表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
土を掘るそして女子高生を探す   作者: San


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/8

土を掘るそして女子高生を探す 8 完結

層番号、A-25。


 


 掘削開始直後、この層は異常に“軽い”。


 


「構造密度、低」


 


 音声がそう告げる。


 


 だが、それは今までと違う意味での“低さ”ではない。


 


 整っている。


 


 過剰がない。


 


 均一な土層に近い。


 


 


 スコップを入れる。


 


 すぐに建材が出る。


 


 


 だが、それは崩れていない。


 


 


 形がある。


 


 


 街の一部だ。


 


 


 構造は簡素だが、機能している。


 


 


 


 さらに掘る。


 


 


 出てくるものは、明るい。


 


 


 破損が少ない。


 


 


 人間反応も安定している。


 


 


 


「生活活動、正常域」


 


 


 


 記録装置を回収。


 


 


 起動。


 


 


 


 映像。


 


 


 


 街。


 


 


 人が歩いている。


 


 


 速度は一定。


 


 


 混乱はない。


 


 


 


 建物は高すぎない。


 


 


 密集もしていない。


 


 


 空が見える。


 


 


 


 人間は会話をしている。


 


 


 感情は安定している。


 


 


 極端な差もない。


 


 


 


「……」


 


 


 


 次の映像。


 


 


 学校のような場所。


 


 


 学習。


 


 


 記録。


 


 


 研究。


 


 


 


 別の映像。


 


 


 医療。


 


 


 治療。


 


 


 


 別の映像。


 


 


 家庭。


 


 


 食事。


 


 


 会話。


 


 


 


 どれも極端ではない。


 


 


 どれも普通だ。


 


 


 


「二千年代類似構造」


 


 


 


 俺は記録する。


 


 


 


「本層は、初期発展期文明(二千年代と類似する構造)と推定される」


 


 


 


 一拍。


 


 


 


 だが、次の瞬間。


 


 


 ノイズ。


 


 


 映像が崩れる。


 


 


 


 煙。


 


 


 崩壊。


 


 


 混乱。


 


 


 


 建物が倒れる。


 


 


 人が走る。


 


 


 


 そして途切れる。


 


 


 


「……戦争崩壊確認」


 


 


 


 静かに記録する。


 


 


 


「文明は安定状態から急速に崩壊へ移行した可能性」


 


 


 


 それだけだ。




 ——記録は、そこで終わるはずだった。


 


 


 だが、装置はまだ起動している。


 


 俺は停止しない。


 


 


 少しだけ、間が空く。


 


 


 スコップを持ったまま、動かない。


 


 


 視線は、掘りかけの層に落ちている。


 


 


 


「……二千年代」


 


 


 小さく、記録に乗る。


 


 


 


「この層は、それに近い」


 


 


 


 一拍。


 


 


 


「だが、違う」


 


 


 


 土を見る。


 


 


 


 薄い。


 


 


 だが、その下は深い。


 


 


 


 あまりにも、深い。


 


 


 


「時間が、積み重なりすぎている」


 


 


 


 静かに続ける。


 


 


 


「何度も滅びた」


 


 


 


「何度も作り直された」


 


 


 


「そのたびに、層が増えた」


 


 


 


 言葉は短い。


 


 


 だが、止まらない。


 


 


 


「数えられる範囲ではない」


 


 


 


 スコップを、わずかに動かす。


 


 


 土が崩れる。


 


 


 


「地球がいつかは滅びるかとか」


 


 


 


 一拍。


 


 


 


「太陽に飲み込まれる時期とか」


 


 


 


 さらに一拍。


 


 


 


「——そういう基準は、ここにはもうないぐらい」


 

[時間は過ぎて変わっていた]

 


 


 掘る。


 


 


 


 音だけが残る。


 


 


 


「遅すぎる」


 


 


 


 短く言う。


 


 


 


「数えるには、遅すぎるぐらい」


 


 


 


 さらに掘る。


 


 


 


 同じ動作。


 


 


 同じ速度。


 


 


 


「時間は、積み重なりすぎた」


 


 


 


 言葉は淡々としている。


 


 


 感情はない。


 


 


 


 だが——


 


 


 止まらない。


 


 


 


「二千年代は、ただの一層に過ぎない」


 


 


 


 スコップが、地面に入る。


 


 


 


「始まりだったとしても」


 


 


 


「今では、他と変わらない」


 


 


 


 土が崩れる。


 


 


 


 また一つ、時代が壊れる。


 


 


 


 その下に、別の時代がある。


 


 


 


 さらに下に。


 


 


 


 さらに古く。


 


 


 


 終わりは見えない。


 


 


 


 俺は止まらない。


 


 


 


 止める理由がない。


 


 


 


 これが仕事だ。


 


 


 


 ただ、掘る。


 


 


 


 過去を出す。


 


 


 


 また埋める。


 


 


 


 それだけだ。


 


 


 


 最後に、記録に残る。


 


 


 


「——継続」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