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やはり勇者

勇者の体が、ブルリと震えた。


 このまま、均衡を保つこともできないのか……


 時間の問題か……くそ


 一度震えだした体は、勇者の制御を外れ、ずっと震え続けている。


 震える口で、勇者は口を開く。


 女神の信仰を捨てる方法は、簡単だった。


 女神を貶める言葉を、吐けばいい。


 思うだけでは駄目なのだ。


 その想いを、心の底から声に出すことで、初めて信仰を捨てることができる。





「このく――」


 声を発し始めた口を、勇者はとっさに手で塞いだ。


 かつてともに旅をした仲間達が、自分の所為で苦しんだ人たちが、自分の為に死んだ人たちが


 勇者にそうさせたのだった。


勇者「…くそ……くそおぉぉおおぉ……」


 口を手で塞いだまま、くぐもった声を上げながら、勇者は涙を流した。


~~~~~~~~






 自分の息遣いが、いやに大きく聞こえる。


女戦士「……」


 女戦士は震える体を何とか抑えつけようと、両手で体を抱いた。


 恐れるな、恐れるな


 女戦士は、そう何度も自分に言い聞かせる。


 ある森林地帯と岩礁地帯の境目、木の影の隠れ、女戦士は先の岩礁地帯に目を向けた。


 巨大な竜の頭が、岩礁地帯の岩の上から顔を出している。


「……ッ」


 女戦士はとっさに首をひっこめた。


 いる、この先に、魔王軍が。


 女戦士は腰に下げた剣を抜くと、両手で握りしめた。


 村のみんなのために。


 殺されたって構わない。 このままのうのうと生きるくらいなら、せめて一矢報いてやる。


 女戦士は、ぐっと歯を食いしばると、木から飛び出すように身を躍らせ、岩礁地帯へ駆け出した。


 だが、突然の雷鳴と閃光が、女戦士の聴覚と視覚を奪った。


「!?」


 光に目を細め、何とか先の景色を見る。


 その先の景色は、雷の嵐が魔物どもを紙切れのように吹き飛ばす光景であった。


 魔物の絶叫と雷鳴が空間を震わせる。


 黒焦げになった竜が、地に倒れ大地が揺れた。


「……ッ??」


 一体何が……


 雷の雨が止んだ。


 しかし女戦士は、いまだに視界に入ってる情報を、うまく処理できずにいた。


 魔物が、魔王軍がひとりでに吹き飛んでゆくのだ。


 ある一体は突然細切れになり。ある10体は同時に胴体と下半身が分断される。


 場を支配する突風が、肉片を吹き飛ばす。


 吹き荒れる衝撃波の余波だけでも、戦地から1㎞は離れている女戦士が、体が吹き飛ばされないよう力まねばならないほどだった。


 また稲妻。


 そして突風。


 魔物の残骸が女戦士の横を転がってゆく。


 血しぶきが衝撃波に乗り、女戦士を頬を汚した。


 総勢1万を超えるであろう魔王軍が、次々とゴミのように吹き飛ばされてゆく。


「……なにこれ」


 女戦士はそうつぶやきながらも、謎の力に蹂躙されてゆく魔王軍から目を逸らせずにいた。


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