第4話 「尾行されてると思ったら、相手を追い詰めていた」
第4話 「尾行されてると思ったら、相手を追い詰めていた」
帰宅中。
私は——追跡されている。
まだ確定ではない。
だが、確率は上昇している。
後方確認。距離、歩行速度、視線。
一致。
28%。
34%。
41%
——確定。
結論:尾行。
対象:1名。男性。年齢不明。
敵意:不明。だが排除対象に認定。
対応開始。
ルート変更。
私は右折する。
・・・来た。
左折。
・・・来た。
確定した。これは偶然ではない。
——狩りだ。
私は、速度を30%上昇。
長期戦への可能性も考慮。
呼吸を制御。心拍を抑制。
この地域をフィールドとして再定義する。
直線は使わない。
視線を切る。視覚を作る。
フェイントを混ぜる。
ジグザグに移動。
・・・追ってくる。
相手は優秀。
だが問題ない。
コンビニに入る。
3分。
5分。
7分。
動かない。
外の気配を読む。
焦りが、増している。
トラック通過。視界遮断。
——今。
私はスライディングの勢いで外へ出る。
完璧なステルス。
しかし。
まだ来る。
***
半径1km圏内を周回。
これは逃げではない。
——選別だ。
足が重い。
乳酸が蓄積。筋肉悲鳴。
限界が近い。
しかし止まらない。
止まれば、終わる。
***
「麗子さーん」
——声。
聞き覚えがある。
反射的に振り向く。
夕凪くんが、肉まんを食べていた。
「・・・ぜぃ、ぜぃ・・・こんばんは」
「麗子さん、競歩の練習してるの?」
「・・・違います」
「さっきから同じとこ10周ぐらいしてるよ」
「・・・私、一人で?」
「うん。一人で」
周囲確認。
・・・いない。
消えた?
否。
私は、勝った。
完全に尾行をまいた。
「・・・勝ちました」
ガッツポーズ。
「よくわかんないけど、おめでとう」
「ありがとうございます」
勝利の共有。完了。
「もう暗いし帰ろうよ」
「はい。失礼します」
「同じマンションだから、帰り道一緒だよ」
「・・・そうでした」
***
「水飲む? 新品」
受け取る。
即時検査。
キャップ、密閉、圧力。
液体の揺らぎ。色、異物なし。
匂い——問題なし。
「・・・・・・安全です」
「よかった」
飲む。
——美味しい。
生存の味。
***
マンション前。
仁王立ちの人影。
「麗子!マラソンでもしてたん?」
ひかりだ。
「・・・ひかり」
「ひかりさん、こんばんは」
「夕凪くんやん、おつかれー」
「さっき麗子の後ろにおった人な」
「・・・・・・」
「2週目ぐらいで『こいつ、ヤバ・・・』って言って帰ってったで」
「・・・・・・え?」
思考、再計算。
つまり——
私は、追われていたのではない。
追い詰めていた。
「・・・完全勝利です」
「そうだね」
***
翌日。
その周辺で——
不審者の目撃情報は、一切なくなった。
さらに翌週。
マンション掲示板に張り紙が出た。
『夜間の一人歩きは危険です』
その下に、誰かが書き足していた。
『※ただし、麗子を除く』
さらにその横。
小さく追記。
『遭遇した場合、引き返してください』
私はそれを見て、思った。
——防犯意識の高い地域だ。




