14話 出発
14話
朝早くの掃除を終えた俺は特にすることもなかったので、母さんの洗濯の手伝いをしていた。
「ヒナタ覚えてる?
DVDプレイヤーっていうかビデオレターに燃えるように細工したのはタカトのおじいちゃんだって事を来てくれる人が説明してくれること」
「大丈夫だよ、俺にビデオレターを持って来た人からは詳しい説明はなかったけど、今朝葵から話を聞いたけど、迎えに来る人はちゃんと説明してくれる人らしいよ。
それよりも父さんは大丈夫だった? まだ起きてきてないけど。
やっぱり昨日から顔色が悪かったし、病気だったのかな」
「ああ、大丈夫よ。あれは病気じゃないから。」
母さんはなんて事ないように言った。
ピンポーン
しばらく手伝いをしているとチャイムが鳴った。
俺は母さんと共に玄関に向かった。俺が玄関の戸を開けるとサングラスをかけ黒いスーツが似合っているいかにもボディーガードぽい男が玄関の前に立っていた。
「おはようございます、私は箱尾増雄と申します。
猫川葵様と古河日向様をパーティー会場まで連れて行くよう。タカト様のお祖父様の鷹継様から命じられております」
箱尾さんは右目には縦に刃物で切られた様な傷もあり、明らかに一般人ではないが、彼の口調は丁寧で表情は熱血な赤城先生より穏やかで全く怖くなかった。
母さんはお迎えの人を見たときから驚きで固まっていた。
「はい今日はよろしくお願いします、ただ行く前に話して欲しいことがあるんですがよろしいですか」
「それはビデオレターの件でしょうか。
その件でしたら先ほど葵様から道中で事情は聞いております。また日向様の家で説明して欲しいと頼まれているので事情は承知しています」
そう言うと箱尾さんは母さんに忍者の事を隠して鷹継さんの真面目でサプライズ好きのスパイ映画好きであることを好意的に説明していた。
「まあ、そうでしたか。私ったらなにも知らずについつい騒いでしまって恥ずかしいです。今日はヒナタをよろしくお願いします」
母さんがそう言って礼をしたので俺は玄関から出た。
外に出るとテレビでしか見ない黒塗りの高級車が家の前に止まっていた。車に後部座席には葵が見えた。
「それでは、葵様と同じ後部座席にお座りください」
そう言うと箱尾さんは車の扉を開けて驚いて固まっている俺に乗車を促し、運転席に着いた。
「やあ、ヒナタ。まさか、お迎えがこんな立派な車だとは思わなかったね」
葵も驚いているようだった。
「すみませんが、お二人には着くまでアイマスクをするようにと鷹継様から命じられています。お二人には何処に着くのかワクワクしながら来て欲しいとのことです」
そう言うとアイマスクを差し出し俺が着けて直ぐにエンジンの音が聞こえ車が動き出した事が分かった。
「葵、すごかったよ、箱尾さんは美冬先輩とは全然違う大人って感じがして。 それに母さんをあんなにあっさり説得するなんて」
「そうだね、確かに執事みたいで格好いいよね」
俺はふと今まで聞いてみたかった事を思い出した。
「あの箱尾さんは忍者なんですよね?」
「はい、そうですよ」
「風間の家ってばりばりの忍者なんですか? 興味本意なんですけど、どんな仕事をしているんですか」
俺は常々タカトの言う修業について疑問に思っていたんだ。
今どき忍者の仕事なんて観光地のテーマパークぐらいしかないと思っていたから。
「はい、私達は一般の方々には忍は昔のモノと思われていますが、今でも業務内容を昔から変更して仕事を続けています。
例えば、私の今の主な仕事は荷物の運搬ですが、その荷物は表に出せない物から一般の会社に任せられない危険で重要な物、もしくは人をを無事にを送り届けるのも仕事になっています」
そうだったのか、忍者は案外現代に普通に紛れ込んでいるんだな。
俺が感心していると葵も箱尾さんに話しかけ始めた。
「もしかして、テレビや映画みたいに荷物を狙う人に襲われる事も在るんですか?」
「はい、ありますよ。その時の為に忍術を習得しています。私達の忍術は氣を使ったもので才能があれば火を出したり姿を完全に消すことも出来るよ」
すげえ、本当にそんな魔法使いみたいなのがいるのか!
