かなしみ
「……こんなもんか」
岩石地帯で勇者は自分の手のひらを見つめる。
体に発生する違和感に、眉を寄せ、しかし対魔王の策における第一段階をクリアしたことを確認する。
「…待ってろよ、戦士、魔法使い、スラきち」
勇者が転移魔法で飛び立つ。その後には、全身を解体され、血をまき散らす巨大な竜の残骸が残されていた。
魔王城前に着地した勇者は、剣を抜くと魔王城へ侵入した。
(牢獄の位置は把握している、本気を出せば一瞬だ)
一蹴りで音速まで加速した勇者は、行く手を遮る魔物を蹴散らし、地下牢へ侵入した。
自分がいた牢屋を横切り、その奥、戦士と魔法使いのいるであろう牢屋の前で止まる。
二つの向かい合うように設置された牢獄に、それぞれ人影。
一思いに殺そうと、勇者は雷撃魔法を――
その手が止まった。
異臭が、勇者の手を止めたのだった。
蒸し暑い牢獄の中、ハエが飛んでいる。
ハエは、二つの人影に群がっているようだ。
「戦士…魔法使い…」
「貴様がここを脱出する二日前には死んでいたぞ、この花の前だと、腐食が早いらしい」
「!」
突然の声に、勇者は音源へ視線を向けた。
「勇者、よく戻ってくる気になったな」
「なぜ……二人は…死んでいるんだ?」
なぜ女神の加護を持つ二人が、転生されずに……
突然現れた魔王を前に、勇者はそう言った。 そう聞かずにはいられなかったのだ。
「二人は信仰を捨てた、それだけさ」
「でたらめを…」
「でたらめではないさ、現に死んでいるだろう?」




