土を掘るそして女子高生を探す 8 完結
層番号、A-25。
掘削開始直後、この層は異常に“軽い”。
「構造密度、低」
音声がそう告げる。
だが、それは今までと違う意味での“低さ”ではない。
整っている。
過剰がない。
均一な土層に近い。
スコップを入れる。
すぐに建材が出る。
だが、それは崩れていない。
形がある。
街の一部だ。
構造は簡素だが、機能している。
さらに掘る。
出てくるものは、明るい。
破損が少ない。
人間反応も安定している。
「生活活動、正常域」
記録装置を回収。
起動。
映像。
街。
人が歩いている。
速度は一定。
混乱はない。
建物は高すぎない。
密集もしていない。
空が見える。
人間は会話をしている。
感情は安定している。
極端な差もない。
「……」
次の映像。
学校のような場所。
学習。
記録。
研究。
別の映像。
医療。
治療。
別の映像。
家庭。
食事。
会話。
どれも極端ではない。
どれも普通だ。
「二千年代類似構造」
俺は記録する。
「本層は、初期発展期文明(二千年代と類似する構造)と推定される」
一拍。
だが、次の瞬間。
ノイズ。
映像が崩れる。
煙。
崩壊。
混乱。
建物が倒れる。
人が走る。
そして途切れる。
「……戦争崩壊確認」
静かに記録する。
「文明は安定状態から急速に崩壊へ移行した可能性」
それだけだ。
——記録は、そこで終わるはずだった。
だが、装置はまだ起動している。
俺は停止しない。
少しだけ、間が空く。
スコップを持ったまま、動かない。
視線は、掘りかけの層に落ちている。
「……二千年代」
小さく、記録に乗る。
「この層は、それに近い」
一拍。
「だが、違う」
土を見る。
薄い。
だが、その下は深い。
あまりにも、深い。
「時間が、積み重なりすぎている」
静かに続ける。
「何度も滅びた」
「何度も作り直された」
「そのたびに、層が増えた」
言葉は短い。
だが、止まらない。
「数えられる範囲ではない」
スコップを、わずかに動かす。
土が崩れる。
「地球がいつかは滅びるかとか」
一拍。
「太陽に飲み込まれる時期とか」
さらに一拍。
「——そういう基準は、ここにはもうないぐらい」
[時間は過ぎて変わっていた]
掘る。
音だけが残る。
「遅すぎる」
短く言う。
「数えるには、遅すぎるぐらい」
さらに掘る。
同じ動作。
同じ速度。
「時間は、積み重なりすぎた」
言葉は淡々としている。
感情はない。
だが——
止まらない。
「二千年代は、ただの一層に過ぎない」
スコップが、地面に入る。
「始まりだったとしても」
「今では、他と変わらない」
土が崩れる。
また一つ、時代が壊れる。
その下に、別の時代がある。
さらに下に。
さらに古く。
終わりは見えない。
俺は止まらない。
止める理由がない。
これが仕事だ。
ただ、掘る。
過去を出す。
また埋める。
それだけだ。
最後に、記録に残る。
「——継続」




