決着
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銀髪の魔王「……魔力を吸われた?」
銀髪の魔王は、眉を寄せ、目の前の勇者から目を離せなくなっていた。
周囲に目を向ければ、すべての魔王が、魔力を吸われた感覚があるのであろう、皆足を止め、勇者を見つめていた。
つまり、この場にいるすべての魔王の魔力を、同時に勇者は吸収したことになる。
吸われた魔力は微量ではあるが、人間の器には十分すぎる量であろう。
つまり、ただの人間が、必要分を、魔王達から強制的に吸収した?
そんなことが…たかが家畜ごときに、可能なのか?
女の魔王は、まだこの事実に気が付いていないようだが…。
銀髪の魔王の視線が、魔王の傍に立たずむ細目の魔王へと向く。
細目の魔王は、この魔界で、大魔王様に次ぐ頭の持ち主だ。
その上、誰よりも魔界のことを考えている。
その男が動かないという事は……大丈夫なのか?
何か…いやな予感がする。
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「ぉぉぉおおおおお!」
目を見開き、勇者が咆哮を上げる。
右手から光輝く稲妻を、左手から漆黒に輝く稲妻をそれぞれ迸らせ。女の魔王を睨む。
女の魔王「……」
対し女の魔王は、じっと勇者の攻撃を待った。
無限に回復するつもりなら、まず心を折る。
そう思考した結果である。
勇者「神々しい雷よ我が手に集いて来たれ、そして全てを滅ぼせ!終極爆雷魔法ファイナルバースト!」
勇者が両手を突き出す。
反する二つの魔力の反発により、発動と共に勇者の両腕が吹き飛ぶ。
聖と魔の雷撃が混ざり合いながら突き進み、女の魔王へ迫った。
女の魔王は、人差し指をピンと張ると、目の前、勇者が今できるであろう最大攻撃に対して、その指を突き出した。
雷撃が、突き出された指を中心に波紋状に拡散し、霧散する。
「がはッ」
女の魔王が突き出した指の圧が、勇者の魔法を消し飛ばしてもとどまることなく、そのまま勇者の腹部を貫通した。
指一本分の穴が、腹に空く。
腕と腹から血を吹き出しながら、勇者の体が宙へ浮いた。
背中を地面に打ち付け、倒れる。
「……」
茫然と勇者は天井を見つめる。
――決定的だな
こちらの出来うる限りの最大出力の攻撃よりも、敵の指一本の突きの威力がはるかに勝る――
これじゃ、どんなに魔力を体にため込んでも、どうしようもない。
膨大な魔力得ようと、それを放出する出力が、人間では絶望的に足りないのだ。
全世界人類魔力集中作戦は、ここに破綻した。
勇者は力なく笑うと、魔王達から魔力を吸収し、その魔力で体を回復させながら、よろりと立ち上がった。
勇者(やはり正攻法じゃ……勝ち目はないか)
女の魔王は、勇者の瞳を見て眉を寄せた。
女の魔王(まだあきらめていない……?)
勇者の弱さを見せつけ、あの屑魔王の評価を最大限落とすつもりだったが…ここまで粘られると逆効果か…?
まさかここまでやって心が折れないとは …あの屑魔王が心を弄くったりしていなければ、こうはならなかったはず……ホント屑。
女の魔王「もういいわ」
女魔王はそう言うと、勇者を拘束するための魔法を――
だそうとしたとき、その手を止めた。




