18話 宴の終わり
18話
俺たちは熱く盛り上がり、作戦会議は白熱していた。
「そうだ、そろそろビンゴ大会があるんじゃない、タカトは早く二人にカード配らないと」
美冬先輩が話題を明るいものへ変えてくれた。
それを聞いたタカトはずっと握っていたカードを俺たちに配る。
「こんなにカードをもらえるの?」
タカトはおよそ十枚くらいのカードを配った。
「当たらない子どもがでないようにって事でさ、一人三回当たったら他のカードは使えないけどな。多くて一人三個のプレゼントが貰えるんだ」
さすが金持ちのパーティーだな、来た子どもに一個はプレゼントをくれるなんて。
どんなプレゼントなんだろやっぱり金持ちだから豪華なのかな。
『ただいまより、ビンゴ大会を執り行う。子どもたちよステージの近くに集まるのだ』
鷹継さんの声がスピーカーから響き渡った。
俺たちはその声に従いビンゴ大会が始まるのを待った。
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俺たちはビンゴが当たる度にステージに上がり中身の見えない様々な大きさの黒い箱を貰い、箱はビンゴが終わるまで開けることは許されないらしく、ビンゴ大会が終わり周りの皆と一緒に開けた。
「やったー、私が前から欲しかった、ピンク手裏剣だぁ」
「くっそ、ウンコ玉一年分なんて持って帰りたくないよ~」
「俺は伝説の忍者鷹継様の直筆サインカードだ、帰っておじいちゃんに自慢しようと」
「僕は振ると光る忍者刀と烏丸鷲丸様のサインカードだ」
「いいなー、はぁ、俺もサインカード欲しかったなあ」
周りの子どもたちの声が聞こえる。
この賞品は全然俺の求めている物ではなかった。
忍者っ子にはポピュラーな賞品なのか、全然驚いている様子がない。
「やったぞ、俺は最新式の忍者スーツしかもメタリックレッドだぜ。
これ欲しかったけど母ちゃんが高いってなかなか買ってくれなかったんだよな。
ヒナタ君たちはどうだった?」
いや、その忍者スーツは悔しいけど格好いいよ、特撮のヒーローみたいで忍者なのにすごく目立つけどな。
「僕はマウンテンバイクだったよ、正直他の物の価値は分からないけど僕はこれが当たってすごく嬉しいよ」
葵もタカトと同様にとても嬉しそうに笑っている
「やれやれ、僕はサインカードがダブっちゃったよ、そろそろ新しいカード追加してほしいんだけどね。
パーティーの度にビンゴやってたらカードかダブることがあるんだよね」
喜ぶ二人とは対照的に美冬先輩ら俺と同じようにため息をついては文句を言っている。
「なあ、俺はウンコの絵が描いてある臭そうな玉とホウキと古そうな本が入ってたんだけど」
俺は三つもビンゴが当たり、早く開けるのが楽しみだったが、一つは明らかなハズレ、一つは掃除道具、最後の一つはゴミ?だ。
何を喜べば良いのか分からない。
「あー、投げるとウンコの臭いがする煙玉だね。
ホウキの方は最近ハロウィンが流行っているからそれを取り込んで忍者ブームを起こせって事でホウキを持って忍術で空を飛べるようになれって思いが込められているただのホウキだね。
おじいちゃんが用意したプレゼントを下見した時は少しぐらい自由にさせてあげようとしたのが間違いだったね」
「おっ、ウンコ玉じゃないか懐かしな、俺は昔母ちゃんに投げて、ぼこぼこにされたぞ。
それとその本はただの忍者の教科書だぜ、じいちゃんが巻物じゃあ忍者っ子に受けないからって魔法書ぽくして子供が興味を持つようにしたものだぜ」
「より詳しく言うと子どもが簡単に出来ないレベルの上級の術の指南書だね。
それで難しくて簡単に諦める子どもがいるから、子どものやる気を出すためにという目的だね」
ただのホウキ、ウンコ玉、簡単には使えない術の教科書、鷹継さんに期待した俺がバカだったぜ。全然祝われている気がしない。
「はあ……」
「これから修業するヒナタにはぴったりなものが当たったんだね。
やったね、これから当面の目標ははその術が使える強い忍者を目指せばいいんじゃない?」
「そうだよ、忍者指南書が当たるなんてなかなかレアだよ」
「難しいと言っても俺は習得できたし、ヒナタ君もできるよ」
皆が励ましてくれるのがわかる、俺はこんなことでへこんだら子どもみたいじゃないか。
「よし、俺はこれから頑張っていくからこの本の術も教えてくれ」
「おう、任せとけ」
「一緒に頑張ろうね」
「僕も応援してるよ」
その後俺たちはビンゴ大会以降特に問題も無く宴を終えた。
宴を終えた俺と葵と美冬先輩は箱尾さんを探していた。
タカトは着物から楽な服に着替えに行った。
「いないようだね、もしかしたら他の仕事でどこかに行っちゃったのかもしれないね。
別に送り迎えは他の人でもできるからおじいちゃんが他の人に君たちの送り迎えを頼んだのかもしれないね」
「ちぇっ、それじゃあ今日弟子入り出来ないのかよ」
「仕方ないから、今日はとりあえず僕らだけで忍者の特訓しようか。
まずは着替えだ、タカトの部屋の服を借りに行こう」
こうして初めての修業が始まった