の入院のままにしておきましょう」
そんな二か月なんて夏休みが終わるどころか退院するときにはもう十月じゃないか。
「どうにかして早く退院出来ないんですか?」
「……申し訳ない、正直言って忍者の身体は普通とは違うので私たちが知らないところで身体の奥底にダメージを残している可能性があります」
「そうですか……」
こうして俺の入院が夏を過ぎても続くことが決まった。
*********************************
ドクターたちの診察から数日、俺は体が確実に回復に向かっていることを感じていた。
はあ、暇だな、もう俺の体は元気なのになかなか退院させてくれない、ドクターたちは俺に対して過保護気味で、やっぱりこれはここのオーナーの息子が連れてきたからだろうな……。
俺の体は忍者の修行のおかげで怪我の治りが早い、それにここに来てからもあの薬湯は飲んでいるしな。
あれからよく天馬君はよく俺の病室に訪れてくれて天馬君とは仲良くなることができた。
「ねえ、あのメイドさんは来てないの?」
「あー、冥か、あいつは今回の事を家に知られて今実家に戻っているよ、……きつく締め上げられているだろうよ」
「ねえ、天馬君はさ、今好きな人いないの? 失恋したんでしょ?」
「うぐっ、はあ、タカトの奴め……、その事は極力秘密だからな。
メイドの冥が聞いたら若に相応しい者などいないだの、どうのこうのってうるさいからな、あいつはすげえ俺の恋愛事情に厳しいんだよ、だから頼むぞ」
「はい、わかったよ」
恐らく、美冬先輩だけでなくあの冥も天馬君が好きなんだろう。
それなら今までの先輩と天馬君に態度が納得だ。
いやー、モテモテなんだな、小柄で幼い顔立ちの先輩とババア(十代)って普通の人がいないのかな……。しかも両方とも普通より強いし。
やっぱり問題はあの暴力だな、浮気したら殺されそうだ。
「それでさ、好きな人は?」
「……うーん、今のところはいないなぁ。日向どうなんだ」
「いるに決まってんだろ、それなのにさ……、せっかくの肝試しでいい雰囲気になる予定だったのに」
こいつめ、お前は女の子と肝試ししたのに、その時俺はボコボコにされて、しかも結局全治2ヶ月だってよ、まじありえねぇよ。
それに松葉杖さえあれば自由に動けるんだ。
「ごめんって、……そうだ! 今度俺がお前たちの恋のキューピッドになるよ。俺はこれまでに多くのシチュエーションを妄想してきた俺に任せろって」
「でも、フラれたんだろ?」
「……違う、フラれたんじゃない。俺はただ恋愛の対象として見られてなかっただけだ。……俺のアピールは弟がなついてくるみたいなものとしか思われていなかったんだ……」
急に空気が重くなった。まだ心に傷が残っているんだろうか。
「あ……、いや、ごめんな、でも天馬君は格好いいしすぐに彼女できるよ。そーだな、是非天馬君にキューピッドになってもらおうと決めたぜ」
まあ、失恋をした天馬君の話は話し半分に聞いておこう。
あれ、そういえば、俺に恋のアドバイスをしてくれる美冬先輩はこの人が好きで未だに結果が出せてないんだな。
そもそも先輩のアドバイス自体信用できるのだろうか。
いや、でも、他の所だと先輩のおかげで付き合うようになったっていう話は聞くからな。
「へっ、こんなヘボ男にキューピッドなんて務まるわけないだろ。
お前は俺みたいになるなよ……。俺はこれからはスポーツに打ち込むんだ」
可哀想だ、完全な逃避だ、どうにかしないと……。
コンコン、扉がノックされ、返事をする前に誰かが入って来た。
「あら、天馬君も来てくれてたのね」
「こんにちは」
母さんがやってきた、どういう訳か母さんは天馬君と仲が良くどういうわけか、息子を大怪我させたのに俺より早く仲良くなっていた。
「もう元気そうね」
「ああ、もう大分、自由に動けるのにまだ入院だ、早く退院しないと夏休み終わっちゃうぜ」
「あー、ここの病院は信頼はできるけど過保護って話を友達から聞いたことある。でも、元気になるまでは入院費は家で出すしゆったりしていていいからな」
「天馬君、ありがとうね、こんなにいい病院にヒナタを入院させてくれて。
きちんと検査したら原因はあの夜の怪我だけじゃなくて、それまでの怪我と疲労のせいもあったそうなのよ、それで今回きちんと治療することが出来て良かったわ」
そうだった、医者にはそんなことを言われた。その医者は俺のアピールは怪我の治りの早さに驚いていた。しかしどこから聞いたのか、忍者である事を知ると、俺をもう一度検査し入院を先延ばしにしたんだ。
「いえ、そんなことないです、自分は当然の事をしただけです。
それとそろそろ帰ります、日向、この病院には図書館があるし、暇潰しならそこがいいと思うぞ。それじゃあ、失礼をします」
「はい、さよなら」
天馬君は俺たちに一礼して部屋から出ていった。
「ヒナタ、あなた夏休み終わっても退院出来ないから、退院するまではここの病院で勉強することになるわよ」
母さんは俺の着替えを取り出しながらそう言う。
「えー、わかったよ」
俺の病院生活は暇との戦いになりそうだ。




