そうびへんこう
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勇者脱走の翌日
魔王の間
その扉が、勢いよく開け放たれる。
「……!」
王座に座る魔王は、目の前の存在を勇者と認めながらも、目を細めた。
禍々しい漆黒のスカルフェイス、刺々しい闇色の鎧が全身を覆い、両手には、妖気を纏った刀と剣をそれぞれ持っている。
いずれの装備にしても、禍々しい呪力を感じさせた。
「き、貴様…本当に勇者か?」
魔王は、勇者らしくもない勇者へ対して、問う
「ウ゛ォオオぉぉぉおおおおおおオオオオあああ゛おぉぉぉ」
勇者は、獣のような叫び声を上げると、魔王へ向け切りかかった。
二つの黒い影が、魔王の間で幾重にも錯綜する。
黒い魔力が衝突しあった。
「……ッ」
全力を出せば、瞬殺できる、今もなお魔王と勇者の力量にはそれほどの差がある。
しかし、殺しても意味がないのだ。
次の瞬間には、全快となった勇者が転移魔法で飛んでくる。
殺さぬように加減する、それがこの幾重の呪いを重ねられ、本能のみで戦う勇者に対しては、並々ならぬ消耗を魔王にもたらしていた。
勇者は、双剣の刃先を魔王へ向け、刺突の構えで迫る。
「っ」
対し魔王、刺突を放とうとする左右の腕へ向け、両手それぞれで暗黒魔法を放った。
二つの暗黒魔法が勇者の両腕にそれぞれ着弾する。
「がぁぁぁああああああああああああああああああ!!」
「っち、厄介な!」
そんなダメージなど意に反さないように、勇者は刺突を突き出した。
暗黒魔法を貫き、魔王の両肩を掠める刃。
「ッ!」
魔王はとっさに距離をとる。
勇者は暗黒魔法を突き破った両腕をだらりとたらし、獣のような唸り声を上げる。
勇者の両腕、鎧を通して血が滴る。
ダメージはある、しかし
勇者は次の瞬間には、また魔王へむけ、痛んだ腕など気にしないように切りかかった。
荒々しい濁流ように繰り出される二刀流の斬撃をいなしながら、魔王は考える。
…確かに、側近の言うように、認識が甘かったのかもしれない。
刃の掠めた両肩が痛む、こうも容易く傷つけられたことも、その甘さの所為であろう。




