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異世界秘境キャンプ旅~キャンプオタクが失われた錬金術で快適生活。もふもふな守護猫タイガと巡る絶景と飯テロの旅~  作者: るあか
第三章 エルフの里の依頼

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第32話 錬金術師としてできることを

 急ぎで、キルウェンの冒険者ギルドに出している緊急依頼を取り下げてもらえるように、シエラに伝言を頼んだ。

 万が一誰かが引き受けてしまっては、危ないからだ。


 代わりに、俺の冒険者証も託して、別の緊急依頼を出し直してもらい、俺の名前で引き受けてもらってきた。

 冒険者本人の直筆で一筆書けば、代理受注もできるんだ。

 

 緊急依頼書のタイトルは『聖なる泉の浄化』で、根本を解決する内容だ。

 

 里に帰ったシエラが再びこの聖域へと戻ってくる頃には、既に俺のいつものキャンプ道具が広がっていた。

 まずは、『エルフの秘薬』の強化からだ。


 テーブルの上に、『錬金調合書』を広げる。

 それを確認しつつ、調合鍋の中に、エルフの秘薬をビン1本分全部注いだ。


 シエラも大ばば様も、調合書を興味津々に覗いていた。

「確かに言っていることは、分かるんじゃがのう……」

「これだけの材料で、本当に……?」


「まぁ、見てなって」

 なぜかタイガがドヤ顔をした。

 今錬金しようとしているの、俺だけどな……。


 エルフの秘薬で満たされている鍋の中に、『聖葉』と呼ばれる魔草を入れた。

 薬品の効能を強化させることのできるものだ。


 そして、空きビンの中に、ポワゾンの毒水をくむ。

 皮の手袋をして、触らないように、慎重に……。


 なんとかくめた毒水を、調合鍋の中に数滴垂らした。


「よし、材料はこれでOKだ」

 鍋の中に魔力を注ぎ込む。


「おぉ……」

「魔力をこんな風に……興味深いです」

「ふふん、でしょ? でしょ?」

 だから、なんでタイガが得意げなんだよって。


 おたまでぐるぐるとかき混ぜ、できた物を鑑定する――


「よし、『ポワゾンの中和秘薬』ってのができた。薄い赤色で表示されてるけど、これくらいなら神獣たちも大丈夫なはずだ。だってあの子たちは、今もっと強い毒を耐えてるんだからな――けど」


「けど?」

 3人は首を傾げる。

 俺はこう続けた。


「念には念を置いて、神獣と泉の水は、底の方に。そして、上の方にポワゾンの毒を浮き上がらせてから、シエラに散布してもらう」

「そ、そんなこと、できるのか……?」

 シエラがキョトンとする。


「できる。大ばば様、まずはその持ってるブドウ。泉の底に沈むように全部まとめて投げ入れてもらっていいですか? そしたら、俺がすぐに水を分離させるから、シエラ、頼むぞ――」

 

 俺はそう言って、『錬金術師の腕輪』をいつもとは反対向きに装着した。

 今回は、黄色の宝石がある方が、指先だ。


「分かりました」

「うむ、了解じゃ」


 みんなで顔を見合わせてうなずく。

 そして、大ばば様の「いきますよ」の合図で、ブドウがひと房、泉へと投げ入れられた。


 チャプンと音を立てて沈んでいくブドウへ、神獣たちがゆっくりと泳いで近づく。

 ブドウに釣られた神獣たちが泉の底に集まったのを確認すると、俺は、手のひらから思いっきり魔力を解放した。


 泉全体が俺の魔力でキラキラと輝く。

 更にその魔力で、ポワゾンの毒だけを掴むようにして、引き上げた。


 すると、俺の魔力に掴まれたポワゾンの毒が、水面へと浮かび上がってくる。

 紫色だった水面は更に紫の濃さを増していき、ドス黒く変色していた。

 これが、この毒の本当の姿……!


「この魔力の使い方は、初めて見ました……! 錬金術は、成分を分離させることもできるのですね……!」

 大ばば様が「なんと」と感嘆の声を上げる。

 それに対し、タイガが「これはね、『分解』っていうんだよ」と得意げに話していた。


 一方でシエラは、魔法杖を構え、空中に光る魔法陣を描いていた。

 彼女の魔力に反応してだろうか、周りに柔らかな風が渦巻いている。


「シエラ、中和剤の散布を頼んだ!」

 俺の呼びかけに、シエラはコクンとうなずく。


「――ウェントゥス」

 シエラがそう唱えると、魔法陣から爽やかな風が生まれる。

 その風に乗せるように『ポワゾンの中和秘薬』を散布すると――


 ――ドス黒いポワゾンの毒が、蒸発するように消えていったのである。


 鑑定眼でチェックをしても、『聖水』と表示されるのみで、ポワゾンの毒の文字はない。

 よし、浄化完了だ……!


 それにしても、魔法、綺麗だったな……。

 てっきり攻撃するものだと思ったけど、さっきの魔法は完全に風を起こすだけの魔法だ。

 そういう魔法も、いいよな。


「なんと! 大ばば様――毒が、消えたぞ……!」

「ええ、シエラ。なんだか信じられませんね……」

 シエラと大ばば様は、信じられないという表情で、瞳を潤ませながら泉を眺めていた。


 俺とタイガは、そろって泉の中を覗き込んだ。

「よしよし、あの子たちも無事だな」


 毒水が完全になくなったのを悟ったのか、ブドウを食べるのをやめた神獣たちが、水面へと上がってくる。

「みゃぁ、みゃぁみゃ♪」

 猫のような不思議な生き物が、水面から少しだけ顔を出すと、ご機嫌そうに鳴いた。


「わぁ、ありがとうって、言ってるのかな?」

 タイガがはにかみながらそう言う。


 俺たちの両側で、シエラと大ばば様もしゃがみ込んだ。

「そうじゃろうて。レンの努力を、この子らもちゃんと見ていたのじゃ」

 

「……良かったな、お前ら。元気に暮らせよ」

「みゃぁ♪」

「きゅきゅきゅ♪」

 七色の魚も、猫生物と一緒に返事をしてくれた。


 ◇


 みんなでエルフの里へと戻ると、エルフが数人待ち構えていた。

「あっ、レンさん! これ、レンさんの冒険者証と、『聖なる泉の浄化』の緊急依頼書です。それで、あの、泉の浄化は、いつくらいになりそうですか……?」

 代理受注をしてくれたのであろうエルフの男が、冒険者証と依頼書を差し出してきた。


 大ばば様が答える。

「レンさんが、既に泉の浄化を行ってくれました。もう、大丈夫です」

「えっ……!?」

 

 レンが受け取る前に、エルフの男は冒険者証と依頼書をポトッと落とす。

 それを、タイガが咥えて拾い上げる。


「この緊急依頼、たった今、完了したということじゃな」

 シエラがそう言ってニッと笑うと、エルフたちはうわぁぁーっと、歓声を上げるのであった。

 

 

 

 

 

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