タカトのやつもしかしてそんなこと出来んのか。
あっ、そっか、俺が何で美冬先輩やタカトの家族に評価されてるか分かった、そんな忍術をいたずらに使われたらたまんないもんな。
「それって今更ですけど僕らがそんなこと聞いてもよかったんですか?」
「かまいません、君たちはタカト君の友達で鷹継様が事前調査で認めている人ですから。大人になったら仕事によっては知ることもありますし、少し早く知っただけですよ。
もし、望むのなら風間の道場に通うことも出来ますよ。今どきの忍術道場は忍者人口の減少に悩んでますから、コネさえあればキャリアアップを望む大人から塾のように通う子どもまで参加することが出来ます」
「実際に忍術を習得すると将来にどんなメリットがあるんですか?」
あれ、葵がすごい興味を示しているぞ。
でも、まさか忍術がキャリアアップっていうのや子供の塾みたいなモノだとは思わなかったな。
「そうですね、年に一度ある伊賀の忍者検定、忍検をクリアすることによって履歴書に書くことができます。
習得した技能によって、例えば配達、ボディーガード、工作員、警察官や消防隊でも就職が有利になります。
元々忍検を受けれる人は人格と、家柄が良くて厳しく育てられているので礼儀が良いので率先して採用してくれる所もあります」
「はあ、そうですか。すごいですね」
葵があからさまに興味を無くしているのが分かった、本人も態度に出したつもりがない事は付き合いのある俺は分かっているけど態度に出過ぎだ。
「いや、でもね、すごいことなんですよ。普通の子供が道場の存在を知っていると言うことは。
本当に一度見学でもしてみたら感動するんじゃないですかね?」
箱尾さんが慌てているのが声だけでも分かった。
まさか、忍者に興味を持っていた奴が自分の説明のせいでこんなにあからさまに興味を無くしたら、忍者である箱尾さんのプライド的にもは何とかしたくなるのはしょうがないのかも知れない。
「だってさ、ヒナタ。ヒナタはどう思う?」
「えっ、そうだな。見学なら一度くらいは行ってみたいな」
「それでしたら、日向様はどのような事に興味がありますか、忍者の技はあらゆる物事に通じているので大抵の事は叶いますよ」
おい、二人の意見が一致したのか! 興味が無く話を聞くきのない葵と葵を諦め俺に興味を持って欲しい箱尾さん
「そうですね、タカトや美冬先輩みたいなすごい運動神経に興味がありますね」
「それでしたら、氣の習得が一番です、その為には忍検合格セミナーに出席すれば才能があれば3日で会得出来ます。
忍者っ子に人気の特殊技能コースでは忍者として一般教養の戦闘術を始め見映えの良い技が一般の方でも習得が可能です。
特殊技能コースの教師は私がすることもありますね」
いやいや、普通に箱尾さんが教師だからって一般の方は戦闘術を学びませんよ
「あ、あの俺は…」
「いいんじゃないかな、僕は中学だとサッカー部に入って忙しいけどヒナタなら早朝以外なら大丈夫じゃない?」
「その場合は夕方放課後に道場に通って頂くことで習得可能です。
また‘夏休み忍者っ子合宿‘に参加すれば短期間でレベルアップ出来ますよ」
「じゃ、じゃあ行って見ます」
俺は葵によって火がついた箱尾さんの熱意によって見学が決まった。
その後俺たちが到着するころにはほぼ参加が決まり、俺が参加するときの月謝や詳しいコースの内容の説明まで聞いていた。




